旅立ち
―――ここはどこだ?
周りが暗くて何も見えない、何も聞こえない……
腹の痛みも全く感じない……なぜだ?
………まさか……"俺は死んでしまったのか?"
……あの傷を負ったまま放置されれば当たり前か……
せっかく、氷の宝玉も取り返したのに……待て!?
まだあいつ……フィレンテはまだ計画を実行してる。
このまま俺が死んだらフルーラはどうなる?……まずい、俺はまだ死ぬわけにはいかない。
早くフルーラのところに向かわないと!!
突如周囲を光が包みだし、暗闇が崩れていった。
今、目に映っているのは、染みがついている白い壁……薄暗い蛍光灯。
蛍光灯が正面に見えるということは、俺はどこかで寝ているということだ……
背中が柔らかい、これは布団?よく見ると、俺の体には白い掛け布団が被さっている。
…そして俺の傍にはフルーラが居た。
『……心配したんだから………』
フルーラの目には涙が浮かんでいた、だがそれは悲しみによる涙では無かった。
あれから五日が過ぎた……
俺は腹の傷で、二日間生死の境を彷徨ったあげく、起きた後も高熱で五日間入院していた。
合計で八日間も、この島に滞在していたことになる。
入院中はフルーラが、ほとんど付きっ切りで居てくれたおかげで
なかなか充実とした日々を、過ごすことができた。
入院中には色々な話をした、俺の今までしてきた旅やポケモンのこと、そしてあの日のこと……
あの後にフルーラが助けを呼んでくれて、俺は病院に搬送された。
あと数分遅かったら―――あまり言いたくない、今でもぞっとする。
血がたくさん減っていたようで、失血死しかけていたらしい。
本当にあのまま死ななくて良かった。
フィレンテを撃退し、助けを呼んでくれたフルーラには、感謝してもしきれない。
……フィレンテがあの後、病院で治療を受け逮捕された。
俺よりは傷が浅く、俺が気絶している間に退院し、留置所に行ってしまったようだ。
ジュンサーさんから聞いた話によると
フィレンテは自分の罪を全て認め、全面的に受け入れることにしたらようである。
彼には彼なりの、プライドみたいなものがあったのだろうか……
そして俺は今、フルーラと一緒に、アーシア島本島にある、祭壇の島に来ていた。
俺とフルーラがここに来た理由は、儀式を行うため。
フィレンテから氷の宝玉を取り返したため、三つの宝玉が揃った。
これで巫女であるフルーラが祭壇で、オカリナを吹けば儀式は終了となる。
だがここに居るのは、俺とフルーラだけだ。
祭りから既に一週間経っていて、島民の人たちも忙しいようだ。
俺が入院している間に、済ませてしまえばいいと思ったのだが。
フルーラの強い要望に加え、長老が操り人様が不在の間にはできないと言い
儀式は俺が完治するまで延期。
結果、この儀式に参加したのは俺とフルーラだけになってしまった。
「じゃあ……今からやるね」
最初にオカリナを演奏した時と、同じ服装で身を包んでいる。
"タッタッタッ"と祭壇に向かって、走る音が俺の耳に響く。
祭壇の中心に足を置き、オカリナを口に添える。
そして音を奏で始めた。
翡翠の柱が音に合わせて、輝きだす。
波の音だけが囁く中に、混ざり合うその音色は
とても美しいものだった……
演奏を終えると共にフルーラは祭壇から降りてきて、俺の近くに駆け寄った。
「これで儀式は終わり!私の演奏……どうだった?」
「最高だった、今まで聞いた演奏や歌よりもずっと……」
「嬉しいな……お腹の傷はどう?」
「もう大丈夫だ、一週間も病院に入院していたんだからな
フルーラの方も、怪我を一つも負わなくて良かったよ」
「あなたのおかげよ、本当にありがとう!」
……俺のおかげなのだろうか?
