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2000年より施行されたBROPシステムによる教育法改正。学校という、若者の時間を多く強制してきた制度は、この年をもって変わっていった。
○○インダストリーによるBROP(バイオロジックリアリティングオペレーション)は、現実に非常に近い仮想空間を社が管理するネットワーク上に作りだし、コミュニケーションをより身近に感じようというものだった。

当初は掲示板やチャットと言った、文字だけでやりとりを行うシステムを、人の顔を見て、表情を知り、場の空気を感じながら直接言葉で会話することでコミュニケーション問題を解決するといった施行をされていた。しかし、それが教育現場に反映されるまでに、そう時間はかからなかった。
学級崩壊、いじめ、引きこもり、不登校……時代が進むにつれて、これらの問題は大きく進行していった。学校に時間を取られ、授業は単調なものになり、ただ所属していれば卒業まで行けるという意識が広まったのだろう。

その打開策として、BROPシステムは導入された。仮想空間内では、最大、時間の経過を現実の二倍で行うことが可能で、これにより若者を拘束していた時間を削減。自由な時間を与え、彼らが勉強以外の教養を行える機会を増やそうという試みだった。
特に仮想空間内という非物理的な場所を使用することにより、年間のコストを大幅にカットすることに成功し、教育現場は、より勉強面に力を注ぐことが可能となった。

しかし一方で、この施行により、若者の自由はより加速し、大人に対する敬意や恐れと言ったものが見られなくなっていったとも言われる。仮想空間という場所は、生や死の概念も薄くなり、命の重要さでさえ、若者は軽視するようになった。
子どもは大人の本当の姿に愛想を尽かし、大人は子どもの極端で急激な成長に絶望した。そして、恐れさえしていた。子どもは大人になり、彼らはまた、子どもに恐怖する。
日本に、本当の大人と呼べる存在は、もはやいなくなったのである。

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最終更新:2014年01月25日 21:04