萌えます。年下男子 続き11

295: 名前:HARU☆03/07(月) 17:05:10

触れた唇から少しだけとくとくとジュースが流れてくる

焦ってごくん、と飲み込む



「な…っ、ジュース含んでたなんて聞いてない!」
「口の中にないなんて言ってませーん」



ぺろっと自分の唇を舐める奏太くんの姿が色っぽくて
なんだか少し厭らしくて…、かぁっと自分の体温が上がる

か、完全に悪戯されてる



「みんながいると可愛い奏太くんなのになあ」
「人前はそりゃ…ね」



と、目線を下に反らす奏太くん

あらま、可愛い



「まあ私はどっちも奏太くんだから好きだけどねっ」
「…また殺し文句」



いひひ、と笑うと困った様子で奏太くんは照れる

そういうとこもひっくるめて全部好きだからね?




297: 名前:HARU☆03/07(月) 17:33:20

「へー、試着に撮影ねえ。芸能人みたいだな」



朝学校でのりに昨日あったことを話す

八尾くんに告白されたことは言ってない

だって私がぺらぺら話したらいけないかなって



「あ、でねっ。奏太くんにお兄さんがいたのっ」
「ほお、意外だな」



インパクトの強いナンパ的お兄さんだったけど

と、心の中に納める

のりは肩肘ついて「似てた?」と聞いてくる



「外見も中身も真逆っぽかった。大学一年って言ってたかな?」
「あれだね、くるみ。そのお兄さんと奏太くんの間で
取り合いとか始まるパターンだ。少女漫画だな」



はは、と楽しげに笑うのり

完全に他人事だと思ってんな…



「八尋さんは私をただからかって遊んでるのっ」
「…八尋?」
「あ、奏太くんのお兄さんの名前」



八尋さんの名前に反応するのり

急に黙って少し考える素振りを見せる



「のり?」
「…………」
「のりっ!」
「…あ、何?」



何事もなかったかのように返事をする



「八尋さんのこと知ってるの?」
「いや。珍しい名前だから気になっただけ」



にこっと笑うのり

超気になるんですけど…






298: 名前:HARU☆03/07(月) 18:47:37

のりにもう一度聞こうとすると担任の先生が教室に入ってきた

聞きたい言葉を止め、自分の席に戻ろうとする



「おはよ、相沢」



その途中で八尾くんに挨拶される

いつも通りに笑う八尾くん



「おはよっ」



私もいつものように笑う

二人の間にあったことなんてクラスのみんなも知らないこと

でも心地がいいと感じるのは私だけかな?

