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その瞬間を見逃すことはなかった。【英菜】は腰から包丁を取り出して、立ち上がる前に【るく】へと横から切りつけた。

「――あたしはいつでも勝つ! あんたの負けよ!」

間違いなく一殺のラインだった。……相手が気づいていなければ。

「ちっ……」

【るく】は舌打ちをすると同時、かるくその手をなぎ払った。包丁は掠めすらせずに彼女の手を離れて、草むらの茂みへと消えていく。
身体を硬直させる【英菜】に、【るく】は容赦なく額に一撃――。どっさりと地面へと倒れる【英菜】に、【るく】は吐き捨てる。

「おいクソ女、俺の負けでいいさ。俺は好きなようにお前をやっちまったし……」

やれやれと呟きながら、【るく】はゆっくりと立ち上がった。同時に、拳銃を持った右手がはじけ飛ぶ。何が起こったのかと、手の中から拳銃が消えた右手をかばいながら、【るく】は体勢を低くして辺りをさっと見回した。

これといって見当たる影はなかったが、方向的にSUVの裏手だ。車と大木の影……しっかりと見定めておけば、これが【るく】にとって盾にもなる。次の不意打ちは、出来ない。
しばらくして、SUVの影から姿を見せたのは、【坂田】だった。ライフル、AK47をしっかりと構え、緊張の表情を浮かべながら、ゆっくりと一歩一歩、【るく】へと近寄ってくる。
その姿を捉えた【るく】は、思わず笑みを浮かべていた。女さえ目を向けず、ひたすらに自分が獲物を狩るときを狙っていたのか。こいつは先見性がある、間違いない。惜しいなあ、こんなところじゃなかったらきっと、いい友達になれたろうに……。
10メートルほど離れたところで、【坂田】は立ち止まった。【るく】は両手を軽く挙げながら、【坂田】に言葉を投げかける。

「おい――お前、いい面してんじゃねえか。他のやつみたいに生っちょろい考えしてねえ。……やる気だな?」
「当たり前だ、それがルールなんだろ」
「だよなあ? ルールなんだから仕方ない。みんな殺さなきゃな」
「動くな!」

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最終更新:2014年01月26日 13:07