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翌朝のことである。意識を失い医務室のベッドで眠っていたエイジスが静かに瞼を開いた。

「此処は…医務室…いてっ」

体を起こそうとすると全身が痛む。四肢や胸部にチューブが繋がれており、身動きが出来ない。

「そうか…俺はあの不審な侵入者と戦って…」

戦いの記憶を辿る。黒尽くめの男が作り出した光の槍を自身の冷気魔力で相殺しようと龍の姿で対抗したが、槍はエイジスに直撃し、王都の空を覆う大爆発を起こしたのである。

そこから先の記憶は無い。恐らく攻撃を受けて意識を失い、地に落ちたのであろう。

「そうだ!王都は!?団長は!?」

辺りを見回すが誰も居ない。時計を見るとまだ早朝4時であった。しかしエイジスの声に気付いた医者が部屋に入ってきた。

「エイジス様、お目覚めでございましたか。第二騎士団長様なら隣の医務室で眠っておられます。かなりの深傷を負っておられましたが王への報告まできっちり行ってから眠られました。」

「それと、王都は無事です。話によれば密入国者は戦闘後速やかに逃亡したとのことです。」

「良かった。王都も団長も無事で良かった。」

医者の報告を聞いて安堵の息を吐くエイジス。しかし表情は安堵から悔しさに変わる。

「俺が油断していなければ、これ程の不覚を取らずに済んだのに…そして団長を傷つけさせてしまった…。」

「逸る気持ちはお察し致しますが、今日1日は絶対安静です。」

医者が気の毒そうにエイジスを宥める。

「クソッ!あの野郎絶対許さねえ!」

左腕を力強く壁に叩きつけると、壁に大きなヒビが入った。頭からあの黒尽くめの男がどうしても消えなかった。

最終更新:2016年10月12日 00:12