young leaf 続き5

91: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/21(水) 21:38:48
思わずパフェを食べる手も中断させて、響の顔を凝視してしまった。

「……んな見んな」

そう言う響の耳が若干赤い。あ、柄にもないこと言って照れてるんだ。

「ね、もう一回言って」

「さっきのがこれからの最初で最後だ」

「何それ」

むうっとふくれっ面をしながら頬杖をつくと、響が向かい側から身を乗り出し、私の肩のあたりに腕を伸ばした。

「?」

何か付いてる?とそこに目を向けようとした途端、



ぺろっ



「っっ……!!??//」



口の横だけに熱が籠っているような変な感じ。
どうやら口元に生クリームが付いていたらしく、それをこの人が、口で……。

「なななな何すんの!!」

「子供みたいな食い方してっからだ」

「そういう問題じゃない!!」

「何言ってやがる。昨日の晩はえらい積極的に抱きついてきたくせによ」

……あ

「あ、あれは……!」

「しかも、なぜか俺の胸で号泣してるし」

(思い出したくない失態だ……)

私が一人赤面していると、響が席を立った。

「も、もう出るの!?」

「遅い」

急いでパフェを掻き込み、今度は鏡で顔にクリームが付いていないかチェックする。そして机の上を見ると、伝票だけが残されていた。響はすでに店内にはなかった。


(……あんの馬鹿)


結局二人分の値段を払った私だった。


92: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/21(水) 21:52:17
「ねえ、ドリンクバー代」

「まだ言ってんのか」

夜、寮の夕食の席で私は響に付き纏っていた。これは決してストーカー的な要素ではなく、お金の請求だ。

「払ってよこんくらい!お金あるんでしょ」

「お前こそそんくらい払え」

「もー……」

なんか哀しくなってきた。たかだかドリンクバー代……そう思えてきてしまう自分が虚しい。

「もういいよ……その代り次は奢ってもらうから」

呟いて私は食堂を後にする。するとその足で斎藤先生とばったり出くわした。響にさっき何か言っていたから、学校帰りについでに寄ったのだろう。

「あ、監督」

……この人が響を変えた人、か。改めてすごい人だって思う。
きっと監督が居なかったら、今でも響変わってなかったんじゃないだろうか。ましてや今日みたいな日、訪れなかったかもしれない。

「橋場、もう合宿の用意出来てるか?」

「あ、いやまだです」

「何かと忙しいから早めにしておけよ。


それと、なんかやってくれたな?」

「え?」

「相川だよ」

「……あ」

この人にはすべてお見通しのようだ。死んだような目をしていた響を生き返らせた張本人。分かっても当然かもしれない。

「何があったかは知らんが、あいつの顔がいやにいきいきしてるなあと思ってな」

ハッハッハ!と笑いながら監督が廊下から出ていく。

(陽気だなー監督)

そんなところも、みんなから尊敬されて信頼される要素の一つなんだろう。
……それに。



(三か月前の私、聞いてますか。
何だかこれから変わっていきそうです、良い意味で。
皮肉なことだけど、今回の出来事があったから私は……)






95: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/23(金) 21:17:20

ayaさま

いつもあげありがとうございます!
頑張ります~(^-^)






立て続けに話が続くと息がつまりそうな話になってしまうので
ここで少し閑話のようなものを入れます。
ちょっとした短い番外編みたいなものですが。
その次から合宿偏に入ります☆
96: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/23(金) 21:34:29 HOST:58-188-157-194.eonet.ne.jp
***閑話  「勉強」   ***


「……あー!分かんない、もう」

只今、寮の一室で頭を抱えて唸っている私の目の前には、「数Ⅱ」と書かれた問題集。
やっぱり私は数学が駄目みたいだ。どうしてもテストになると点数が取れない。
しかも、あと半月もすれば6月の初め、前期中間考査なのだ。それまでにここを克服しないと、ヤバイ。

