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タイタン開店当日になった。
入り口の前には巣鴨にペ・ヨ〇ジュンを投入したのかと思えるほどの夥しい人、人、ヨン様――はいない、人。
坂口、ジェミニ、神崎、新屋敷、苓北、二宮の六人でタイタンを防衛し、ジョディー、信条、向学、二川はホワイト学院で待機となった。
「この爆弾探知器は、爆弾に近付けば近付くほどここが赤色になっていきますの」
苓北は、棒状の爆弾探知器に指差した。爆弾探知器の液晶画面の上寄りに一本のラインが引かれている。ここが青色から少しずつ赤色になっていくとのこと。
続けざまに二宮が口を挟む。
「今から二時間、つまり12時になったら一旦ここに集合する。一階は委員長、二階はジェミニ、三階は坂口、四階は新屋敷、五階は俺、念のため神崎は屋上を調べてくれ。それと……」
二宮は随分と小さな無線機を他の五人に手渡した。念のため、だそうだ。
坂口には《以心伝心》があるとはいえ、一方的にテレパシーを発信するだけであって相手の思考をキャッチすることはできない。だから無線機があるのは彼的に好都合だった。
当然だが、一般人に知られてはいけない。つまり爆弾探知器の扱い方にも注意がいる。
――任務は始まった。各員、持ち場へと移動する。
神崎は、屋上へ行く前に、ご存知委員長こと苓北と一緒にいた。神崎の視界には、和菓子屋、薬局、鍵屋などのいろいろな店が並んでおり、統一感がない。――ジャンルは決まっていないのだろうか。
「美穂? 何かありましたか?」
「あ、いや……なんか統一性のない並びかただなぁって思っただけよ」
神崎はハッとして苓北に答える。苓北は、ふむ、と呟くと、近くから何かを取ってきた。
「二階は洋服店、三階は日用品や電化製品売り場、四階は家具売り場になってて、一階はそれ以外のジャンルのものならなんでもOKなフロアのようですわ」
苓北はパンフレットを見ながら答えた。どうやら取り出してきたのはこれらしく、神崎も彼女からパンフレットをもらった。
「ん、ありがとね」
神崎は苓北に手を振り、エスカレーターに乗った。何かあった時、エレベーターの中にいると危ないし、足止めを喰らって面倒だからだ。
二階。
洋服店を手当たり次第にチェックするのには無理がある。まずは人気のないところから探そうと考えた彼は、男子トイレをうろついていた。
――しかしこの勘はビンゴだったようで、画面のラインが赤くなりはじめていた。
「近くなればなるほど、ってことか……」
天井を見渡す。――怪しそうなダクトが一本通っている。ちょうど人ひとり入れそうなタイプのものだ。
「今日はツイてやがるぜ……!」
《自由創造》でちゃっちゃと梯子を創りあげると、ダクトの蓋らしきものを開けて中に入る。
携帯電話の明かりを頼りに爆弾探知器の示す方角へと進んでいく。
三階。
マッサージチェアの誘惑に耐えながら爆弾を探す坂口。
彼の目の前には見知った人物が立っていた。
「む、君はあの時の……」
山田紫電は坂口を見て呟く。
「坂口、坂口慎吾だ」
「改めてよろしくな。Answerの連中と何かあったら助けを呼んでくれていいぞ。もっともその必要はなさそうだけど」
同年齢ということもあってか、フレンドリーに話し合う二人。
ふと山田は、話題の勝手に動くタイプの掃除機で遊んでいる西園寺へと振り返った。
「……あいつも俺の仲間だ。名前は西園寺霙」
「いいねえあのポニーテール」
坂口は思わず賛美した。山田もそれに対して二回ほど頷いた。
「わかるか!? あの髪型は最高だ、何と言っても西園寺のポニーテールはバランスが良いしフワフワしてそうな感じで――」
はっとした時には、皮肉るように口元を歪める坂口と、傍で真顔で聞いていた長曽我部、黙ってスルーしていた平良の姿があった。
「ぁ、いやその」
あたふたする山田の肩を長曽我部がポンと叩く。
「山田さん」
「……」
「おいらはサイドテール派だよ」
屋上。
「……まさかこんなにも早くテロリストが見つかるなんて」 はあ、と溜息をつく。風が神崎の長い黒髪を撫でていった。
会議中に並べられていた写真のうちの三人ではなかった。ただ、その殺気めいた風貌からAnswerの一員であることは容易に想像がつく。
「スレンダーな女の子じゃないか、んんン?」
男の威圧をかけるような視線は、けれども神崎を静かに見据えていた。
「神崎美穂よ。覚えておいて」
《針小棒大(セッティング)》によりキーホルダー程度のサイズにされていた薙刀をポケットから取り出し、原寸大に戻す。薙刀の刃は空を斬り風を裂く。
「ご丁寧にどうも。俺のコードネームはスフォルツァンド、解剖大好き24歳だ」
Answerによって与えられたコードネーム、“スフォルツァンド”を名乗る男は、どこからともなく両脇から“巨大なハサミ”と“虫取り網”を取り出した。
(――空間系能力?)
その戦闘スタイルがまったくわからない武器――と言えないほどの、まさにただの道具を見た神崎は若干困惑した。
ただ、何も無かったところからあれを取り出したとなるとジョディーに似た、空間を操るタイプの能力であるだろう、と推測する。
ハサミをチョキチョキと鳴らしながら近寄る。
巨大ではあるが、幸いあのハサミは薙刀よりもリーチが明らかに短い。補助に徹するような能力、《針小棒大》とはまた別の、威力の高い能力を使う前に畳み掛ければ良い。そのほうが楽なのだ。
そう。彼女もまた坂口と同じく複数の能力を持つ限られた者である。
「先手必勝ってね……!」
地面を一蹴。
スフォルツァンドが防御態勢を取るのよりも速く、神崎の薙刀が襲い掛かる。
「……っ!?」
しかし、確実に命中していたであろう薙刀は、神崎とともにスフォルツァンドの後方に飛んでいった。
背中を取られぬようにと神崎はすぐにスフォルツァンドの方向へと身体を捻った。
「やっぱり一筋縄じゃいかないのよね……」
「なかなか速かったぞォ~? キミの華奢で美白なその脚……解剖してみたくなったなぁ」 ――当然ながら、今の出来事がスフォルツァンドの能力、《空に築く盆栽(エンプティー・パフォレート)》である事を神崎はまだ知らない。
最終更新:2014年11月18日 23:25