18ページ目

「武器……?」

武器と書かれた項目があった。一徹のそこには、大きく『工具セット』と書かれていた。実際に気になって、先ほど教室を出るときに貰ったバッグを開けてみる。
パッケージのない、透明な液体の入った(おそらく水である)500ミリリットルペットボトル、固形栄養ブロックの食べ物の箱、そして、布袋の中では、なにか金属がこすれあって音を立てている。

「なんだ?」
「武器……これだって」

布袋を開き、一徹は中身を取り出してみた。おおよそ、自動車整備に使われるようなタイヤレンチ、モンキーレンチ、バールのようなもの、その他何に使われるかわからないような特殊なものが、いくつか入っていた。
とても武器と言えるようなものではないことは、確かである。

「誠の方はどうなの?」
「俺? 俺は――」

そう、誠がおもむろに自分のバッグに手を伸ばしたとき――森の静寂を切り裂く、鋭い音が鳴り響いた。それは誰が聞いただけでもわかる、銃声だった。
反射的に身をかがめた二人。さらにその後、数発の銃声が森の中に響き渡った。少し遠い場所で起こった音らしく、森の中に音がこだましていった。

「俺たちじゃないようだな」
「誰が……?」
「余計なことは考えるな。とりあえず、銃声は北のほうかららしい。急いで離れたほうがいいだろう。行くぞ」

大きな身体をものともしない軽い動きで進む誠の後ろを、一徹は必死についていく。いつ後ろから銃弾が飛んでくるかもしれないという恐怖は、彼らの気持ちをひたすらに焦らせた。
その結果、その先で潜んでいた『海とピンク』に、誠ですら気がつかないという失敗を引き起こしてしまうのだった。

「うらあああぁぁ!!」

海は一気に飛び出して、先頭にいた誠に飛びかかっていった。その手には、彼の少し小さな手には収まりきらないような、ギラギラとした光を反射するサバイバルナイフ――。

誠に向かって、海は勢いを付けてナイフを頭の上から振りかざした。ナイフを使ったことなど今まで一度もなかった海は、素人によくあるような大きな動作をしてしまう。
隙の多い振りに、かろうじて頭を反らして避ける誠。海の動きには明らかな隙も多かったが、おおよそ不意打ちに慣れていない誠も、とっさには動くことが出来なかった。

さらに、斜面になった地面に、ふたりとも足を取られて転倒した。隣同士になりながら、ふたりは斜面を数メートルほど転げ落ちていった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2014年01月26日 12:01