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女が切っ先を此方に向けたまま踏み込んでくる。

少年はそれを咄嗟に右に避ける。

(そういえば顔も年齢も変わっているが、俺に特別な力はあるのか?)

少年は戦闘状態に入るなり、疑問を頭に浮かべた。それに生前は運動神経は最悪で碌に運動もしなかった筈なのに女の素早く鋭い剣を避け続けられている。

(まずは適当に試してみるか)

少年は後ろに跳んで女と距離を取ると、刀を振りかぶる。

「破道の七十八 斬華輪」

振り上げた刀に力を込め、それを振り下ろすと三日月型の斬撃となって女目掛けて飛んでいく。

「やはり能力者でしたか。ですがこの程度…」

女は剣を前に突き出し魔法陣を出現させて斬撃を防ごうとする。だが魔法陣は容易く破れて女は斬撃を浴びる。

ニヤリと不敵な笑みを浮かべた少年は何かを確信した。

(俺には力がある…!それを試す好機が訪れたのだ…!)

「どうやら思った通り俺には特別な力が宿ったようだな。」

斬撃で土煙が辺りを舞うがそこから魔法陣が発生し、巨大な魔力の塊が光線となって少年に向かってきた。

「縛道の八十一 断空」

少年は目の前に大きく透明な障壁を作り出してそれを防ぐ。土煙が晴れ、破損した鎧の隙間から血を流している女が現れた。息を切らし、傷口を手で抑えている。

「この私としたところが…敵の力を見誤りました」

「俺は自分の力をもっと試したいんだが…勇んで挑みかかってくる割には弱いな。これで終わりだ小娘。」

男は左手を開いて力を込める。

「破道の八十八 飛竜撃賊震天雷砲」

少年の掌から極太の、稲妻を帯びた青い霊圧が一直線に放出された。

「呆気なかったな。」

少年が鬼道を放った正面を見据えると捨て台詞を吐いて残りの取り巻きも始末しようと、更なる鬼道を放とうとした時である。

「!」

背後に殺気を感じた。女が背後から黄色い魔力を帯びた剣を少年の首筋に斬りつけてきたのである。

「とった!」

女が声を上げた瞬間、少年の首筋の辺りから虹色に縁取られた白い霊気の壁が現れる。

「そんな…どうして!」

「動きは早いが、狙った場所が良くない。首の後ろは生物の最大の死角だ。そんなところに何の防御も施さないと思っているのか?」

白い壁は細長い六角形となって剣を受け止めている。

「雷鳴の馬車 糸車の間隙 光以てこれを六つに分かつ 縛道の六十一 六杖光牢」

少年が鬼道を放つと、六つの光が女を囲んで動きを封じる。

「動けない…そんな馬鹿な…」

「喧嘩を売る相手を間違えたようだな。とどめだ。」

しかし少年は女にとどめを刺さなかった。いや、刺せなかった。少年の頭上から何かが落ちてくる。

「団長ー!!!」

狼の姿をした獣人である。

最終更新:2016年10月12日 00:03