1乙SS・マイ


11 :ドラーモン ◆Op1e.m5muw :2007/01/14(日) 20:57:42 ID:???

端から見れば俺はどんな風に見えているんだろう。
『チャンピオンロードでエリートトレーナーをナンパする作戦』は
想定外の要因により中止することになってしまった。
想定外の要因、それは俺の服をつまんで離さないゴスロリ少女・マイである。

【1】は遅咲きのポケモントレーナーだった。
様々は地域を旅し、ポケモンリーグに挑んだことも何度かある。
そして今年はシンオウ地方にやってきた。
目的はただひとつ「肌の白い北国美人を彼女にする」こと。

しかし【1】の気持ちはいまいち乗らなかった。。
様々な女性トレーナーにアプローチをかけてみるが、情熱が長続きしない。
そして「飽きっぽい男」として振られてしまうのだ。

チャンピオンロード。
ポケモンリーグ挑戦を控えている以上、ここが出会いの最後のチャンスだ。
【1】は決死の覚悟でその道に足を踏み入れたのだ。
そして地下2階、霧の中にマイはいた。
「……出口まで連れてって」
マイはそれだけ言うと、【1】の服の裾をつかんだ。
『マジかよ、子連れでナンパなんかできねーって』
「いや、俺は急いでるんだ。すまないが別の人に……」
しかしマイは全く聞く耳を持たない。
【1】は仕方なくマイを連れていくことにしたのだ。
そして現在に至る。



12 :ドラーモン ◆Op1e.m5muw :2007/01/14(日) 20:59:31 ID:???

仕方なくマイを連れたままダンジョンを進む。
途中出会ったサイキッカーのナツミとツカサにダブルバトルで勝利した【1】とマイ。
マイのガーディはなぜか手助けばかりする。
いや、それが悪いとは言わないが、無口なマイの印象も相まってかなり地味だ。
『可愛いんだからもうちょっと愛想良くすればいいのに』
おっと子供に構ってはいられない、俺は俺の任務を果たさなければ。
「俺は【1】、よかったら友達からお願いします」
俺は懐かしのねるとんのように頭を下げて二人のサイキッカーに手を差し出した。
ぎゅ、と手を握られる感触がある。
『やった!この際どっちでもいいができればツカサさんが……いや、ナツミさんも捨てがたい……』
満面の笑みを浮かべて顔を上げる【1】。
二人のサイキッカーはすでにおらず、その手を握っていたのは……マイだった。

「……ともだちから」
【1】の顔が真っ赤に染まる。
しかしそれは恥じらいではなく怒りの紅潮だ。
「なんだよ、俺を馬鹿にしてんのか!!」
子供に同情されたという惨めな気持ちがマイへの怒りに変わる。
マイは【1】の怒りも気にせずに再び裾をつかんだ。
【1】はその腕を乱暴に振り払う。
「お前がいちゃ彼女探しもできないんだよ!」



14 :ドラーモン ◆Op1e.m5muw :2007/01/14(日) 21:00:25 ID:???

【1】の剣幕もさらりと流すマイ。
これではのれんに腕押しだ、いくら言っても意味がない。
【1】は岩壁を背に腰を下ろす。
「あー畜生、なんでこうなっちまったんだよ。今年も一人淋しくリーグ挑戦か……」
殿堂入りした後に部屋を出ると外で待っていた彼女と熱い包容、
なんて夢もガラガラと崩れ落ちていく。
うなだれる【1】。
その前にマイが立っている。
マイはぽつりとつぶやいた。
「……私がついててあげる」
……はぁ?
「あー気持ちはありがたいが、生憎俺の望む女性は胸が大きくてスタイル抜群の……」
そういう【1】の頭をマイが抱き締める。
「……胸、あるもん」
ゴスロリの服越しにマイの淡い膨らみが【1】の顔面に押しつけられる。
『ちょ、ちょっと、これは一体どういうこと……』
ジタバタと暴れる【1】に、マイのとんでもない言葉が浴びせられた。

「……すき」

すき、すき、すき…
脳内でリフレインする突然の告白に頭が真っ白になってしまう。



15 :ドラーモン ◆Op1e.m5muw :2007/01/14(日) 21:02:56 ID:???

密着されたマイの胸は早鐘のように脈打ち、先の告白が事実であることを【1】に教え続ける。
「う、うわぁっ!」
思わずマイを引き剥がす。
「じ、冗談じゃ、ないよな」
マイがコクリと頷く。
「年、離れてるぞ」
もう一度コクリと頷く。
いざ告白されてしまうと、目の前のマイがとても愛らしく見えてくる。
「はぁ……俺ロリコンじゃなかったつもり、なんだがなぁ」
ボリボリと頭を掻く【1】の前にちょこんと座るマイ。
「……私、子供じゃない。だから【1】もロリコンじゃない」
普段と変わらないマイの瞳。
それを見た【1】は大きく深呼吸すると、決心をこめて口を開いた。
「じゃあオトナのキス、しようか」
その瞬間、無表情なマイの顔が真っ赤に染まった。
【1】はマイの手を掴んで強引に引き寄せる。
二人はそのまま唇を合わせた。
『……おとなの、キス』
マイは幸せで一杯だった。

そして。
バトル終了後、鳥使いのタカコと【1】は仲良く語り合っている。
「兄妹でリーグ挑戦?すごいわね」
「いやぁ、違うんですよ」【1】はマイの肩に手をかける。
「マイは俺の彼女です」
タカコは茫然と口を開いていたまま動けない。
マイはぺこりと頭を下げる。
「……彼がロリコンで……ごめんなさい」
「やっぱ俺、ロリコンなのか……」
【1】の苦悩とマイの微妙な笑顔、凸凹カップルの旅は始まったばかりだ。



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37 : ◆xqjbtxNofI :2007/03/13(火) 21:05:36 ID:???

