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一方、ガルガイド王国・王都ガルドリア ガルドリア城
「エイジス!しっかりしなさいエイジス!」
団長の金髪の女が全身血塗れで意識の無い狼男…もとい16~17歳程の人間の姿になったフェンリルことエイジスを力を込めて呼ぶ。
「意識不明の重体です。いつ目を覚ますのかも私共には…」
王宮に務める医者がベッドに横たわるエイジスを見やりながら険しい表情で団長に説明する。
「そんな…。エイジスがこんなことになるなんて…!私にもっと力があれば…!」
そこに医務室のドアを開ける音が響く。王国第二騎士団の騎士である。
「団長。王がお呼びです。速やかに王の間へお越し下さい。」
「分かったわ。」
眠っているエイジスを尻目に団長が部屋を出る。彼女自身も相当な深傷を負っており、医者による治癒魔法でかろうじて騎士の肩を借りて歩いていた。
王の間
玉座に腰をかけている、首の辺りまで髭を生やし、真紅の衣に身を包む壮年の王が団長に声をかける。
「しくじったそうだな。」
たった一言でズシリと重く厳しく、押し潰されるかと思うくらいの威圧を感じる。
「申し訳ございません。全ては私の力が及ばないばかりでございます。」
片膝をついて畏るも、黒尽くめの少年に負わされた傷がズキリと響く。平静を保とうとするがあまりの痛みに顔が思わず歪む。
「まさかお前を圧倒する強者が居るとはな。聞けばエイジスも重体というではないか。王国最強のエイジスをあそこまでにした男とは何者だ?」
一言一句が団長に重くのしかかる。今まで失敗など決してしなかった、敗北などありえなかった彼女の誇りをズタズタに引き裂いた憎き黒尽くめの少年の姿が脳裏に浮かんで消えない。
両手は悔しさで震えている。
「名を聞いても自分は誰だか分からないと答えていました。記憶喪失の類か、或は他国から派遣された者か…。身分証の提示にも応じず、攻撃を仕掛けてきたので已む無く戦闘になりました。」
自らの敗北と失敗の報告など経験の無い彼女は口を開くのも辛い。それでも振り絞って声を出す。それが王国騎士としての王への忠義だからである。
「それと、黒尽くめの男は不思議な力を使います。あれは魔力ではございません。」
「魔力を使わずにどうやってお前やエイジスと戦ったのだ?」
王が頬杖をつく。その姿勢がより一層目を細めて険しいものとなる。
「はい。魔力ではない、別の何かです。魔力とはまるで違う、重く濃い力です。奴はその力を斬撃や術等に変えて使います。」
「成る程。分かった。既に王国騎士団総勢に密入国者捕縛の命を下した。第二騎士団はお前とエイジスの傷が癒え次第任務に参加せよ。」
王が立ち上がり力強い声で命令を下す。
「はっ!」
「王国の秩序を乱す者はこのワシが許さん!お前は下がって良い。」
そう言うと国王は赤い衣を引きずりながら奥へと消えていった。
最終更新:2016年10月12日 00:11