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残った【だだだ】は、目の前で繰り広げられた光景にもはや気力すら沸かず、ただただ呆然とその様子に目を見開くことしか出来なかった。いよいよ次は自分だと……どうしてこうなったのかと……さまざまな考えが、彼の頭をパンクさせた。
「まだ足りない……俺は……」
ぶつぶつと、独り言を呟きながら【福永】は【だだだ】へと迫る。だがそのとき、南からまっすぐに向かってくる2つの影があった。そのひとつは【だだだ】の側へ、もう一つは、迫り来る【福永】の前へと立ちふさがった。
「オラッ! シケた面向けてんじゃねーぞユウジ! この【風】様が直々に、お前をぶっ飛ばしに来てやったぞ!」
【福永】を指さし、現れた【風】はそう言い放った。微かに、【福永】の眉間に皺が寄る。
「お前も、俺の前に立ちふさがるかっ!」
「うっせぇ! お前にどんな理由があるか知ったこっちゃねえ! 俺はただ、お前の顔が気にくわないんだよっ!」
「そんな理由……なんですか?」
そうツッコミを入れたのは、気力を失った【だだだ】に手を貸していた【ココ】だった。女の子にもかかわらず、【ココ】は【だだだ】の肩に手を貸し、易々と彼の体重を支えていた。元々、クラスでも奇妙な存在だった彼女だが、このときばかりは【風】にとって良いパートナーだったと言える。
ツッコミを入れられて調子が狂ったのか、【風】は勢いよく振り返って、大げさに言い放つ。
「頼むから、キメてるところなんだから黙っててくれよ!」
「……いいですけど、前、気をつけてください」
「なにっ……? のわっ!」
気配を感じてとっさにしゃがみ込んだ【風】の頭の上を、刀が皮一枚の距離で掠めていった。
最終更新:2014年01月26日 12:42