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そんなとき、【福永】という男に出会った。【福永】は一見すればおかしな男だったが、その名前は、このオペレーションを仕組んでいた政府管轄のデータベースで見たことがあった……。

――お前は悪者か。

【るく】が【福永】と出会ったとき、最初に聞いた言葉がそれだった。その言葉からも分かるように、もはや【福永】という男とまともに会話が出来る人間はいない。彼の意識は常にどこかへ向いたままで、目の前の出来事は、まるで何度も覚めてしまう夢の間のように処理されている。
だから【るく】は、【福永】を一発殴り飛ばした。そうしたら十発がお礼として帰ってきた。……友達の宣言も、何か親しいことをしたわけでもない。それだけでふたりは共に行動するようになった。
専ら、容赦ないほどの強さを誇る【福永】に対し、【るく】は何か口答えをすることはなかった。

ふたりは学校に在籍こそしていたものの、【BROP】による授業に出席することもなく、また学校そのものに通わずに、常に行方は知られずにいた。それこそが、【るく】が唯一【福永】へと頼んだことだった。【BROP】からさえ離れていれば、もしクラスがバトルロワイアルの対象に選ばれたとしても、参加せずにいられるのではないか。そんな希望的観測――。
だが現実はそう上手くはいかなかった。ついにクラスがバトルロワイアルの対象へと選ばれたとき、真っ先に政府の人間がふたりの元へと姿を現した。問答無用に、彼らはふたりを捕まえようとした。

……何人殺したかはわからない。とにかく、必死にふたりは彼らの手から逃れようとした。それでも、数に勝てるわけもなく、最終的には投降せざるをえなかった。ここで死んでは、何も意味はなかった。

気を失い、次に目覚めたときには、すでにBROP……バトルロワイアルの中へとダイブさせられていた。それでも運良く【福永】とパートナーになった【るく】は、【福永】にまず自分が知っていることすべてを話した。BROPのことから、おそらく【福永】は以前に行われた同じバトルロワイアルの優勝者であるという予測まで……。
 【福永】にとって、【るく】の話は、自分の欠けた記憶の多くを補足する重要な事柄……それは彼にとって救いでもあった。だからこそ、【福永】は【るく】に敬意を払うようになった。

【るく】はまだ知られていない真相を暴くために……。
【福永】は自分の記憶を取り戻し、自分を陥れた者を見つけ出すために……。
ふたりは、このバトルロワイアルで、何をしてでも生き残ることを決意した。

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最終更新:2014年01月26日 12:45