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一方、【一徹】の捨て身の突撃を受けて、脱出の機会を得た【誠】達は、裏口から出た直後で固まっていた。充分に考えられることではあったのだが、そこには【るく】のパートナーであった【福永ユウジ】が、静かにたたずんでいたのだった。まさに彼相応といわんばかりに、暗闇の中で微かな光を放つ西洋刀を掲げる姿は、彼の異様さを直に表しているようだった。

「――さあ悪者よ、俺の前で朽ち果てるがいい!」

【福永】はそう大きく声を発しながら、西洋刀を【誠】達へと向けた。あまりに恐れおののいてしまったのか、【のび太】は一目散に北の森の方へと逃げだそうとした。しかし、【福永】はのび太の前へと軽やかに先回りすると、その身体へと西洋刀を振り下ろした。

「う、うわああぁっ!」

反射的に後ろへと下がった【のび太】は尻餅をつき、そのすぐ足下に西洋刀が振り下ろされた。運が良かったと言えるが、それが運の尽きだったとも言える。【福永】がその一撃で止まるわけもなく、再び、素早く西洋刀が構え直される。

「やらせるかっ!」

【誠】は見ていられずに飛び出した。本当なら怖かったが、理性がそれを押し殺していた。だが、正義感……本来なら大切だったかもしれないその心が、自分を犠牲にすることは予測出来なかったかもしれない。
【誠】が身体ごとぶつかっていったにもかかわらず、【福永】は軽くそれを押しとどめると、目にもとまらぬ速さで【誠】を斬り捨てていた。【誠】の重々しい身体が、何の抵抗もなく地面へと横たわる。

「ま、まことぉっ!」
「悪者は成敗した……」
「どうしてこんなことするんだよっ!」

【のび太】は我を忘れて、【福永】に声を張り上げた。

「すべてはお前達が招いたことだ。俺は……お前達を許さない!」
「何を言って――」
「成敗っ!」

西洋刀が再び振り下ろされる。今度ばかりは【のび太】では避けることすらままならなかった。まっすぐに、西洋刀は【のび太】の頭へと、嫌な音を立てて食い込んだ。血こそ吹き出しはしなかったが、真っ白な瞳を向いた【のび太】は、刀を抜こうと頭を蹴り飛ばされた【福永】に蹴り飛ばされる。

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最終更新:2014年01月26日 13:41