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単純で、生きる理由なんて考える馬鹿は扱いやすい。なぜ今の現実に目を向けて、それだけで物事を考えられないのか。深い理由なんて考える必要があるのやら……。
むったは、今が、楽しくて楽しくて仕方が無い。出来ればこの目の前にいるゲスすら殺してしまいたい。でも今は……我慢、我慢さ……。殺したときの感覚が素晴らしいものになるように、今の今まで我慢してきたのだから。楽しくしてもらわないと困る。そのためにも、星屑の野郎にはたっぷりと協力してもらわないとな……。
その考えなど知らず、星屑は心の中で決意を秘めていた。生き残る、そして存在する意味を持つ。そうすれば救世主にも、ヒーローにもなれる可能性が広がる。俺の存在意義はそこにある。

「ほら、武器を持てよ。救世主さん……。とにかく敵が近いぜ」

むったは森の中から少し出て、湖沿いの崖の上へと出た。そこから対岸に見える、数人の人影……。ちらほらと建っている小屋のひとつへと入っていった。どうやら、もうすぐ楽しいことを始められそうだ。

むったと星屑は一気に森の中を南東へと下っていく。星屑にはもう言葉はなかったが、その目は先ほどとは違って何かを決意したような目だった。むったはそれを見て心躍る。
間違いなく、強い爆発力を秘めている。そしてそれが最大まで開花されたとき……俺はこいつを殺すんだ。そうすればきっと、かつて無い快感を得られる!

――むったは少しおかしな人間だった。殺傷、暴力にどこか快感を得る。それは幼い頃から続いてきたことだ。動物を殺すこともあれば、人を殴ることもある。できれば殺してみたいという感覚はあったが、それをやると、わずかな快感を得ることすら制限されかねない。だから我慢してきた。
どうしよう、どうしてみよう。どうしたら俺の欲求を満たせる? それだけをただ、このバトルロワイアルが始まってからというもの、ずっと考え続けてきた。特に、目の前の星屑を妄想の糧として、たとえば首を絞めて殺してみたり、あるいは手足をばらばらにしてみたり、あごを砕いてみたり、頭だけを宙づりにしてみたり……。

ただ、それは抵抗しない人間ではおもしろくない。動物も、最後まで生きようと抵抗するからこそ、そこに魅力を感じる……。たまらないのだ。人間も、人によってはもっと強い抵抗を感じられるはず。生きる、生きたいという欲求! それを強くみせてほしい。

「ああ……」

むったは性的快感をすでに感じ始めていた。強く、強く勃起して走りにくくなる。しかし走るスピードは上昇していた。快楽を求めて、むったは一刻も早くと求め続ける。
一番殺してみたいのは、福永ユウジだ。今まで彼の右腕としてずっと側にいたのだが、彼ほど生きることに欲求を持つ人間はいない。彼のことだ、まだ生きているに違いない。そう、俺が殺すまでは生きていてくれよ……?

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最終更新:2014年01月26日 13:12