数学の授業は次から次へと進んでいくため、だんだんと前の内容が抜けていく……というわけで。
ああ、何とか頭に叩き込まないと。だけど私の頭がそれを拒否している。

ガチャッ

「……何してんのお前?」

机に突っ伏した状態の私を見て、突然入って来たその人――相川響がぽかんとして言った。私はこの人が、文字通り苦手。

「……別に」

普通に解いてる風を装って、問題集とノートに再び向き合う私。どうやら彼は何か仕事を言いつけに来たようだが、座っている私の後ろからノートを覗き込んできた。

「それは相加相乗の公式使えばいいんだよ」

「え」

「えって、それ前に習っただろ」

慌ててノートを見直すと、確かに見出しに書かれた文字は【相加・相乗関係の大小関係】だった。
だけど、結構前じゃない、これやったの。忘れちゃうってば……。

「何、数学分かんねぇの?」

「う……うるさいなぁ」

むきになって言い返すと、彼はにやっと笑って私の横に座った。そして横から口出ししてくる。

「それは違う。そっちは組立除法なんだよ馬鹿」

「……(怒)」



結局、こんなペースでなんやかんやといいつつかなりの問題数、響に教えてもらうこととなった。(結構真剣に教えてくれた)
悔しい事に、すごく分かりやすかった。理系なんだ、この男は。私は文系、特に数学は苦手分野。

「あー、だからそれは……」

「!」

(か、顔!顔近いんだけど!!)

私が一人パニックに陥っていると、響が「聞いてんのか?」と私の顔を見た。
そして真っ赤になっている私の顔を見て、すべてを悟ったかのようににやりと笑った。

(い……嫌な予感がする)
97: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/23(金) 21:50:05 HOST:58-188-157-194.eonet.ne.jp
「じゃあ今からこれとこれとこれ、解けよ。確認テストだ」

響が問題集の巻末にある問題をいくつか選んで、私に指した。

(え、そんなことまで)

とりあえず私は問題を解こうとシャーペンを構える。すると、響が、

「あ。ちなみに解けないと、」

「っ!?」

「お仕置きな」

ニヤリと笑って響が言った。響の両手は、後ろから私の胸を掴んでいた。

「なっ……と、解けないから!ていうか離してよ!」

バタバタと暴れるも、響が私を押さえつけるため動くことができない。その上、

「解けないのか?じゃあ今すぐにでもお前を犯「解きます解きます!!」

(何これ何これ!!何なのよこの体制は!!泣)

何で後ろから胸掴まれた状態で勉強しなきゃいけないのよ……。
恥ずかしくて今すぐ消えてしまいたいと思う勢いの私は、必死の思いで問題に目をやる。しかしやっぱり集中出来ない。出来るわけがない。

「っ……や」

やわやわと響が手を動かしだした。

「お前意外にここの発育いいのな。Cの上くらいか?」

「やめっ……」

「早く」

せかされるように、何とか一問目と解いた私。それにちらっと響は目を向け、

「残念でした。不正解」

「ひゃあっ!?」

あろうことに、プチっとブラのホックが外れる音がする。胸が締め付けから解放される感覚がして、くすぐったい。

「だだだだだだ駄目ーーー!!」



……結局それから私は響に抵抗し続け暴れまわったため、それ以上勉強は進まなかった。
漸く響が私から手を引いてくれたときには、私はヘナヘナに疲れていた。


「……」





「何寝てんだよ、馬鹿が」

無防備に眠る奴の寝顔を見てぽつっと呟く。すると、

「……おかーさん」

(マザコンかよ)

しかし、その瞳から一筋の涙が光った。

「……」

俺は、黙ってその涙を見つめていた。


――涙を流す姿に、過去の自分を何となく重ねてしまっている自分には気付かずに。

(こいつ、他人と距離作ってんだな)






FIN***


莉恵の両親の離婚騒動が起こる少し前のお話


98: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/23(金) 21:55:29
「あ~っっ……着いたー!」

飛行機から降りた私は思いっきり伸びをして大きく息を吸う。
本当に、うちの学校って金持ちだ。
バスケ部に力を入れてくれているのも理由の一つ。




人生初めての沖縄!!
沖縄の空!!海!!空気!!
その全てを堪能しようと気合を入れている私。
何でもやってやろうじゃないの!!バスケも響も(?)どーんと来い!!!!!