俺は【1】。
つい先日殿堂入りしたばかりのポケモントレーナーだ。
だが、そこに嬉しさはなかった。

俺はとても美しいチャンピオン・シロナ様を倒し、そしてシンオウ全土にその雄姿をアピールしたはずだった。
しかしいざテレビのインタビューとなったとき、レポーターはとんでもないパスを振ってきやがった。
「えーと、妹さんですよね」
マイクを向けた先は、俺にくっついて離れない少女……マイだ。
ひょんなことで付き合うことになった俺とマイだが、まだその交際歴は短い。
『シンオウ全土にロリコン扱いされることだけは避けなくては』
【1】は遮るように答えようとする。
「ええ、実は親戚の子……」

「……かのじょ」

マイの口から出た言葉にその場が凍りつく。

「……わたしは、【1】の、かのじょ」

再びマイが事実を口にする。
「えーと、愛にはいろんな形があるからね……頑張れ!」
シロナ様があわててフォローするが、その場の雰囲気が元に戻ることはない。
「いや、子供の冗談ですって!あはははは……」
俺の必死の弁解が虚しく響く。
そして、マイは俺にトドメをさした。

「……こどもじゃない……大人のキス、したもん」



38 : ◆xqjbtxNofI :2007/03/13(火) 21:06:29 ID:???

翌日のシンオウ新聞は「ロリコンチャンピオン爆誕!」などという見出しと共に、俺の服の裾を掴んで離さないマイとのツーショットが一面を飾っていた。

母親は「アンタもう家に帰ってくるな!」などと三下半を叩き付けられ、会う人、すれ違う人が俺を奇異の目で見ている。

ネットの掲示板ではロリコンをカミングアウトした(と勝手に決めつけられ)「伝説の勇者」などと一部の信者に持ち上げられていた。

「あーあ、参ったな……」
ヨスガシティのベンチで新聞を広げて顔を隠している【1】。
こんな様では普通に町を歩けない。
新聞に指で穴を開け、周りの様子を観察する。
『気付かれてはいない……な。ん?』
道の向こうからトテトテと走ってくるのはマイだ。
両手にはクレープを持っている。
マイの口にはクリームが付いており、我慢しきれずつまみ食いした証拠として残っている。
『あ、かわいい』
【1】がそんな幸福感を感じていると、マイは【1】の座るベンチの横にちょこんと座り、「……はい」とクレープを差し出した。
しばらく二人でクレープを食べる。
だが、【1】はうっかりしていた。
【1】と同じくらい有名になった少女が隣に座っていることに。



39 : ◆xqjbtxNofI :2007/03/13(火) 21:07:16 ID:???

新聞越しにクレープを食べている【1】だったが、何やら周りが恥ずかしい。
ふと顔を上げると、新聞で顔を隠しているにも関わらず、人だかりがこちらを注目していた。
「あのゴスロリの子、確か……」
「ロリコンチャンピオンの……」
「じゃあ、隣のはまさか……」
『ま、まさか……』
そう、マイは普通に横でクレープを食べている。
バレないはずがないのだ。
「ま、マイ!行くぞ!」
慌ててマイの手を掴もうとするが、マイは口にクリームを付けたままでこちらを見ているだけだ。
そして、口を開いた。
「……ふいて」
「わ、わかった、待ってろ……」
マイは言い出したら聞かない。
【1】は懐からハンカチを取り出すと、マイの口元を拭きはじめた。

ピロリン、ピロリン

周りの野次馬が携帯のカメラで激写してくる。
「写メは、写メは止めてください!」
必死で止めようとする【1】。
だが、マイはそのカメラに向かってピースサインを返している。

「ぬおおおおおおーーーーん……」

【1】は号泣しながらその場を走り去っていった。



40 : ◆xqjbtxNofI :2007/03/13(火) 21:09:09 ID:???

「なあ、ピカチュウ。俺はどうすればいいんだろ?」
ヨスガのふれあいひろばでベンチに腰掛けながら、【1】はピカチュウ相手に自問自答していた。
人々からの好奇な視線から逃れるために、マイを置いて逃げてきてしまった。
「やっぱ、嫌われたかなぁ」

トテトテ

足音に気付いた【1】がその方向を向くと、マイが肩で息を切らせて立っていた。
「ま、マイ……」
「……置いていった」
珍しく頬を膨らませて怒りのアピールをするマイ。
「ゴメン」
「……クリーム、付いてる」
マイはそっと顔を近づけ、【1】の口元に付いたクリームを自らの舌で舐め取る。
「あ……」
突然の事態に驚く【1】をよそに、マイが照れ臭そうに横に座った。


二人の目の前では、マイのピカチュウと【1】のピカチュウが何やら腰をカックンカックンさせている。
「こ、交尾……してるね」
「……【1】もしたいの?交尾」
「ぇ……マイがもう少し大人になってからな、ハハハ」
「……大人、だもん」
そんな馬鹿な会話をしながら、【1】はマイの手を握った。

「……やっぱり、今する?」
「しないって!!」



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最終更新:2007年03月19日 23:14