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「それで、これからどうするんですか?」
「…何も考えてなかった。」
予想出来た筈の問いに答えられない。
「そうですよね。家無し無職の不審者ですもんね。その身分証の住所まで案内します。不審者さん。」
「もう好きに呼べ。済まんが頼むぞ。」
程無くして煉瓦造りの大きな城・グリーン城の付近に広がる城下町に辿り着いた。
「此処が貴方の家です。ああ、それと午後3時にグリーン城に来て下さい。ぐり~ん国王陛下がお呼びです。」
緑色の煉瓦造りの二階建ての家が目に映る。
「ぐり~ん国王が?俺に何の用だ?」
「貴方の所属、一応書類上はグリーン王国軍第一騎士団所属になってますから。それでは私は家に帰ります。今まで本当にありがとうございました。」
「ああ、今までありがとう。お前が居なければ此処まで逃げてくることは出来なかった。」
「また縁があればお会いすることもあるでしょう。それまでお元気で、不審者さん。」
握手を交わすと少女を一礼して去っていった。
「さて、新たな住居を見てみるとするか。」
中に入ると一階は居間、浴室、台所があり、二階に登るとベッド付きの寝室と個室、バルコニーがある。テレビや洗濯機、電子レンジや冷蔵庫といった家電も揃えられていた。
「誰がやったのかは知らんがありがたく使わせてもらうとしよう。この世界、一応文明は発展しているようだな。」
少年は居間のソファーに腰を掛けるとテレビのリモコンのスイッチを押す。
「次のニュースです。昨日午前10時から11時頃にかけて、正体不明の謎の男によるガルガイド王国王都ガルドリアへの襲撃事件が発生しました。死者や家屋の破損は無いとのことですが、ガルガイド王国第二騎士団のエリス・グリモワール団長が重傷、同騎士団所属のエイジス卿が重体に陥ったとのことです。男は2名と戦闘後に逃走し、騎士団は男の行方を追っています。」
「只今新しいニュースが入りました!ガルガイド王国はグリモワール氏の証言により男の似顔絵を公開し、周辺国に協力を要請し国際指名手配することを発表しました!」
ニュースキャスターの背後の映像パネルが公開された少年の似顔絵を映し出す。紛れも無く少年の顔である。印象的な眼帯もしっかり描かれていた。
「まずいな。グリーン王国に居ても危ないのではないか?いや、それは国王に会ってから判断するとしよう。」
テレビの電源を切り、時計は午後2時半を指していた。
「そろそろ行かねばな。」
少年は新居を後に、グリーン城に向かうことにした。
最終更新:2016年10月12日 00:16