なんて、やる気がありあまっているくらいの私。
初めはそうだった。








「……………………」

「何だ莉恵……すっげー暗いオーラ出てるんスけど」

駿が訝しげに聞いてくる。

「け……」

「け?」

「携帯……」

「……まさかお前」

「落とした、かも……」

「まじかよ……」

「……」


バスケ部強化合宿一日目は、まさかのハプニングで幕を開けた。


99: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/23(金) 22:08:04
「ちょ、ちょっと見てくる!!」

駿にそう言い残して今来た道をダッシュで戻った。
下を向きつつ小走りしても、それらしきものは見つからない。今更ながら、鞄の外側の小さなポケットに携帯を入れてしまったことを後悔する。ちゃんと中に入れて、チャックをしめておくんだった。

違う学校もいっぱい来てるし、これじゃあ……

(!)

ある学校の集団。全員が下げているスポーツバックには【HIDAKA】という文字が入っている。
その中の、長身の男の人が持っている、見覚えのある赤い色とこの間沙耶と買ったばかりのストラップ。

(こんなに早く見つかるなんて!!)

時間もないので、感動に浸るのもそこそこに私はその人の元に駆け寄った。

「す、すみませんっ」」

慌てて駆け寄った私を見て、その人は、

「もしかしてこれ?」

と、携帯を見せてくれた。

「はいっ!!そうなんです」

「さっき向こうに落ちてたから、届けようかと思ってたんだよー」

「あ……ありがとうございます!!本当ごめんなさい」

良かったぁ……拾ってくれたのが優しそうな人で。何て良い人なんで。
その人もははっと笑って私に向き直った。

「どこの学校の子?」

「あ、えーと、西南です」

「!
そーか、西南のマネさんか。
ちなみに俺は日高だから。じゃーね」

「……?」

手をひらひらと振ってその人達は行ってしまった。
ひとまず私も自分の学校のみんなのところに戻る。


100: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/23(金) 22:17:38
「しゅ……駿!あった!」

「はー、もう焦らすなよいきなり、良かったな。どこにあった?」

「ごめんなさい……。
他校の親切な人が拾ってくれてた。確か日高って言ってたような」

「日高!?」

私の言葉に反応したのは、西野くん(初登場!西野 結城 一年です)だった。

「知ってるの?」

「全国狙ってる学校なら誰でも知ってますよ。日高はいつもうちとトップの座を争ってるんですから。バスケ部で知らない人はまずいないと思いますよー」

「ちなみにその携帯拾った人、どんな奴だったんだ?」

駿に聞かれ、私はさっきの光景を思い出す。

「えーと、とにかく背が高かった。180以上あるんじゃないかな……で、ちょっと髪は茶色っぽくて、色黒で」

「桐生だな」

間髪を入れず口を挟んだのは響だった。

「桐生?」

「ああ。日高のキャプテンだ。一つ年上の高3だ」

「キャプテン!?」

わ、私宿命のライバルの学校のキャプテンにあんなことしてもらったの!?恥ずかしー……しかも相手は気付いてたし。あーあ。

「あいつには気をつけた方がいい」

「え?」

「自分に気に入らないことあったら審判に殴りかかりそうになった、って聞いたことあります」

「うわっ……すごく優しそうな人だったんだけど」

「それが駄目なんだよ。あと、かなり女好きっていう噂もある。まぁ莉恵なら大丈夫だと思うけど(笑)」

「俺も同感(笑)」

「駿に響まで、語尾笑ってるから!!しかもそれ女の子に言うセリフじゃないし」

「おい、ホテルの中入るぞー」


そんなこんなで、私たちは今回バスケ部が泊まるホテルに到着した。この時期特別にバスケ合宿のために貸出してくれているそうだ。


104: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/25(日) 20:50:02
――その頃、日高高校面々

