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「それで、どうなんだい? ボク達のもとへ来るかい?」
死神の手が差し出される。
「お断りします……信条皐さん」
兄である皐に対して、赤の他人であるかのような呼び名を使った。
「ははは、そう言うと思った……~よっ!」
「っ!?」
美咲めがけて一閃。
刀を打ち合わせ、身体を捻って回避しようとする。しかし、美咲の華奢な身体は床にたたき付けられた。
「くっ……!」
間髪入れず皐は床からえぐるように刀を振るった。デスクとパソコンが巻き添えをくらい、火花を散らしながら真っ二つに切り裂かれた。美咲は寸前で向かって左に転がり難を逃れた。
すかさず美咲はデスクを蹴飛ばす。切断された棚からは煙幕手榴弾(スモークグレネード)がこぼれ落ちてきた。バランスを失ったデスクは力無く倒れる。
その間皐は懐から拳銃を取り出していた。
S&W M500-CUSTOM。世界最強の超大型の回転式拳銃と呼ばれるS&W M500を信条皐が独自に改造したものだ。装弾数を格段に増量、回転式拳銃であるそれを全自動小銃の仕組みに無理矢理改造。結果、もともと凄まじいものだったS&W M500の衝撃が更に上乗せされ、普通の人間が扱えば忽ち手の骨が砕けるほどになってしまった。
しかし超能力者である信条皐にはなんのその。威力も連射速度も折り紙つきの狂気の拳銃と化した。 そんな拳銃を取り出し、美咲に向けて発砲をしたのだ。
美咲は起き上がりながら日本刀で弾丸を弾き飛ばすが、さすがは世界最強の拳銃、切れ味を容赦なく奪い取っていく。
「んぎ……!」
刀から伝わる衝撃に顔をしかめつつ、煙幕手榴弾を皐に投げつけた。床を転がるそれが爆発する。
「っ! 逃げられるとでも……」
ドアめがけて発砲する。弾は煙を掻き分けるように飛ぶ。凄まじい銃声と共に、ドアが吹き飛ぶ音が聞こえたが、弾丸が人間の身体に喰らいついた音は聞こえなかった。――外したか。
「どうせ外国には蘇生能力者がいるんだ。今殺したって構わないんだ」
美咲に聞こえるように言う。
しかし美咲からの返事は無い。返事は無い代わりに、
「!」
《裁きの刃》が皐の足に襲いかかった。幾多もの刃は皐の足を貫通し、彼の身動きを封じた。
――みっちゃんの能力の射程がどれくらいかは覚えていないが、そう遠くは無いはず。
「えーと確か……」
ここの建物は隔離されているようで実はされておらず、高層階にはきちんと窓が付いていた。皐はその窓から入って来た。
「この方角かな?」
視界が煙まみれのなか、窓と思わしき方向に拳銃を向ける。狂気の拳銃が弾丸を吐き出す。――手応えアリだ。弾丸が豆腐を指で突き破るかのごとく窓を割った。
風が部屋の中に吹き込む。煙は風に押され、破壊されたドアへと押し寄せる。皐の視界はこれで確保された。
「……」
――逃げられた。皐ははじめにそう感じた。部屋の中には既に居ないようだ。
「ちぇっ」
舌打ちをしながら、突き刺さった刃を無理矢理振りほどく。ブチブチと足が裂ける痛々しい音がする。しかしすぐに再生するのだから問題は無い。
「……!」
足音が近付いてきた。美咲の履いていた運動靴とは違う足音だ。皐は仕方なく窓から脱出しようとする。
その瞬間。
「はぁっ……はぁっ……」
足音が近付くなか、敢えて美咲はロッカーから出た。当然皐はそれに気付いたが、もう時間は無い。あまり見られたくはないので早く逃げなければ――。
「っ……? 小賢しいぞみっちゃん」
再び《裁きの刃》が皐の足を襲った。しかし皐はすぐに振りほどく。再生するまでほんの少し時間がかかるので動揺した。
ドアの異変に気付いたのか、足音が急速に速まる。
「おい信条! 大丈夫か!」
出て来たのは坂口だった。美咲はふと破壊された窓のほうを見た。皐は既にいない。
「ふぅ……ふぅ……」
息を落ち着かせる。
坂口を見上げると、先程自分が見ていた方向を少し睨んでいた。
「って、信条、どうしたんだ……!?」
坂口はしゃがみ込み、美咲の両肩を掴んだ。
「大丈夫……バカ兄貴に迷惑かけられただけだから」
顔を近づけすぎだ、と言いたいが心配してくれている人にそんな事は言えなかった。少し照れる。
「バカ兄貴? ……よくわからんけど怪我が無くて何よりだ……」
坂口は安堵のため息をついた。
しばらくして美咲は皐の事を話した。――彼のやっている事も、私の主張も、坂口は黙って聞いてくれていた。
信条皐は、執行委員会本部の屋上にいた。
スマートフォンを取り出し、長官に連絡を取るつもりだ。
「もしもし」
「もしもし……君か」
「みっちゃんはダメだったよ」
「だろうね。君も無理するんじゃないぞ。……美咲君を殺そうとしただろう?」
皐は少し目を見開いた。
「っ、バレた感じかい?」
「バレた感じだな」
やれやれ、と長官はぼやく。
「そういえばもう治したからいいんだけどさ」
「なんだ?」
「坂口慎吾っているでしょ? 彼に腕の骨をへし折られたよ」
皐は右腕をちらりと見た。
「何で折られたんだ?」
「たぶん念力系統の能力だよありゃあ」
「……あの少年がか……」
「?」
皐は首を傾げる。
「いや、こちらの話だ。ではすぐに帰還してくれたまえ」
「御意」
長官との連絡を終えた皐は、屋上から飛び降りた。
最終更新:2014年11月18日 23:24