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グリーン軍本陣

「申し上げます!アティーク将軍の部隊がガルガイド国王を討ち取りました!」

伝令が本陣にガルガイド国王の首を挙げた報をもたらしたのはそれから暫く経った頃である。

「オォォォオォォォ!!」

その報にグリーン軍の誰もが沸き返る。李信と小銭にもこの報は伝えられた。

「やったぜ!俺達の勝ちだ!」

小銭が喜びで跳び上がる。

「後は…あのしぶとい女騎士だな。中々粘る。心を折ってやるとしよう。」

李信が馬車から立ち上がる。

「聞けぇ!ガルガイド軍の生き残り共!貴様らの王は討ち取った!」

「なん…ですって…!」

エリスは驚愕した。既に彼女を取り巻く騎士は20人程に減っていた。彼女を囲むように屍は積み重なっていた。彼女自身もマケドニアの大軍と戦い続けて腕や腹部、足に傷を負っていた。

「あの男は…黒尽くめの…あいつが…あいつが指揮してたのね!絶対に許さない!」

激しい怒りを露わにしたエリスが鬼神の如くマケドニアとグリーンの将兵を切り伏せるが、多勢に無勢であり、今にも力尽きそうな様子であった。

「嘘だろ…国王陛下が…!」

水素と戦闘中だったエイジスにも李信の声ははっきり聞こえた。

「馬鹿のくせにやる時はやるだろ?あいつ。」

そんなエイジスに水素は軽口を叩く。しかしエイジスはそれを無視してエリスの方へ高速で駆け戻る。水素は敢えてそれを見逃した。彼に与えられたのは李信を守れという命だけだからである。

「団長…残念ですが俺達の負けです。此処は逃げましょう!」

「敵を前にして逃げるなんてありえない!そんなの私の騎士道精神が許さない!1人でも多く道連れにして陛下の後を追う!それが騎士としての忠義でしょ!」

エリスは全力で拒否した。その顔は黒尽くめの男とグリーン軍への怒りに満ちている。

「小銭、マケドニア軍に攻撃を止めさせろ。」

「何でだよ!」

「俺達は勝った。これ以上被害を無駄に増やすのは無意味だ。」

「分かったよ。クラスカードの能力を解除するぜ。」

李信の指示で小銭はクラスカードの能力を解除し、マケドニア軍は消滅した。次に李信はグリーン軍にも攻撃を止めるよう命令した。

「おい、フェンリル。」

李信が瞬歩を使ってフェンリルとエリスに近づく。それを取り巻く騎士達が剣先を此方に向けてくる。

「さて、戦は俺達が勝った。この場は見逃してやる。さっさと失せろ。」

「貴様ァ!よくも!よくも!」

エリスが取り巻きの騎士を掻き分けて李信に斬りかかろうとするも、エイジスが制止する。

「こいつは俺が倒します。団長は残兵をまとめて逃げて下さい。」

「そんなのお断りよ!」

パシッと乾いた音が鳴る。エイジスがエリスの頬を叩いていた。

「なっ…!貴方自分が何したのか分かってるの!?」

叩かれた頬を手で押さえて激昂する。

「分かってますよ。俺は上官である貴方に手を挙げました。」

「上官不敬罪よ…!騎士失格ね!」

「ええ。それでいいですよ。後で俺から騎士の位を剥奪してくれても構わない。八つ裂きにしてくれても構わない。拷問にかけてくれても構わない。」

怒るエリスにエイジスは静かに、そして堂々と言い放つ。

「でも俺は貴方に生きてて欲しいんだ!死んで欲しくないんだ!頼む!此処は俺の言う通りにしてくれ!罰は帰ってからいくらでも受ける!この真っ黒野郎を倒して帰ったら!」

突然エイジスは込み上げてきた衝動を全て吐き出す。

「頼む…!此処は引いてくれ…!命を粗末にしないでくれ!」

エイジスが頭を深々と下げて懇願する。

「何で…何で貴方、そこまで私に…!」

「貴方が…好きだからです…!」

「!」

エイジスの思いがけない言葉に驚くエリス。

「分かった。でも逃げるのは貴方も一緒よ。」

最終更新:2022年09月04日 16:04