数分歩くと、
ファングの目的の所、さわやかな緑の景色がいっぱいのエリア「もり」に着いた。
このエリアに着くと、ファングは
太太郎の持っているカゴからサファリボールを1個取り出したかと思うと、ポケットの中にサファリボールを入れながらいきなり森の中に駆け出し、あっという間に姿が見えなくなった。
「あー、行っちまったな、あのポケモン探しに」
人参がそう言うと、太太郎がこっちを見て少し笑って言った。
「あいつの好きなポケモンといえばあれだからな」
しばらくファングは戻ってきそうにないので、人参と太太郎は気持ちのよさそうな草原にドテッと寝てしまった。
一方ファングは、一つの木を見つけるとその木をあっという間に登ると、周りの木々を見わたした。
「お、居た居た!」
ファングが声を上げたその向こうには、ファングが大好きなポケモン「エイパム」が木に登っていた。
ファングはポケットに入っていたサファリボールを取り出すと、その木の上から飛び降り、すぐにまたあっという間にそのエイパムが登っていた木に登り、エイパムの目の前にしゃがんだ。
エイパムは身軽で逃げることはたやすいことはずだったが木登りが得意だったファングの動きには身動きが取れず、ファングの目の前から一歩も動けなかった。
エイパムはサファリボールをコンとぶつけられると、ボールの中に吸収された。
コン・・・コン・・・コン・・・
サファリボールが左右に動き始め、ファングはそのボールを集中してじっと見ていた。
バチンッ
ボールに左右に動く動きが無くなり、そのエイパムはファングのものとなった。
すぐにファングはそのエイパムをボールから出すと、そのエイパムにニックネームをつけた。
すっかり日が暮れ、ファングがもとの場所に戻ると、人参と太太郎はぐっすり寝ていた。
「おい起きろ! サファリゾーンには時間制限があるんだぞ!」
そう言ってファングは人参と太太郎を起こすと、座ったまま二人のえりをつかみ、ずるずると引きずっていった。
サファリゾーンの入り口に戻り、サファリボールの入ったカゴを受付の人に返してサファリゾーンから出ると、辺りはもうすっかり暗くなっていて、街灯がピカピカと光っている。
「うわ暗いなぁ、どっかに泊めてくれる場所ないかなぁ」
ファングがそう言って右を向くと、微妙に赤く光っているところがある。
「なんだろう?」とまだ半分寝ている人参と太太郎を完全に起こした。
そして人参が「あれポケモンセンターじゃね?」と言うと、人参が先に走り出した。
後に続いてファング、太太郎が走り出し、そのポケモンセンターに向かっていった。
人参が自動ドアを走って通り抜けようとすると、ベシンとそのドアに顔からぶつかった。
ファングと太太郎も急に止まれず、人参の背中にドシンとぶつかった。
「いってーな!」
人参がファングと太太郎を振りはらうと、ポケモンセンターの自動ドアに書いてある紙を読んだ。
「本日休業」
ファング 2010/5/4
「なんで休業なんだよまったく・・」
と、怒った様子でポケモンセンターのドアに八つ当たりしている二人に
「そんな怒る事もねぇじゃねえか♪」
と上機嫌に注意しているのは誰でもないファングであった
普段短気であるこの男がこんなにも上機嫌なのは先ほど捕まえたエイパムのせいであろう
「あいつ馬鹿みたいにはしゃいじゃってよぉ」
そう呆れたように言った人参も内心は興奮状態にあったに違いない
なにせゲームの中でしかお目にかかれなかったポケモンを自分のものにできたのだから興奮しないわけがないのである
「早く対戦してみたいよなぁ太太郎!」
ファングにも引けをとらないほどの上機嫌で人参がそう言ったが太太郎は違った
興奮が冷めやまない二人に対しこの男は誰よりも冷静に物事を見ていたのである
「ポケモンセンターが閉まっているってことはそれどころじゃない事がおきてるってことなんだぜ」
その太太郎の言葉を聞き、二人は昨夜警察官が語った窃盗の件を思い出した
「そういやこの辺りで窃盗事件が起きてるんだよなぁ」
人参が不安そうにそういった瞬間、女性の甲高い悲鳴が聞こえた
「きゃああぁぁ!!!泥棒!!!」
「「「なんだって!!」」」
三人は悲鳴のする方向へ駆けつけた
70mほど走ると黒い服を着た大柄な男が一軒の民家を襲っているのが見えた
「いけーー!!カクレオン、「どろぼう」だ!!はっはっはーー!!」
どうやら男のものと見られるカクレオンが民家から金品を強奪しているようだ
「あんなの強盗じゃねぇか!考えてる暇はねぇ!!いけぇおかむら!」
ファングはそう叫びモンスターボールを地面に投げた
しかしエイパムは言う事を聞かず電信棒に上って遊び始めた
「おい!!おかむら!!なにやってんだ!戦え!」
人参と太太郎は呆れて苦笑いしつつもファングの正義感の強さを尊敬せずには居られなかった
が、いつまでも尊敬の対象がファングだった訳ではない
「お前が最近噂の窃盗犯だな?」
ゆっくりとした口調で話しながら犯人に近づいて行ったのは三人が昨日世話になった警察官である
「いけ、ハッサム「メタルクロー」」
警察官がさっきと変わらぬ口調でハッサムにそう命令すると
「ぐあぁぁあああ!!」
窃盗犯はカクレオンと共にその場に倒れた
「「かっこいい・・・」」
太太郎と人参はすっかり尊敬の対象をファングから警察官に変えてしまった
その後、警官に連行され強盗犯は警察署まで連れていかれた。
