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その後、試合が行われるこの島の説明と、再びルールの詳細を三嶋は話した。ほとんどの生徒が、あの後は食い入るように説明を聞き、何かざわめくようなこともなかった。
未だに、クラスメイトがひとり死んだという事実を受け止めきれていない部分もあるのだろう。太鼓侍の動かなくなった身体は、軍服の連中が、教室の前の隅に運んで、横たえてある。誰もが無意識のうちに、そこから視線を外した。

あらかたの説明を終えたところで、軍服が教室に、いくつもダッフルバッグを運び込み始めた。おそらく生徒全員分あるそのバッグは、太鼓侍の身体の横に、すぐにうずたかく積まれた。一見して何の違いも無いように見えるが、よくよく見れば、何か棒のようなものが入っていたり、バッグいっぱいに何かが詰め込まれているものもあった。

「えーっと、それじゃ、これからこのバッグと、私が君たちに渡すこのPDAを持ってここを出て行ってもらいます。その際に、ペアも発表します。ペアは先ほども言ったように、50メートル以上離れてると、このPDAが警報を発してくれます。離れているとライフゲージが減っていくので、くれぐれも注意するように。

もしペアがやられても、諦めずに、同じようにペアを失った子を見つけてくださいね。そうすれば、もう一度ペアを組めますから。
あ、そうそう、さっき太鼓侍が死んじゃったわけだけど、そのペアの子は特別に、ひとりで出発してもらいます。ただ、1日以内に誰かペアを見つけないと、これまた死んじゃいから、頑張ってください。

このバッグの中には、スタミナを回復するための食料と武器が入っています。武器はそれぞれ違います。まあもともと、君たちは不平等の中にいるので、ここだけ平等にしたら、不平等が埋まらないわけですね。まあ不確定要素というか、そういうのが必要なわけです」

三嶋が机を叩く。今度はスクリーンに、舞台となる島の地図が示された。PDAには、縦に数字、横に英語が割り振られた図形地図があると先ほど説明があったが、その内容がそれらしかった。

「この、今君たちがいる教室は、U-14です。いいですか、U-14ですよ。後で覚えて、PDAの地図に上書きしておいてくださいね。最後のペアが出て行ったとき、ここは立ち入り禁止エリアに指定されるから、間違っても足を踏み入れたら駄目ですよー。一応禁止エリアに足を踏み入れたらPDAが音で知らせてくれますがね。あ、死人は関係ないですよ?
まあ、みんなが隠れていたら試合になりませんからねえ。それを避けようってわけです。
あと、PDAは、電池が一日と半分ぐらいしか持たないから、あんまり当てにしないように。もしくは、誰の電池を貰えば大丈夫かな。
さて……」

三嶋はスクリーンを叩き、それを教室の上へと戻した。

「ここから出たら、どこに行ってもいいですからね。ただ、一定時間事に複数の場所が禁止エリアになります。そのときに、島に放送を流すので、しっかり聞いて、書き加えてくださいね。

最後に、アドバイスというか、助言というか――。まだ、クラスメイトを殺すなんて、っておもっている子がいるかもしれないけど……他のやつは、殺る気になってるぞ?」

誰もがびくりとして、思わず周りに目を向けていた。何より、黒影や福永に目を合わせた生徒は、しまったと言わんばかりに勢いよく目をそらした。
誠(片桐誠)は、注意深く回りを観察した。確かに、誰が何を考えているのかはまったく分からない。見た目で判断したら、間違いなく殺される。それは考えるまでもなかった。
そのとき、彼は自分の横に座っていた『るく』から、信じられない呟きを聞いたのだった。

「いつ始まるんだろ……早くしてくれないかな」

背中が凍るような感覚に襲われ、誠はるくの方を振り返ることが出来なかった。彼の発言がどういう意図なのかは安易に想像できたが、それ以上の何かさえあるような気がしてならなかった。

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最終更新:2014年01月25日 21:52