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クワキタ山 サバの本陣
「申し上げます!オルトロス様お討ち死に!オルトロス隊はぱしろへんだす殿が率いて持ち堪えておりますがついに退却を開始、崩壊は時間の問題です!」
サバが遣わした斥候の1人が本陣に戻り、味噌カツ戦死に続く更なる凶報をもたらした。
「オルトロスまでもが…!一体何をしている!このままオルトロス隊が崩壊すればゆかり隊が危ないではないか!それに中央は何をしている!ピザ屋はどうした!何故動かん!右軍の援護に回れと命じた筈だ!」
兵力で勝るサバ・ランドラ連合軍の勝利をサバは信じて疑わず決戦に臨んだ。ところが、蓋を開ければ凶報ばかりが舞い込んでくるのである。こんな筈では無い、サバはそう強く感じているからこそ理想と現実の大きな乖離に焦りを募らせる。
「それが、ランドラ帝国のセール大将軍からこのような書状が届いておりまして…」
サバは兵が差し出した書状を強引に取り上げて開く。
「決戦を左右する中央軍を他へ回すわけには参りません。我が中央軍は敵中央軍の必死の抵抗に遭い、攻めあぐねております。此処はサバ様ご本人が出馬し、右軍の後詰めとして向かわれるべきかと思います。」
サバは読み終えると激怒して書状を破り捨てた。
「左軍も苦戦しておるではないか!何故セールとまさっちは動かない!出撃の狼煙を上げろ!」
「先程から何度も参戦を促していますが、頃合いを見計らっているとの一点張りで動く気配がありません!」
配下の兵の知らせに更に苛立つサバである。
「2人は何をしている!右軍こそ劣勢だがセールとまさっちの2万が参戦すればまだ巻き返せるではないか!」
戦が始まって3時間 サバ・ランドラ連合軍54000の内、戦っているのは3万余りだった。兵力で劣っているかっしー・グリーン連合軍に明らかに押されているのである。
中央軍ではリキッド隊がぃょぅ隊とぶつかり、頃合いを見計らって退却し馬防柵、空堀、土塁を利用して被害を与えていた。
ぃょぅ隊の苦戦を見てくれない隊といぬなり隊が参戦し、必死に猛攻をかけるが堅固な陣の前に苦戦を強いられていた。
リキッド隊の左右にそれぞれ3000の部隊が展開し、後ろを3000の部隊が固めている。この後ろの3000は前方に置かれていたが、リキッド隊と配置が入れ替えられていた。
李信はセールが仮に内応しなかった時のことを考え、味方中央に合計11000を配置して最も厚くしていた。セール隊を除いた敵中央軍は12000。数では僅かに味方が劣っているが、堅固な防御陣地により容易に攻撃を防いでいた。
しかしセールが内応しなければ敵は27000の兵力で攻めてくる。如何に堅固な防御陣地があるとは言え、ランドラ帝国最強のセールの大軍を受けてはひとたまりもない。そこで李信は自分達左軍が、中央軍が苦戦したら敵右軍を破った後に、敵中央軍やサバ本軍が味方左軍に向かってこなければ敵中央軍の右側面を突いて助成するか、それが不可能な状況ならばアティークやかっしーの本軍が後詰めするよう指示していた。
因みに味方左軍については李信は崩れることはないと確信していた。まさっちがクワユキ山に布陣して敵をこのクワッタに引きずり出した時点で実は内応を確信していたからである。
敵中央軍のぃょぅ隊が苦戦していると、いぬなり隊4000がぃょぅ隊と入れ替わりリキッド隊に猛攻をかける。くれない隊3000も味方中央軍に攻撃を開始した。
これを受けて味方中央右翼の星屑と中央左翼の小銭がリキッド隊の援護に入った。戦場中央はこのクワッタの戦いで最も激戦となる。
しかし敵の中央軍は戦いながら疑問を抱いていた。何故セールが参戦しないのかと。
セールは最も多くの兵を率いている。そのセールが何故中央軍に加勢しないのか、セールが加勢すれば一気に突破出来るのにと。
しかし、セールは動かない。まさっちも動かない。既に李信の策により調略を受けてかっしー・グリーン軍に内応していたからである。
中央軍右翼を率いるのは星屑であった。星屑隊3000は敵のいぬなり隊と激突していた。
「俺、軍を指揮するのなんて初めてなんだが。よっぽど人材不足なんだなグリーン王国。あれ?」
星屑が前を見やると柵や空堀、土塁を利用して守る自隊の前で見覚えのある顔を見つける。
「あれはフクナガ!今日こそ引導を渡してやる!」
宿敵フクナガの姿をいぬなり隊の中に発見し、星屑は前線に飛び出した。
「お前、フクナガだな!俺が星屑だ!今日こそケリをつけようぜ!」
柵の真後ろまで出てフクナガを呼びつける。
「お前は星屑か!ちょうどいい!我が新しい愛機・スサノオの力を見せてやる!来い!」
フクナガへ頭上に現れたモビルスーツのコクピットに飛び移り、乗り込む。
「そんなロボット、ぶっ壊してやる!マジシャンズレッド!」
因縁の対決が始まろうとしていた。
最終更新:2022年09月04日 16:37