56ページ目

「小銭。」

「何だよ。」

「策はまだある。」

「何?まだあんのか?」

李信と小銭が2人で馬車に乗りながら眼前で繰り広げられる戦いを悠々と眺めている。敵将の女騎士とその精鋭達は剣と魔法を駆使してその強さを存分に発揮してグリーンとマケドニアの軍を次々と倒していくが、もはや時間の問題である。

「岩石で分断した第四軍の背後をグリーン軍1500に突かせる。」

「第四軍の兵数は5000以上残ってるぞ?1500じゃ負けるだろ。」

「勝ちに乗じて士気の高いグリーン軍と目の前で味方を壊滅させられたガルガイドの第四軍では天地の差がある。それにこの目的は第四軍の殲滅ではなくあくまで引き付けだ。」

李信が珍しく頭を使って説明している姿に小銭は関心する。

「残り8000のグリーン軍を左前方の林に派遣した。」

「おいそれってまさか!?」

「今頃その8000は国門の左手にあるグリムリ山を迂回して密かに丘の麓付近に迫っているだろう。手薄になったガルガイド本軍を奇襲しガルガイド国王の首を挙げる!」

「マジかよ!?お前低学歴のゴミ野郎だけど少し見直したぜ!」

小銭が李信に聞いた策を聞いて歓喜する。

「我が軍が…壊滅しただと…」

ガルガイドの本軍が陣を張る丘。ガルガイド国王は壊滅させられた報を伝令兵から聞き、絶句した。

兵力ではグリーン軍を上回っていた筈である。それが謎の大軍の出現と何者かの采配によって国王が描いていた精強なガルガイド軍によるグリーンバレー攻略と指名手配犯捕獲の目的が頓挫したのだ。

「陛下、今すぐ全軍退却のご命令を!我が軍は総崩れです!」

国王の側近である男が国王に退却を促す。

「口惜しいがやむを得まい!殿は第五軍に任せる!これより我が軍は退却する!」

国王の命令で本軍、第五軍、第六軍総勢15000は退却することに決定した。

しかし後詰めとして来援した第六軍は本陣から離れた場所にグリーン川を隔てて布陣している。

天候悪化による増水で退路を絶たれるのを恐れての判断であった。

李信の作戦により、グリーン軍8000はグリムリ山を迂回し、ガルガイド軍本陣がある丘の麓まで進軍していた。

この軍を率いるのはグリーン王国のアティーク将軍である。その中に星屑の姿もあった。

(俺が国王の首を取って恩賞を頂いてやる!)と、星屑は息巻いていた。全軍が緑の甲冑なのに対して星屑は学ランなので一際目立っていた。

アティークが軍の先頭に立って大きく口を開く。

「皆の者良いかぁ!これは王国の威信を賭けた一戦である!敵の首は取らずに討ち捨てろ!目指すはガルガイド国王の首ただ一つ!」

「オォォォ!」という歓声が沸き起こる。

「かかれー!」

アティーク将軍の号令で8000のグリーン軍が国王本陣目掛けて突撃を開始した。

最終更新:2022年09月04日 16:02