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「さて、と。お、もうすぐ午後7時か。それじゃ、これからペアで3分刻みで出て行ってもらいます。最初に出て行く子はくじ引きで決めようかな? その後は、その子から名簿順で。誰か、くじ引きたい子いますかね――? いないか、じゃあ先生が引こうかな」
軍服が持ってきた、箱の中からひとつ、三角くじを取り出す三嶋。意地悪でわざとゆっくり開いているのか、多少もたついていた。
「だんし、ななばーん、金星! それのペアは、女子1番、安西美木! それじゃ、このPDAとバッグを受け取って、教室から退室してください」
金星は静かに立ち上がると、脇目もふらずに三嶋の前へと歩き、PDAとバッグを受け取った。美木も金星の後に続いた。美木は緊張はしていたが、相手が金星だったせいか、少し安心した表情を浮かべていた。
ふたりが出て行って丁度3分後、次が呼ばれる。
「男子8番、黒影。ペアは女子7番、灼眼のルイズ。受け取って退室してください」
黒影が立ち上がると、周りにいた生徒は少し恐れた様子で身を引いた。黒影は前だけを見据え、駆け足で前へと行くと、ひったくるように三嶋からPDAを受け取って、バッグ自分でひっつかんで出て行った。
「ちょ、ちょっと待って! なんでひとりで行くの!?」
ルイズも慌ててふたつを受け取ると、黒影の後を追って走り去っていった。
「あのペアはなかなか大変そうだなあ。それじゃ、次、男子9番、坂田銀時。あ、君は太鼓侍とペアだったんだが、言ったように、ひとりで出発な」
「えー、マジすか」
喜ぶとも嘆くとも言えない声を上げた坂田は、かったるいと呟きながらゆっくりと前へと歩いて行き、ふたつを受け取って教室を出て行く。
「はいはい次。男子10番、さまらら。ペアは男子19番裕太――」
その後も順繰りに名前を呼ばれていった。やがて、最後のペアである女子12番レイナと、男子14番の波風華月が呼ばれた。
「はーい、じゃ最後ね。PDAとバッグを受けとって出て行ってくださいー」
閑散とした教室で、自分の番をひたすら緊張しながら待っていたふたりは、少し息を吐いた。
先にレイナに受け取らせて、波風もPDAとバッグを受け取って教室を出て行こうとした。しかし、ふと思いとどまって立ち止まった。
「ちょっと、早くしてよね」
レイナに怪訝な表情を向けられる波風。もともと、オタクの部類になる波風は、レイナと仲が良いわけもなく、このペアであることがわかったときは少し落胆した。
「悪い、少し待って」
波風は教室へ再び足を踏み入れると、もうひとつ残っていた、本来は太鼓侍のものであったであろうバッグを指さした。
「これ、貰って行っちゃ駄目か?」
「駄目に決まってるだろうが。早く行け!」
軍服はそう突き返そうとしたが、それを三嶋が止めた。
「残しても仕方ないだろう。第一、そういうのも頭の良さのひとつとも言える。いいでしょう、持っていきなさい」
「よし」
波風はバッグを二つ背負うと、レイナと共に最後のペアとして出て行った。軍服は不満そうにその後ろ姿を見ていたが、このゲーム内では三嶋が最高責任者である以上、逆らうことは出来なかった。
生徒が誰もいなくなった教室で、三嶋はしばらく無表情で突っ立っていた。
最終更新:2014年01月25日 21:55