俺は最後までフルーラを、護ることができなかった……
とどめを刺したのもフルーラであるし、瀕死の俺を助けてくれたのもフルーラ
むしろ俺は護られた方なのでは……と思ってしまう。
「俺……フルーラのこと最後まで護れたのかな……?」
つい思っていたことを、口にしてしまった。
『……あなたは最後まで私を護ってくれた、私のことが心配だったから
最も信頼できるリーフィアを残して行ったんでしょ?』
「で、でも!!」
――俺が喋ろうと口を開いたときに、突然フルーラが俺の口を塞いだ。
「フ、フルーラ……?」
『私は最後まであなたに護ってもらった、そう思ってる。
それでいいでしょ?だからもうこの話題はお終い!』
……おそらくこれの結論は俺の中で永遠に出ることは無い。
しかしフルーラがそう言ってくれているのならば、俺は自分の目的を達成できたのだろう。
ふと横を見ると、フルーラと目が合ってしまった。
すると突然フルーラは顔を紅潮させ、視線を逸らした。
俺も同じように視線を下に向けた、顔が熱を帯びていくのが分かる。
『さ、さっきのは歓迎の気持ちじゃないのは確かよ……』
下を向きながら、俺に語りかけてくる。
「私はあなたに自分の気持ちを伝えた、だからあなたの気持ちを私に伝えて」
……俺の気持ち、それは自分の中でも分かっていた。
ずっと、ずっと前から……最初に会ったときからだったかもしれない。
それを……今、俺はここに示す。
『俺は……フルーラのことが――――』
波の音が響く中、永遠とも思える時間が交差していった。
俺は今、港に居る。
肩には重いバッグを引っ掛け、腰には六つのモンスターボールが装着されている。
一週間以上も滞在したこの島にも、ついにお別れの時が来た。
真夏の太陽が全てのものを照らし、磯の匂いが鼻をくすぐる。
あの後、俺とフルーラはしばらくあそこに居続けた。
その時に、俺はこの島をそろそろ出ねばならないことを伝える。
フルーラは数秒黙り込んだ後に、『うん、仕方ないよね』と言った。
その顔は笑顔であったが、どことなく寂しさを感じた。
しかし俺は"ポケモンリーグで優勝したい"という夢がある。
そのためにはここの島に、永遠に滞在しているわけにもいかないのだ。
決心し、俺はそう伝えた。
フルーラは下を向き、黙り込んでいたが
しばらくすると一つの考えが生まれ、俺にそれを提案した。
その提案に、俺は賛成した。
その後、俺とフルーラは一旦別れた。
フルーラは一旦、帰宅した
しばらく待っていてほしいと言われ、俺は言いつけられた通り、港で待機していた。
そのまま二時間が経過し、船長もそろそろ出発したいと言っている、まだだろうか……
携帯電話で時間を確認したときに、俺の待っていた人物は現れた。
『待って~!!』
――フルーラの声だ、やっと来た。
声の聞こえた方に振り向くと、フルーラがこちらに走ってくる。
やや大きめのリュックサックを背負っていた
「もう一度聞くが……本当にいいのか?」
「ええ、絶対に後悔しない!」
「分かった……じゃあその船に乗ってくれ」
フルーラの提案は"俺と一緒に旅をすること"
今まで住んでいた島を離れ、俺と一緒に色々なところを周るということだった。
最初は驚いたが、フルーラの目は本気だった。
色々と尋ね、本当にいいのか?そう聞いたが答えは変わらなかった。
『あなたと一緒ならどんなことでも乗り越えられる』
そう言ってくれた……とても嬉しかった
「坊主の連れも来たみたいだしそろそろ出発したいんだが……」
船長の声を聞き、フルーラは船に乗り込んだ。
その顔には寂しさも、悲しさも無い、万遍の笑顔だった。
そして俺も船に乗り込んだ。
俺とフルーラが船に乗り込んだのを確認し
船は波に逆らいながら、次の島へと前進して行った――
――Fin――
(あとがき)
284 :葉っぱ ◆lx3oly121M :2007/03/19(月) 01:41:54 ID:???
これで全部投下終了
完全に自分の作品は終了しました
最初の頃に自分の描いていた想像とあまり変わらない作品ができて良かった
このスレに出会って、小説を書き始めて
ちゃんと自分の作品が面白いだろうかとか色々悩んだりもしたけど
このスレの住人の方々は、的確なアドバイスや乙とかを言ってくれて
本当に嬉しかった
これからは名無しに戻って、スレを覗きに来る
もしかしたらまた新しい作品を書くかもしれないけど
その時はまたよろしく
最後に言う
wikiの管理人様、このスレの住人の方々
自分の作品を読んでいただきありがとうございました
最終更新:2007年03月30日 02:51