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しかし、【一徹】は、従おうと身体を動かそうとした【誠】に肘で突く。少なくとも……少なくとも、【一徹】が知る【るく】は、そんな甘い男じゃなかった。かつて街の他校生に対して、武器を奪ったあげくに重傷を追わせたこともある非道さ。警察や法律など目の端にも入れないような、大胆な行動。何より、クラスメイトに対しての普段からの目つきの向けようは、決して良いものではない。
考えるまでもなかった。

「うわあああああぁぁぁ!」
「なっ!?」

【一徹】は迷うことなく、目の前の【るく】に立ち向かっていった。その【一徹】の大胆さに不意を突かれた【るく】は、引き金を引く前に間合いに入ることを許してしまう。そのまま、【一徹】は身体ごとぶつかっていき、ふたりはドアへとぶつかって外へと転がり出た。拳銃は、【るく】の手をわずかに離れて転がった。
もはやこんな状況で、たとえ敵だったとしても、今、共に行動する仲間を殺そうとしたことを【一徹】は心の中で謝った。こんなんじゃ、美木に笑われちまう……。
理由なんか考える必要はなかった。自分の思った通りに、感じたままに、願ったことを――!

「行け! 行けよ!」
「【一徹】――!」

声を張り上げ、【一徹】は3人に一瞬だけ目を振った。その瞬間を【るく】は見逃すわけもなく、馬乗りになった【一徹】の顔面に、躊躇のない拳を叩き込む。

「このボケがぁ! なめてんじゃねえぞ!」
「ぐうっ!」

それでも、【一徹】は踏ん張ったまま動こうとしなかった。せめて、3人が逃げる隙が出来れば良い。

「ふざけやがって、この野郎!」

しかし【るく】とは体力的にも力的にも勝るわけはなかった。身体ごと地面へとたたき付けられる【一徹】。そこに、【るく】は容赦なく蹴りや殴りを入れていった。もはや、【るく】の頭には、【一徹】を叩きつぶすこと以外、考えられなかった。

「おら、おらっ、おらあっ、おらおらっ!」
「ぐっ、あうっ――」

反撃しようにも、【一徹】は行動することが出来なかった。力の差どころか、喧嘩慣れなんかしているわけもない彼にとって、もはや耐える以外に方法は無かったのだ。
そのまま、【るく】は【一徹】が声を上げることもなく、動きすらしない状態になるまで、永遠と殴り、蹴りを繰り返した。

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最終更新:2014年01月26日 12:28