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画面を確認したカマンベールの顔から血の気がさっと引いた。

「ど、どうした?」

聞いて答えるとも思えなかったが、一徹は思わず聞いていた。カマンベールはしばらく、唖然とした表情で画面を見ていたが、一徹の視線に気づいて、PDAをさっと後ろ手に隠した。
カマンベールのPDAには、パートナーである海と50メートル以上離れている、もしくはパートナーの死亡の可能性があるという警告が出ていたのだった。

「べ、別に何でもない。そこから動くな……動かないで!」

そう言い残すと、カマンベールは慌て気味に、縛った一徹をそこに残して、誠たちが消えていった斜面に向かったのだった。今度は、一徹が唖然とする番だった。
取り残された一徹は、しばらくその場でぼんやりとしていたが、自分が置かれた状況を思い出す。死の危険に常に晒された状況で、縛られたままじっとしている理由などない。
ひとまず足に絡まった縄を、冷静に絡まり具合を見ながら、足を抜いていく。幸いにもカマンベールは彼の足の縛ることはなかったため、それだけで立ち上がって移動することが出来た。どうして足まで縛らなかったのかは、一徹の考えることではなかった。

一徹は立ち上がって耳を澄ませる。あたりは木が多い茂っているのか、月明かりは頼りにならない。目は当てにならず、視界は最悪だった。
PDAにライト機能は付いていることも確認していたが、電池の消耗を考えると使うのはためらわれた。何より、誰かに位置を自ら示すことになってしまう。かといって、このままでは誠を見つけられない……。ただ、彼のPDAは警告音を発してはいない。つまり、誠は50m以内には必ずいて、かつ生きているということだった。
そして偶然にも鞄に手を伸ばした一徹は、自分の武器がなんだったのかを知ることになった。

「グッドタイミングじゃないか……!」

彼の武器、懐中電灯は、そのスイッチを入れると、暗闇を切り裂くような強烈な光を放った。ただの光ではない、下手をすれば目を潰してしまうような、非常に強力な光だった。さらに、その懐中電灯はずっしりとした重みと共に、後ろには金属部分が備わっていて、殴る程度には使えそうな代物だ。武器とは言い難いものではあったが、今の一徹にとっては非常にありがたいものだった。
ライトのスイッチを入れたと同時、彼の側で動く影があった。

「一徹、無事だったか……!」
「誠!」

それ以上の言葉を、ふたりは返すこともなかった。あたりを警戒しながら草むらから姿を現した誠は、一徹の懐中電灯の光を手で妨げながら一徹の側へと寄る。すぐに一徹もスイッチを切り、二人は頷いて屈み腰になりながら、南東へと向かいはじめた。
すでに死を争っているという緊張感が、少しずつだが島を覆い尽くしていく。

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最終更新:2014年01月26日 12:05