80ページ目
「おっと!瞬間移動(テレポート)!」
鬼道の光が赤牡丹を捕らえる寸前に赤牡丹の姿が消え、鬼道は不発に終わった。
「そんな見え見えの技の技にわざわざ捕まるわけねえだろ!虚閃(セロ)!」
赤牡丹が西の方向に現れて特大の虚閃を放つ。
「The Balance(ザ・バランス)」
李信が能力名を口にすると、虚閃の威力は李信に届く前に弱まり消滅した。
「何をした!?」
「ザ・バランス。俺に起こる不運をお前に分け与えた。俺にとって増幅コピーの能力者と出会ったのは不運。その不運をお前に分け与えたに過ぎない。お前の能力は増幅コピーではなく劣化コピーになったのさ。」
「なん…だと…!?」
赤牡丹が再び虚閃を繰り出すが結果は先程と同じであった。
「こっちも忘れてんじゃねえよ!ブリザード・ディバイン・バースト!」
李信の頭を飛び越えたエイジスが掌から冷気の波動を放つ。
「第四…!」
「縛道の六十一 六杖光牢」
第四波動を放とうとしたところで鬼道を打ち込まれ、動きを封じられる。そしてエイジスの冷気の波動が赤牡丹を覆った。
赤牡丹は氷漬けになり、動かなくなった。
「さて、サバを探しに行くぞ。」
「あ、ああ…。」
李信が先に走り出すとエイジスもそれに続いた。
「サバが逃げた!?」
2人と合流した水素がもたらした報らせはエイジスを一瞬驚かせた。
「どうやって逃げたんだあの自称副管理人は。」
「側近に何らかの移動能力を持つ奴が居るらしい。オルトロスが言ってた。俺とあいつとの決着はつかなかった。あいつはどっかに行ったよ。」
エイジスとのやり取りの後、水素が目の前の氷漬けになった男を見やる。
「こいつがオルトロスが言ってた強い奴か。見事に氷漬けじゃん。」
「ああ、俺が見事に倒してやったぜ。」
エイジスがそう言うと詠唱を行う。
「我は戦いの終わりを告げる。我は人なり。」
全身の赤い紋様が消え、瞳と頭髪の色も元に戻る。
「城兵がサバの逃亡を知って逃げ始めている。俺達も戻るぞ。」
そう言ったのは李信である。我先にと逃げ始めた無数の城兵を捨て置き、3人は本陣に戻り始めた。
「と、いうわけで城は落としたがサバは逃げた。」
「ご苦労だった。今から陥落させたクワータリア城に入り、周辺豪族に味方につくよう使者を送る。明後日出立し、ランドラ軍を迎え討つ。」
「んじゃ俺ら3人は戦いの時まで休むわ。またな。」
水素がアティーク将軍に報告を終えると、エイジスと共に本陣の陣所を退出する。それに李信が続こうとすると
「あ、お前は残れ。話があるから。」
とアティーク将軍に言われたのでとどまった。
「何だ?何か今日は眠いんだが。」
「無責任なことを言うな。作戦の立案者はお前だろ。」
欠伸をしながら話す李信にアティークが厳しい表情で諭す。
「これから軍の首脳で軍議だ。お前も来い。」
「俺は首脳でも何でもないし後はお偉いさん達で頑張ってくれ。」
「おい!」
「…仕方ねーな。」
渋々了承し、軍議に入ることになった。
最終更新:2022年09月04日 16:32