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PDAが音を発して、新たな立ち入り禁止エリアデータが適用されたことを知らせてきた。【星屑】はPDAで地図を確認しながら、自分たちがだいたいどこにいるのかを予測する。地図情報でいえばおそらく、M-7あたりにいるのだろう。禁止エリアからは確実に離れている。これで安心だった。
前を走る【むった】について行きながら、今度はどこに向かうのかと予測を立てる。最初、いかにもけんか腰の強い【むった】とペアになったとき、【星屑】は乱戦になることを覚悟したものだが、予想外にも彼は冷静だった。それどころか、今まで他のペアに一度も出会ったことすらない。そのおかげで寝不足ということもなく、むしろ昨晩はぐっすりだった。
何を考えているのか話そうとしない【むった】だったが、それを【星屑】もあえて聞こうとはしなかった。関係なかったのだ、【星屑】の考えとは。
――必ず皆を救ってみせる、そしてヒーローになるのだ。そのためにはこのBROP自体を潰さなければならない。それだけを【星屑】は考えていた。だが具体的な方法は未だに思いつかないまま、時間は経過し続けている。所詮、彼の頭では何の答えも導き出せない。それを認めることすら、否定していた。
しかし、目の前の現状についてはしっかりと見据えることが出来ていた。
「【むった】! スピードを落とそう! スタミナが減ってきている」
「ちっ……」
言われて【むった】はスピードを落とした。【星屑】はわずかに口の端をゆがめる。意外にも【むった】は素直だ……的確なことを許容できるだけの余裕がある。逆に言えば、扱いやすいということでもあった。
また、【むった】の目的である【福永】との接触に関しても、【星屑】にとっては都合がよかった。彼であれば【福永】と仲も良いし、一番相手にしたくない敵とも戦闘が回避できるというもの。そうなれば少しでも、また考える時間が増える。
最終更新:2014年01月26日 13:11