「今度こそ西南ぶっつぶすぞ」

「あぁ。あのキャプテン邪魔なんだよなー。しかもまだ高二だろ?なめられるにもほどがある」

「……それに、マネージャーか」

「ん?徹、何か言ったか」

「……いや」






「えーと、橋場の部屋は、三回の306号室な。はい、これ鍵」

「ありがとうございます」

マネージャーは、ホテルの従業員の人達と夕飯の準備を手伝ったりもする。ホテルとは言っても、学校に貸し出せるような環境なので、いかにもホテル!という感じではなく、旅館じゃないけど旅館みたいな雰囲気。そこで他校のマネージャーの子と交流したりも出来るんじゃないだろうか。

私は監督から鍵を受け取って、部屋に向かった。すると、廊下の掲示版に合宿の今後の予定が張られている。

(え、もう明日日高と試合するんだ)

明日の午後13:00~からのところに、西南VS日高の文字が。そういえば前に響たちが話していた気がしないこともない。


勝ってほしいな……。
祈るように私はその紙を見つめていた。


がちゃっ


荷物を持って部屋に入ると、なかなか立派な部屋。
残念ながら窓の外は、ホテルの中庭側だったためあまり視界は広くはないけれど、まあそれはいいや。
机の上に置いてあったら館内案内を見ると、なんと温泉もあるみたいだ。早く入りたいなと思いつつ、荷物を解き始めた。
105: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/25(日) 21:02:33 HOST:58-188-56-70.eonet.ne.jp
翌朝、私は6時に起床して身支度をし、30分には食堂に向かった。そこでも朝食を机に運んだりと、お手伝い的なことをする。
ここで働いている、清水美菜というまだ20代半ばの女性が私たちの仕事を指示してくれていた。美菜さんはとってもちゃきちゃきしていて動きが早いし頭も切れる。こんな人がマネージャーだったら、と思っていると彼女はやっぱり高校時代に当時ソフトボール部のマネージャーをしていたらしい。


「はい、じゃあこれあっちに運んでね」

「はーい」


お手伝いと言っても気楽なものだ。寝坊さえしなければ、そこまで大変な仕事はない。朝が早いし、スケジュールは詰まっているから忙しいことに変わりはないのだけれど。
7時には各学校の生徒たちが時間ごとに食堂にやってくる。自分の学校の時間には私たちも席に着き、朝食を摂る。そして食べ終えたらこんどは皿洗い。これがなかなかの量だった。
皿洗いが終わったら、練習開始の8時半までにそれぞれの担当の廊下やロビーの掃除。そして時間になったら自分の学校の、マネージャーとしての仕事が始まる。そんな仕組みだった。

基本的に朝はランニング、筋トレ、といった体を作るものが多い。が、今日は昼から試合が待っているため、一日目ながらかなりハードな内容だった。
お昼、用意されていたお弁当を配り、食べ終え再び体を慣らすとそろそろ一時前だった。全員が円陣を組み、気合いを入れる。


「いいな……日高に勝てば、この先の試合全部もらったと考えても良い」

キャプテンの響が口を開く。

「あそこには負けるわけにはいかねぇ」

「いつも通り頑張りましょう!」

「あぁ、落ち着いてやろうぜ」

「おうっ!!」

全員が気合いを入れた。皆、目がすごく真剣だ。

「じゃあ、行くぞ」

私も試合を観戦すべく、コートの横からみんなの様子を眺めた。


106: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/25(日) 21:07:06
審判が両チームに何事か言って、全員が向かい合って並ぶ。

「よろしくお願いします」

全員が互いに握手をする。キャプテン通しの響と、相手チームの桐生徹が一番手前だ。空気がピリピリしていた。

「……仲、悪そうだね」

私のすぐ隣で様子を見ている、まだ一年生で補欠の西野くんに私は話しかけた。

「そうですね……。きっとどこより日高との間が一番悪いんじゃないでしょうか。悪いっていう言い方はあれですが、何て言うか本当にお互いが嫌っているっていう印象ですね」

「うん……」

両サイド、応援しているメンバー全員が固唾を呑んで見守るなか、



ピーーーッ!!



