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見たことのないような満面の笑みを浮かべると、三嶋は机を叩く。映像が切り替わり、病院のベッドらしき映像に切り替わった。そこには、いろいろな機器を身体に取り付けられ、両親らしき人に見守られた女の子の姿があった。
「この仮想空間は、君たちの意識を、身体から引き離すギリギリのところまでダイブさせるようにできています。だからこそ、身体に大きな痛みや、現実にほど近い感覚を与えているわけです。
そのため……仮想空間での死のフィードバックは、君たちの脳に大きな影響を与え……例外なく脳を殺します」
さすがにこれには、生徒も衝撃を抑えきれずにザワザワとし始めた。そのとき、『風』がものすごい剣幕で声を張り上げた。
「ばっか野郎、うるせぇお前ら! 先生の話が聞こえねえだろ!」
「おい風、お前はこれに賛成なのかよ!」
「賛成なわけねえだろアホ! だからって逃げられるのかよ!」
風と数人の生徒は、キリのない言い合いを始めた。そのとき、もうひとり、三嶋に近い席にいた直子(新庄直子)がおどおどと小さく手を上げた。
「あの、先生……もし生き残ったら、家に帰れるんですか?」
小さな声だったが、一気にクラスは静まりかえった。そう、誰もがそれは、影ながら気にしていたことだった。
「“生き残って優勝すれば”家に帰れます。ただし、これも後で言うつもりだったのですが、今回は二人一組のチームなので、ふたりだけ生き残ることが条件です。あと、一生遊んで暮らせるだけの賞金も出ます」
「賞金?」
思わずそう口にしたのは、レイナだった。彼女の家は貧乏で、普段から彼女自身も生活に苦しんでいることは誰もが知っていたが、このときばかりは、全員の蔑むような視線を、レイナはもろに受けた。周りの空気に気づいた彼女は、はっとして口をつぐむ。
「自分の欲望にどん欲なのは良いことです。誰もが、生きる目標が同じとは限りません。金のため、家族のため、自分のため、国のため……どんな目標でも、生きることに望みがあるのなら、それはいいことなのです。ただし、逃げてばっかりで楽な道を進もうとするのは、真面目に生きているとは言えませんねー」
そう言った三嶋は、視線をルイズに向けた。目が合ったルイズは、思わず身体を震わせる。何もかも、三嶋には見通されているのだと、ルイズはここで思った。
「えー、話を進めます。試合期間は3日です。その中で、誰かを殺すもよし、隠れているもよし、自分のやりたいことをやるもよし。……ですが、ひとつだけ注意点があります。
もし、3日以内にふたりだけ生き残らず、数人が一気残っていた場合――全員、ゲームオーバーです。イコール、全員死にますね」
数学の公式でも言うかのように、三嶋はすらすらと、簡単に言い終わったとき、その目がある方向を向いた。
最終更新:2014年01月25日 21:48