92ページ目
小銭がくれないを両断すると、戦場の中央東で声が湧き上がる。小銭隊の将兵達である。くれない隊は将を失って後退していく。
同じ頃、李信隊のマロンがゆかりと出くわしていた。
「お前がゆかりか!」
全身を宝飾した派手な姿の女が将兵の人混みの隙間から光を放って現れる。
「私はこの世界のプリンセス、ゆかり!この美貌に加えて明晰な知能、更には…」
「来い!我がジン・バアル!バララークサイカ!」
マロンが腰に差している剣を抜き、稲妻のように折れ曲がった2本の角と龍のような尻尾を持つジンを召喚し、ゆかりに向けて稲妻を放つ。稲妻はゆかりと周囲の兵に命中し、兵は黒焦げになって倒れていく。
「ちょっと、まだ喋ってる途中よ!喰らいなさい、プリンセス・ゆかりアロー!」
全身を覆う宝飾を破壊され、深手を負ったゆかりがマロンの態度に怒り、桃色の光の矢を放った。
「バララークサイカ!」
剣より放たれた稲妻がその矢を打ち消し、ゆかりに最後の光を全身に浴びせた。稲妻が消えると、黒焦げになってこと切れたゆかりが前のめりに倒れた。
「来てくれ!隕鉄!」
ぱしろへんだすの握り拳に鉄の塊が握られ、それが刀となって出現する。
「この鉄血転化状態の俺に接近戦を挑むとはな。」
エイジスが二丁小刀をしまい、腰から長剣を抜いて構える。
「一刀修羅!」
ぱしろへんだすの周りに風圧が発生し、身体能力を極限まで上昇させる。
「フェンリル・獣人化!」
エイジスは鉄血転化状態のまま獣人化を行い、狼男となったエイジスの全身に赤い紋様が浮かび上がる。
「第二秘剣・裂甲!」
エイジスの眼前から突如姿を消したぱしろへんだすが背後に周りを斬りつけてくる。エイジスは素早く察知して振り向きざまに鍔迫り合いになる。
「今、色はいらない!」
ぱしろへんだすは視界から色を遮断して更に身体能力を上昇させる。
「第七秘剣・雷光!」
視認出来ない速さで不可視の斬撃をエイジスに放つ。しかし速さならエイジスも負けていない。
「エイジストラッシュ」
エイジスが高速でぱしろへんだすの体を斬りつける。ぱしろへんだすはそれを全て隕鉄で受け切る。
「成る程な、お前の剣術覚えたよ。俺の能力・模倣剣技(ブレイドスティール)でな!」
「何!?」
「エイジストラッシュ」
ぱしろへんだすがエイジスと同じ技の名を唱えると、エイジスと全く同じ動きで四方八方から剣撃を繰り出してくる。
「グハッ…!」
「どうだ?自分の技を受けて傷を負う感想は!」
ぱしろへんだすのエイジストラッシュを受けたエイジスは胸部や腹部の傷から血を流していた。
「だが俺にも時間が無いんだ!行くぞ!」
ぱしろへんだすが更に魔力を掻き集める。
「第一秘剣・犀撃!」
ぱしろへんだすが素早い突きを正面から突き出してくる。
「氷の壁(ジ エロ・ムーロ)!」
氷の壁を急いで展開してぱしろへんだすの突き攻撃を避けるが、ぱしろへんだすは高速移動で脇から同じ突き攻撃を仕掛けてくる。
「エイジストラッシュ!」
ぱしろへんだすの突きを間一髪でかわし、高速剣撃を見舞い全身を斬り刻む。
「この速さは!」
「無想・樹海浸殺!」
精霊の力を引き出し、両手を地面に叩きつけることで禁術が発動する。地面から無数の蔦が飛び出す。
「なら本気を出す!一刀羅刹!」
ぱしろへんだすは身体強化の極限を発揮し、無数に生えてくる蔦を隕鉄で斬り刻みながら突き進む。
「氷の槍(アイスブロック・パルチザン)!」
「第七秘剣・雷光!」
作り出した氷の槍と隕鉄の穂先が互いを捉え、ぶつかり合う。力でエイジスが上回り、ぱしろへんだすの隕鉄が砕け散る。
「お前、まあまあ強かったよ。身体能力が半端じゃねえ。でも、俺の方が上だったな。」
エイジスが言葉をかけると、為す術が無くなったぱしろへんだすの体を無数の蔦が囲い、鋭い枝で全身を貫く。枝や蔦を伝って流れるぱしろへんだすの血液が生々しく大地に滴り落ちる。
「我は戦いの終わりを告げる。我は人なり。」
エイジスは詠唱を唱えて元の姿に戻る。
「さて、これで敵右軍は壊滅だな。俺も持ち場に戻らなきゃ。」
ぱしろへんだすをも失ったオルトロス隊は、エイジス隊に蹂躙されていった。
最終更新:2022年09月04日 16:42