――試合開始。


107: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/25(日) 21:21:18
初めにボールを奪ったのは、西南だ。あれは……確か、二年の林原。彼の体の使い方は独特だった。きっと持って生まれたものなのだろう。上手くパスをつないで、ボールが駿、そして響へと届いた。

「入って……!!」

相手チームの妨害を上手く読んで響は敵を避け、思いっきりジャンプしゴールにボールを叩きつけた。

(ダンクシュートだ……!!)


ピーッ


「やった!」


まさかの試合直後の先制点。私は思わず西野くんとハイタッチをする。
しかし、相手チームは天下の日高。いくら性格の悪いキャプテンがいようが実力は本物らしい。


「あーっ……」


相手チームにも得点が入り、同点となる。
その後、両チームが点を入れたり防いだりで、そのまま第4Qまで進んだ。


残り時間、あとわずか三十秒。
この短い時間で、何とかっ……。
両チーム共、強さはほぼ互角だろう。西南が、何時も通りのプレーを出来たら。

そのとき、一瞬だった。
ほんの一瞬、隙があった。

「いける!」

私は思わず声に出して叫んでいた。

響が桐生を避けてゴールしようとする。

「っ……」

一瞬、響が顔をしかめたように見えた。しかしそれもつかの間、ボールは綺麗にゴールの中へ。


「入ったーっ!!」


ピーーーッ


ゴールの直後、試合終了の合図の笛が鳴る。私はベンチで待機していた7人のメンバーとぴょんぴょん跳ねながら喜んだ。

「おめでとうございます!!」

全員が挨拶を終え、戻って来た。みんな達成感に溢れた顔つきをしている。私、この顔を見たらああマネージャーで良かったなあって痛感する。

「よしっ!じゃあちょっとこっち集まるぞ」

全員が隅の方へ移動する。短い試合の反省をするのだろう。


108: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/25(日) 21:32:07
「んー、そうだ」


私は西南高校の荷物をまとめに、体育館から少し離れた更衣室の横の部屋に向かった。さっきちらっと見たとき、気になったんだよな。
ほんとにみんなぐちゃぐちゃだし……
それを見て思わず笑いながら、私は簡単に荷物をまとめた。そろそろ反省会も終わったことだろうし、私は元の体育館に戻ろうとしたのだが。


「あーっもう何で西南には勝てねぇんだよ!!」

ドンッ

誰かが壁を蹴ったのだろうか、大きな音がこちらにも伝わってくる。

「何度も試合して、弱点掴んできてるはずなのにな」

悔しそうな声だった。向こうには悪いけど、私の胸は誇らしい思いでいっぱいになった。

「あのときやったと思ったのによー」

これは、桐生の声だ。

「何を?」

「最後のゴール決められる直前、向こうの相川の足に一発お見舞いしてやったんだよ。あの野郎そのままゴール決めやがって」

「まじでか?よくばれなかったなー」

ははは、と笑う声が聞こえる。

(は……?何それ!?)

あのとき、かすかに響が顔をゆがめたような気はしたけれど、まさかそんなことをしていたなんて。完璧なファウルだ。
すると、がちゃっと部屋の扉が開いて奴らが入って来た。荷物を取りにきたのだろう、彼らはそこにしゃがみこんでいた私に目を向けた。

(うわ、最悪)

「あれ、西南のマネじゃん」

「何睨んでんだよ」

思わずきっと桐生を睨んだ私に、彼は馬鹿にしたように笑った。(なんか、誰かさんと重なるわ)

「あんた、そんな卑怯な真似してたの!?」

向こうが年上だとか何も気にせず、私はそう言ってやった。

「んだよ、聞いてたのか。西南が勝ったんだ、別に文句ねーだろ」

(大ありなんですけど!!しかもそれ以前の問題じゃない)

「あんた達よくそんな真似して堂々とスポーツ出来っ……!?痛っ」

桐生に胸倉を乱暴に掴まれ、私は引っ張られるように奴の身体に倒れ込んだ。そしてそのまま両手を固定され、部屋の真ん中に置いてある長椅子に押し倒される。


(い、嫌!!)


