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 外から響く銃声に、女は耳を傾けようとすらしない。
 この町では銃声なんて日常茶飯事だからだ。
 毎日何人もが殺され、それ以上の数がここで産まれる。
 女は世界がこうなってしまってから今日まで、既に三桁にも及ぶハムスターを産まされていた。

「あちゃー。タイショーさん、今日も派手にぶっぱなしてますねぇ」
「増やすこっちの身にもなって欲しいでっせ」

 生殖係のハムスターが何か話していようが自分には関係ない。
 出来ることといえば、ただひたすらこの行為が終わることを祈るだけ。

「おう、お前ら! 俺様も混ぜてくれ! ガッハッハ!」

 勢いよく扉が開け放たれる。

「あ、タイショーさん。現場監督はいいんですか?」
「こうしの野郎がいたから代わりにやらせてるじぇ。空いてる女はいないか?」

 タイショー、と呼ばれたハムスターがキョロキョロと部屋を見回し歩き始める。

「タイショーはん。やるのはええけどその血をなんとかしてぇな」
「血? ああ、さっき奴隷を殺した時のか……」

 そう言い、タイショーは女の前で足を止めた。
 そして見下しながら一言。

「舐めろ」

 殺された人間の血を舐めとり、綺麗にしろと言うのだ。
 ひたすら感情を押し殺してきた女もこの命令には動揺する。

「返事はどうしたァ!! 女ァ!!」

 タイショーの怒声に女の思考がかき消される。
 既に彼女は恐怖に支配されきっていた。

「はい……」

 光を失った瞳のまま、女は顔をタイショーの身体へ近づけさせる。
 そして血を舐め始めた。鉄の香り、生臭い味。吐き気が込み上げるが、必死に抑える。
 彼らの機嫌を損ねれば命も簡単に奪われてしまう。

最終更新:2014年11月03日 23:10