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「お待たせ」
 信条が待合室のドアを開ける。両手にお茶のペットボトルを握っていたので、尻を使ってドアを閉めた。
「はいお茶」
 椅子に座っていた坂口にペットボトルを手渡し、自分も坂口と向かい合うほうの椅子に座った。
「サンキュ。そんで俺はどうすればいいんだ」
「まずは説明しないとね。私達の先輩にエルトリー・ジェミニっていう二年生がいるのよ」
 テーブルに書類と写真を置いた。書類を脇に寄せ、写真を坂口に見せた。
 ――身長140センチ程度の男の子の写真だ。
 いつの写真だろうかと思い、左下を見る。――2013年、即ち今年だ。どう見たって小学生じゃないか。
「信条。出す写真間違えてるぞ。ドジも程々にしろよ」
 半笑いで写真を返す。が、信条はそれを受け取ることなく坂口に再び見せる。
「だからこれが高校二年生エルトリー・ジェミニ先輩なのよ」
「……なんだって?! 池乃め〇かより小さいやんけ!!」
 思わず声を張り上げるが、信条は動じなかった。
「そうよ、でもあんまり言わないであげなさい」
「そ、そうだな……失礼だな」
 深呼吸をして気分を落ち着かせる。
「でね、このジェミニ先輩がテロリストに捕まっちゃったんだけど」
 脇に寄せていた書類を坂口に渡した。坂口は一枚目をめくる。ど真ん中に大きく地図が、下に小さくGPS座標が載せられている。コンビニエンスストアの近くにある米軍基地に星印がある。――目的地ということなのだろうか。
「星印があるでしょ? そこにジェミニ先輩が監禁されてるのよ」
「そこで俺が救出に向かう、と。でもなんで米軍基地に? テロリストがそんな所に監禁するのか」
 二枚目をめくる。
「テロ組織の名前はAnswer(アンサー)って言うんだけどね、コイツらの中にも超能力を持った人間がいるのよ」
「もしかしたら超能力の影響で兵士が操られている?」
「その可能性が高いわ。近隣に住んでる人がいるのに誰ひとり騒いでないって事からしてね」そう言って信条は頷いた。
「普段から存在してる米軍基地なら誰にも怪しまれないって訳だ」
 眉を潜めながら三枚目をめくる。
「そういう事。あ、あと今回の任務に同行する人もいるからね」
 人差し指を立てて言った。出て来ていいわよ、と信条が言うと、待合室のドアが開いた。
 入ってきたのは身長160cmくらいの眼鏡をかけた男。坂口に嫌味の篭った視線を送る。
「こんにちは坂口くん。僕の名前は向学歴(こうがく れき)。覚えてくれよ」
 ――まさに高学歴になる為に付けられたような名前だ。嘲笑うつもりは無く、純粋にそう思った。
「あ、俺の名前は坂口し――」紹介の途中で向学は制止した。
「結構だ。キミの名前は把握済みだし、第一、僕はキミの事を良くは思っていない」
 坂口はむっとした。いきなりそのような事を言われてもどう返せば良いかわからないし、何より不愉快だ。
 ――話せばわかる奴だと思うんだけどなぁ。
 とりあえずそういう事にした。自分の気分やらモチベーションやらの為にも。
「そ、そうか。わりぃな、なんか……」
 ははは、と坂口は愛想笑いをしてみる。
「キミみたいなバカそうな奴が国立高校に入ってる事も、キミみたいなアホそうな奴が超能力を三つも持っちゃってる事も気にくわないねェ~~!」
「くっ」
 こめかみに青い筋が入ったような気がする。こうもボロクソに言われて黙る訳にはいかない。
 坂口はそう思い向学に詰め寄ってやろうとしたところ、信条が割り込んで二人を落ち着かせようとした。
「はいはいはいはい! 落ち着いて! 必要無い喧嘩を吹っ掛けるんじゃないよ向学!」
 信条が「向学」と呼び捨てているという事は、彼は俺と同い年か。尚更、話せば良いヤツってわかるじゃないか、と期待を膨らませる。――ただし、あくまでモチベーションの為だ。
「ふん、まあいい。行くぞ坂口」
 大股で待合室を出ていった。どうやら徒歩で行くようだ。やれやれ、と坂口はため息をついた。
 待合室を出る直前、信条からスマートフォンを受けとった。連絡を取る為だ。
 かくして坂口の初任務が始まるのであった。

最終更新:2014年11月18日 23:20