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問題は、三嶋がしびれでも切らせたのか、禁止エリアが一気に拡大したことだった。ほとんどは海の部分とは言え、これまでに比べれば圧倒的に範囲が広く設定され、逆に言えば戦闘エリアが一気に狭まったことになる。今後も同じように、禁止エリアが広く設定されてくることも予想できるし、当然ながら全員が地図の中央付近へと集まってくることも予想出来る。ついに戦闘は避けられないだろう。
生き残るには、やるしかない……。
……本当にそうなのだろうか。星屑はふと疑問に思った。確かに戦いを強いられているのは確かだ。だけど相手を倒すことにどんな意味がある? これで生き残って、俺たちはどんな意味を持つのだろうか。
「おい、星屑。いまさらだがお前……人、殺せるよな?」
「えっ? いや……わからない」
にやっとして振り返ったむったに、星屑は少し戸惑う。殺せるか殺せないかで言えば、この状況だ。殺せるだろう。だが、その意味は……理由は……。
「難しいこと考えてんのがバレバレなんだよ。もっと簡単に考えろ」
「簡単に、とはどういうことだ?」
「生きること。生き残ること。自分が生きなきゃ、その存在価値など皆無だ」
生きる……。そして存在価値を得る。星屑は目を見開いた。今までの地味で味気ない生活。何の取り柄もない自分。どこかずれたような感覚を持っていた現実。……もしかしたら、俺はこの場所を本当は求めていたのか。こうして、存在の意味が確認できる場所を。
むったは続ける。
「俺も理由なく人なんか殺したくない。だがこれは、ある意味でみんなを救うんだ。そして俺たちが生き残った後、また同じ事が繰り返されないように考えなければならない」
「むった……。そうだな、そうだよな」
「お前はゴミか? それとも存在価値がある人間か?」
「俺はゴミなんかじゃない」
「それで決定だろ」
ニヤニヤとして、そして吐き捨てるようにむったは言った。
内心、むったは笑い転げんばかりだった。理由無く人を殺したくない? そんなのは嘘だ。みんなを救う? そんな気はさらさらない。生き残った後にどうするかなんて考える必要なんて無い。
最終更新:2014年01月26日 13:12