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「おっと!瞬間移動(テレポート)!」

鬼道の光が赤牡丹を捕らえる寸前に赤牡丹の姿が消え、鬼道は不発に終わった。

「そんな見え見えの技の技にわざわざ捕まるわけねえだろ!虚閃(セロ)!」

赤牡丹が西の方向に現れて特大の虚閃を放つ。

「The Balance(ザ・バランス)」

李信が能力名を口にすると、虚閃の威力は李信に届く前に弱まり消滅した。

「何をした!?」

「ザ・バランス。俺に起こる不運をお前に分け与えた。俺にとって増幅コピーの能力者と出会ったのは不運。その不運をお前に分け与えたに過ぎない。お前の能力は増幅コピーではなく劣化コピーになったのさ。」

「なん…だと…!?」

赤牡丹が再び虚閃を繰り出すが結果は先程と同じであった。

「こっちも忘れてんじゃねえよ!ブリザード・ディバイン・バースト!」

李信の頭を飛び越えたエイジスが掌から冷気の波動を放つ。

「第四…!」

「縛道の六十一 六杖光牢」

第四波動を放とうとしたところで鬼道を打ち込まれ、動きを封じられる。そしてエイジスの冷気の波動が赤牡丹を覆った。

赤牡丹は氷漬けになり、動かなくなった。

「さて、サバを探しに行くぞ。」

「あ、ああ…。」

李信が先に走り出すとエイジスもそれに続いた。

「サバが逃げた!?」

2人と合流した水素がもたらした報らせはエイジスを一瞬驚かせた。

「どうやって逃げたんだあの自称副管理人は。」

「側近に何らかの移動能力を持つ奴が居るらしい。オルトロスが言ってた。俺とあいつとの決着はつかなかった。あいつはどっかに行ったよ。」

エイジスとのやり取りの後、水素が目の前の氷漬けになった男を見やる。

「こいつがオルトロスが言ってた強い奴か。見事に氷漬けじゃん。」

「ああ、俺が見事に倒してやったぜ。」

エイジスがそう言うと詠唱を行う。

「我は戦いの終わりを告げる。我は人なり。」

全身の赤い紋様が消え、瞳と頭髪の色も元に戻る。

「城兵がサバの逃亡を知って逃げ始めている。俺達も戻るぞ。」

そう言ったのは李信である。我先にと逃げ始めた無数の城兵を捨て置き、3人は本陣に戻り始めた。

「と、いうわけで城は落としたがサバは逃げた。」

「ご苦労だった。今から陥落させたクワータリア城に入り、周辺豪族に味方につくよう使者を送る。明後日出立し、ランドラ軍を迎え討つ。」

「んじゃ俺ら3人は戦いの時まで休むわ。またな。」

水素がアティーク将軍に報告を終えると、エイジスと共に本陣の陣所を退出する。それに李信が続こうとすると

「あ、お前は残れ。話があるから。」

とアティーク将軍に言われたのでとどまった。

「何だ?何か今日は眠いんだが。」

「無責任なことを言うな。作戦の立案者はお前だろ。」

欠伸をしながら話す李信にアティークが厳しい表情で諭す。

「これから軍の首脳で軍議だ。お前も来い。」

「俺は首脳でも何でもないし後はお偉いさん達で頑張ってくれ。」

「おい!」

「…仕方ねーな。」

渋々了承し、軍議に入ることになった。

最終更新:2022年09月04日 16:32