頭の中でそう思うも、恐怖のせいで咄嗟に声が出せなかった。


109: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/25(日) 21:43:45
「っ離して……」

必死の思いで私が漸くその言葉を吐きだすと、奴はさらに見下したような視線を私に向けた。

「さっきまであんなに偉そうな口きいてたのに、所詮は女だな」

桐生が冷たい笑みを浮かべて言う。その瞳は、全くといっていいほど笑っていない。
周りの男はにやにやしながら様子を見ている。気持ち悪い。

「……!?」

いきなり、奴の手がジャージをたくし上げてきた。
動こうとしても、別の男に両手を持ち上げられきつく押さえつけられてしまったため、身動きがとれなくなってしまった。
震える私を見つめ、桐生は「初めてか?」と聞きながら、ホックを取らないままブラを胸が丸見えになるまで上に押し上げてきた。

「おー、でけーな結構」

「や……ぁ」

上からじろじろと体を見られてしまう。恥ずかしさで死んでしまいそうだ。顔に熱が籠る。
すると桐生の顔が近付いてきて、ちゅるっと先端部分を舐められ、嫌なのに体がびくっと反応してしまう。声を出したくなくて、必死で唇を噛んだ。

「声なんか堪えられなくなるくらいめちゃめちゃにしてやろうか?」

言いながら、桐生が胸の先端部分を強く捻るように押してきた。

「んうっ……!や、誰かっ……!!」

「他の学校も今試合してるし?西南こそ浮かれてんじゃねーのか。マネージャー一人いなくなったくらい気付いてないんだろうよ」

ここ弱いんだな、と言いながらにやにやして同じところばかり攻めてくる。このままじゃ、本当に無理。だけどこいつの言うとおり、誰もこんなところに私がいるなんて気付かないだろう。

「ふっん……あっ」

「声抑え切れてねーじゃん。泣くほど嫌なのか?その割に感じてるな」

悔しい

「!!」

ゆっくりと、ズボンを下げられる。


110: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/25(日) 21:58:11
結局最後まで脱がされてしまい、足を無理やり広げられてつーっと下着の上から割れ目をなぞられる。

「熱いな。いい加減自分の身体に正直になれよ」

言いながら、何度も繰り返しそこを指で擦られる。だんだんと力が入らなくなってきて、抵抗できない自分が悔しかった。

「んっ……嫌!!やめ……っ」

下着の横から直接指を差し込んでくる。くちゅっという卑劣な音が大きく部屋で鳴り響き、耳を塞ぎたくなった。

「痛っ……!」

指を中に入れられ、初めての圧迫感と痛みに顔をしかめた。

「痛い、抜いて……!!」

「まじで初めてかよ。そのうち気持ち良くなるから我慢しろ」

くちゅくちゅ、としばらくずっと中を掻きまわされ、何も考えられないほど頭が真っ白になってしまい、私がされるがままになっていた。
意識が飛んでしまいそうになったとき、不意に桐生が動きを止めた。ちらっと目だけを向けると、ズボンを下げた奴が一瞬見え、私は必死で抑えつけられている手をのけようと暴れた。

「嫌、嫌、嫌!!離してよっ……」

「今頃あいつ、何してんだろな」

笑いながら奴が私の上に覆いかぶさる。恐怖で声さえもう出なくなった私を舐めるように見てきたこいつが、憎い。




――と、そのとき


「そのあいつは、今何してんだろうな」


(う、嘘)


バン!!!


破れてしまうんじゃないかと思う勢いでドアが開け放たれ、響が息をはあはあと荒くしながら立っていた。一瞬だけ私の方を見た、かと思えばいきなり響は桐生に思いっきり殴りかかっていた。

「てめぇっ……」

響は驚くくらい冷静で、私も日高の男たちも圧巻されてしまったように動けなかった。

「お前らそんなんでバスケやってんのか?
軽い気持ちでやってんなら、やめとけ」

諭すような口調なのに、ぞっとするくらいその表情は冷たくて、背筋に冷たいものが走った。男たちもそれを感じ取ったのか、怯えたような表情を見せた。
桐生達は悔しそうにこっちを睨み、そしてすぐに部屋を出て行った。私達二人を残して。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年08月10日 14:52
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。