2.中盤戦、其ノ一
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島にサイレンが響き渡り、PDAに情報が送られてくる。少しうたた寝をしていた【風】はPDAを取り出して中身を確認した。
午後10時に発表された『U-8』『U-11』『U-16』『M-4』『M-14』『T-16』という6つの禁止エリアに引き続き、
2日目の午前0時には『J-9』『L-17』『O-21』『S-17』『R-16』という5つの禁止エリアが追加された。これを見る限り、どうやら禁止エリアの指定順序や数に決まりは無さそうだが……。
逆に考えるならば、南にある半島や、南西の半島には足を踏み入れないほうが安全かもしれない。万が一にでも『J-15』のような島のつなぎ目が禁止エリアにされた場合、完全に孤立してしまうし、そうなれば決着が付かなくなり、全員がゲームオーバーになりかねない。
たとえまだ誰かを殺す決意がつかないとしても、それだけは避けることを頭に入れておかなければならない。
【風】は、身体を起こし、薄汚れた窓から外の様子をうかがった。【福永】との抗争があってから数時間が経つが、あれ以降、今いる場所では、誰かの悲鳴も、銃声も聞こえてくることはなかった。
【誠】と【のび太】が死んでからというもの、この0時の配信でも残り人数に変動はなく、いたって静かなものだった。それでも、すでに6人のクラスメイトが死んでいるということを考えると、さすがに【風】でも恐怖せずにはいられなかった。
今、【風】とパートナーの【ココ】、【だだだ】、そして【一徹】が居る場所は、北に位置する大きな湖の畔にある『N-9』という地点だった。そこには複数の船が接岸されており、そのうちのひとつへと4人は身を隠している。
あの後、【福永】から一時的に身を隠した【風】達は、その場からあまり離れずに、しばらくじっと影で様子を見ていた。理由は簡単だ。【一徹】は容赦なく殴られていたにせよ、死んでいなかったことを【風】は何となく感じ取っていたからだ。
同時に、パートナーである【のび太】を失った【だだだ】には、新たなパートナーが必要だったこともある。【一徹】も【誠】を【福永】に殺されたのだから、パートナーが必要……。このチャンスを不意にするわけにはいかなかった。
気が済んだのか【るく】が殴るのをやめ、先ほどまで【一徹】達が隠れていた店の中へと姿を消した。
同時に、【風】と【ココ】は【一徹】を担ぎ上げ、その場から逃げ出した。【一徹】は辛うじてHPが残った状態だったが、そこはゲームならではの設定ですぐに意識を取り戻した。
その後、すぐに【一徹】と【だだだ】のパートナー設定を行いゲームオーバーを防ぐと、4人はそこから禁止エリアすれすれを通りながら北へと移動した。
すべては【ココ】による指示であったが、妙に彼女はバトルロワイアルについて詳しいようで、【風】もその指示はおそらく正しいのだろうと信じていた。男を軽々と支えられ、息を切らさずに長距離を走り、バトルロワイアルについて詳しい……そんな存在は明らかに不自然でしかなかったが、今は、従う他に良い案はなかったのもある。
最終更新:2014年01月26日 13:42