「すごいなー、やっぱりポケモンを自由に扱えないと駄目かー」
と人参が尊敬の目で男を連れて行く警官を見ながら語った。
「やっぱり野生から捕まえたばかりだからまだ言う事聞かないのか……」
おかむらと名の付いたエイパムを抱え上げてファングがちょっと悄げるように呟く。
エイパムは抵抗はせず今は大人しく尻尾の手をゆらゆらと動かしているだけだった。
野生のポケモンは捕まえられてもまだ自由の身だった生活が忘れられないため、余りトレーナーの言う事を聞かない。 ジムバッジなどがあれば言う事を聞かせられるようにはなる。
しかしサファリゾーンのポケモンでもあり、襲われないようにしつけられているため、以前トレーナーにしつけられたことはあるのでサファリゾーンのポケモンは基本的に人懐っこい。
言うことを聞くのもそんなに時間はかからないのである。
そこに先程の少女、四翼が三人の元へと駆け寄った。
「さっき強盗事件があったって聞いたけど大丈夫? もう犯人が捕まったのはヤスタカさんに聞いたけどその現場にいたらしくてね」
名前を聞いていなかったのでわからなかったが四翼が説明だと昨日ファング達を止めてくれた警官がヤスタカと言うことらしい。
「そろそろうろついている訳にもいかないよなぁ」
しかし辺りはすでに八時を過ぎて暗くなっており、家や街灯が光を放つ。
ポケモンセンターも休業で止まる当てがない。 今日もヤスタカにお世話になるのも申し訳ないかと思った三人は「野宿かなぁ」と少々不安げな表情を浮かべる。
「私の秘密基地に泊まってく?」
四翼が笑いながら語りかける。 しかしその細い手にはモンスターボールが二つほど握られていた。
三人は思いもよらぬ助け舟に「ホント?」と四翼に聞きよる。
「でも一つ条件がある、私と一戦戦かおう? ポケモンも捕まえたようだし」
どうやら四翼はファング達と一戦交えたいらしく、交えたら勝敗関わらず泊めてくれるそうだ。 こちら側に特に経験をつむのにも役に立つし負けてもデメリットは何一つ無いのでファングは
「受けてたつぜ、ルールは?」
「ルールだなんてこっちまだ一匹づつしかいないんだから……」
と太太郎が突っ込む。
「私の使うポケモンは二匹、あなた達は一匹づつ。 早い話3:2ね」
四翼はモンスターボール二つを手玉のようにくるくると中で回して遊びながらしゃべる。
余り会話に注意していない人参が周りを見渡すと周りにはいつしか人だかりができていた。
街中と言うこともあるし八時を過ぎているとはいえ都市なのでどこもおかしくはないのだ。いわゆるストリートファイトみたいな物なのである。
子供のトレーナーにこの世界じゃなくても居そうな格好をしたギャル系のトレーナー、仕事帰りのようなトレーナー。 こうして見わたせば自分たち達のいた世界と余り変わらないものなのかも入れないと人参は思った。
その中で特異な格好をしたものを見た。 黒いシルクハットにステッキ、黒いスーツ姿。 年齢からしてはジェントルマンとはかけ離れており、18にも満たないぐらいだろう。
彼だけがその周りのトレーナーたちより何かが違うと人参は感じた。
「おーい、試合始まるぞ-」
太太郎が人参に呼びかけると人参はハッと我に返ってすぐに太太郎達の方へと走っていった。
粉 2010/5/5
人参が太太郎のもとに着いた頃には既に勝負が始まろうとしていた。
ファングは既にモンスターボールからエイパムを出しており、後は四翼がモンスターボールからポケモンを出すだけだった。
「ふーん、エイパムねぇ。じゃあ最初はこっちにしようかな。」
と、言って四翼は右手に持っているモンスターボールを投げた。
出てきたのはゴルバット―――
だったが、明らかに色が違う。
普通のゴルバットは体色が青色なのに比べて四翼のゴルバットは抹茶のような緑色。
翼膜も紫色ではなく淡い桜色。 俗に言う「色違い」だ。
「え・・・?色違い・・・?」
太太郎は言ったが周りの観衆のざわめきにかき消されて人参の耳には届かなかった。
「色違いのポケモンを持ってるトレーナーとは、珍しいな・・・」
と、言う声を人参は聞いたり、中には
「やだぁ、こんな色のしたゴルバットは初めて見たわ。私が子供の頃にはこんなの見なかったのに、最近は色々と可笑しいわねぇ。」
なんて言う人もいた。
あんたが見てないだけだよ、と人参は心の中で思いつつ、ファングと四翼の方に目を凝らした。
流石のファングも色違いには驚きを隠せないようで、目を大きく見開いて硬直していた。
「あら、色違いにビックリしちゃって動けない?こっちから先に行っちゃうよ?」
と、四翼が言うとゴルバットはエイパムに向かって一直線に突っ込んでいく。
ゴルバットが一直線に突っ込んでくるのをみてようやく目が覚めたファングは
「やべっ、うっかりしてた・・・ いけ、エイパム!しっぽをふるだ!」
とファングが命令するとエイパムはまってました、と言わんばかりに可愛らしそうに尻尾を振って見せた。」
それに驚いたゴルバットは突進をやめて四翼からの次の命令を待った。
「やった!初めて命令を聞いた!」
余程命令を聞いてくれたことが嬉しいのかファングは手を握りしめてガッツポーズをとり、笑顔をこぼした。
「そんなことで喜んでもらわれると困るなー。さ、次の攻撃いくよっ」
と四翼が言うとファングは真面目な顔に戻り次の行動を考えた。
最終更新:2010年05月05日 21:23