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一方で、【ちとせ】は【たんたん】を頼りないとは思いながらも、自分の計画に賛同してこうして付いてきてくれる上、小言を言いながらもしっかりを足を進めるところは評価していた。確かに、もっと頼りがいのある男子なら文句はなかったが、それでも生死を分かつ存在である以上、協力すべき存在であることは変わりない。

「生き残る、か……」

【ちとせ】は、もし生き残ったら自分は何をしたいのかを考えた。普通の生活に戻れるとのことだが……たぶん、普通に生きることなんて出来ない。30人を、直接的でないにしても死へと追いやることなど、想像を絶する思いだ。
かといって、死にたいわけでもなかった。まだやりたいこと、やっていないことがたくさんある。それが、こんな形で終わるなんて……。

「――そんなの、ない」
「えっ?」
「……ほら、行きましょ! 立ち止まっていられないわよ!」
「そうだな、行こう」

ふたりは頷き合い、気力を奮い立たせた。何にしろ、立ち止まっていれば確実に死だけが待っている。考えこむよりも、進んだほうが希望はあった。

やがて、ふたりが目的としていたU-18へとたどり着く。比較的大きな湖の端だが、その反対側まで見通しが良く利くような開けた場所だった。【ちとせ】の予定では、このあたりで数人と落ち合う予定だったが……。
警戒して、木の影からあたりを見回すふたりだが、人影らしきものは見当たらない。湖も、静かに波音さえ立てない。

「誰もいないわね……」
「まだ、来ていないのかも」

【たんたん】は注意しながら、影から少し身を乗り出してみた。わずかなそよ風が吹いた。
そのとき、何かが破裂するような、小さな音が聞こえたかと思うと、彼のすぐ横の木が爆発するかのようにえぐれた。

「銃撃!?」
「ぼうっとしてないで、頭下げて!」

【ちとせ】は【たんたん】を無理矢理影に引っ張り込んだ。ふたりの頭上を、さらに数発の弾丸が飛び、そのいくつかは木に着弾して、二人の頭上に破片が舞う。数発で銃撃は止み、また静かな闇が訪れた。
ふたりはしばらく、言葉も出せずに、その場にじっと身を潜めることしか出来なかった。

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最終更新:2014年01月26日 12:17