なんて思いながら席に着き、八尾くんの方を見ると
にこっと楽しそうに、そして少し悪戯気に笑っていた

いつもの、…ううん

今までより良い関係だなあ

ふふ、とにやける口を手で隠して教卓で話す先生の方を向いた


そしてさっきののりの反応を思い出す

八尋さんの名前を出した時の間とか、伏せた目とか…

のりはいつも聞き手役で自分の話はあまりしない

彼氏がいたことも何度か知ってるけど自分からは話したがらない

本人曰く「相手がどう思ってるかなんて興味ない」とか
ざっくりした性格に合った格好いい台詞を言っていた気がする



「考えすぎ…かな」



そりゃ考えもするよ

のりがいつもののりじゃないなんて見たことなかったから






299: 名前:HARU☆03/07(月) 19:11:21

「あれ、くるみじゃん」



うがっ、と心の声で叫ぶ

学校の帰り道に買い物をしていたら街でばったり八尋さん

こっちに寄ってくる



「くるみ知り合い?」
「…奏太くんのお兄さん」



へえ~、と一緒に買い物してる満里奈は頷く

八尋さんが近づいてくると無意識に構えてしまう



「そんな構えないでよ。ちゅーした仲じゃん」
「ちゅう!?くるみあんた「わぁあぁ!違う!ほっぺ!」



「しかも八尋さんが勝手に!」と焦って説明すると
満里奈は「なーんだ」と軽くほっとする

あ、危ない…、この人なにさらっと言ってんだか



「奏太は?」
「部活です、知ってるでしょう…」
「うん。聞いてみただけ」



にこっと笑う八尋さんの真意が全く読めない

するとポケットから飴を取り出し、渡してくれる



「はい、お友達も」
「わ、ありがとうございます」
「なんだか餌付けされてるみたいです」



少し不満気に言うと、「子猫だもんね」と意味のわからないことを言われた

からかって遊んでるな…



「あ、八尋さんに一つ聞きたいんですけど」
「何?彼女ならいないからいつでもいいよ」
「違いマス」



両手を広げて「おいで」と笑って言う八尋さんにきっぱりと断る

聞きたいことはもちろん、



「倉重紀子、って知ってますか?」




304: 名前:HARU☆03/08(火) 19:59:21

「知らん」



ガタッと拍子抜けする

光の早さで即答され、返答を待つ時間さえなかった

満里奈は「のりがどうかしたの?」と聞いてくるが
完全に私の勘違いだったのかな、とすら思ってしまう



「何、その子可愛いの?」
「なんでもないです、私の勘違いです」



なんだ、違ったのか

じゃあ、のりの"八尋さん"って違う人のことか


その後八尋さんと街で別れて、満里奈と買い物を終えて帰宅する

夕焼けが綺麗で、奏太くんに会いたいな、とか思ってしまう


そしてやっぱりのりの事が気にかかる

私の知ってる八尋さんじゃなくても、のりは"八尋"という人に何か想いがある

のりの今日の様子が証拠というわけじゃないけど

友達をやってきた私の勘

踏み込んでいいものかどうかまではわからないけど…






305: 名前:HARU☆03/08(火) 20:41:46

くるみと別れた後、八尋は携帯を取り出し、発信ボタンを押す

何回かのコールの後に機械音がし、「もしもし」と相手が応える



「もしもし、俺」
『……八尋』
「なんかお前のこと聞かれて懐かしくなった」
『今更何の用』



電話の主は重い声を出す

八尋は街の声を背景に穏やかに話をする



「ねぇ、今何してんの?」
『そうやって都合良く呼び出すんだな』



八尋は目を閉じて笑う



「会いたいんだけど、紀子」
『会いたいなら八尋が来なよ』



八尋の電話の相手は紀子、"のり"だった

相変わらずの強気なのりの発言にははっと笑い、



「いいよ、お前の裏の公園ね」



と言い、電話を切ると公園へと足を進める






306: 名前:HARU☆03/08(火) 20:58:55

八尋が公園に着くと、既にベンチに座っているのりの姿があった

のりが八尋に気付くと「遅い」としかめっ面で言う



「いや、俺急いで来たんすけど。つか紀子は家から超近いじゃん」
「私より2つも年上なんだから大人の余裕を持て」
「ひでぇ」



八尋はそのままのりの横に腰をかける

先に口を開いたのはのりだった



「くるみが私の名前出したんだろ?」
「あ、やっぱ友達なんだ」
「くるみの話聞いてもしかしてと思ったけど…、
八尋ってやっぱりあんたのことだったわけか」



ふう、とため息をつくのり

くるみが話した"八尋"のこと、自分の様子をくるみが気にかけていたこと

のり自身も気にかけ、くるみのことだから八尋と接触したら
間違いなく自分のことを八尋に聞くだろうと直感で理解していた

それがこんなにも早いとはのりは予想外だったが



「で、今更何の用なわけ?もう半年も前のことを」
「だから言ったじゃん、会いたくなったって」
「私はあんたの都合の良い人形じゃない」



紀子と八尋

全ては半年前の話だ






307: 名前:HARU☆03/08(火) 21:14:26

紀子と八尋は半年前の恋人同士

きっかけはごく普通、友達の彼氏の友達



「紀子の気強いとこ好き」



八尋は女遊びが激しかったが紀子と付き合い始め、変わった

紀子だけを大切にするようになった

順調だった



「八尋の女はあんただけじゃないよ」



八尋の過去の女の一人が錯乱状態で紀子の元に訪れた

幸い怪我もなく事は済んだが、急に八尋から紀子への連絡が途絶えた

着信拒否をされ、八尋の友達にさえ連絡を拒まれた

自然消滅という名の"別れ"だった

それから紀子から連絡をすることも八尋から連絡がくることもなかった






「あんたが奏太くんの兄だなんて初知りだけどね」
「弟をいちいち紹介するのも変でしょ」



公園に夕方のサイレンが響く

遊んでいた子ども達は親に連れられて帰って行く



「くるみには手ぇ出すなよ」
「なんで?」
「いろいろあって頑張って、今奏太くんと幸せなんだ」
「優しいね、紀子は」



穏やかに、優しい八尋の声が香りを残す






308: 名前:HARU☆03/08(火) 21:32:12

「なんで急に連絡切った…」
「…気まぐれ?」



パンッ…、とのりが八尋の頬を叩く音がする

八尋は「痛いよ」と笑う



「…あんたのそういうとこが嫌いだった」
「うん」
「肝心なとこは何も話さないではぐらかして、ただ笑って…っ。
全部一人で片付けようとして心配かけないようにそういう時だけ大人ぶって!」



普段感情を表に出さないのりが怒り、不満をぶつける



「俺はもっとそうして欲しかったよ」
「……は」



のりの背中に手を回し、優しく抱き締める



「もっと紀子にはそうやって怒って欲しかったし、時には泣いて欲しかった」



時間が半年前に戻ったような気がした



「俺の過去の過ちに紀子は巻き込みたくなかった。巻き込まれても
「平気」、って紀子は笑ってて俺よりずっと大人に感じてたんだ」
「じゃあ何…、巻き込みたくないから私を遠ざけたって言うのか…っ?」



声が震える

半年前の気持ちが押し寄せてくる



「なかなかかっこいいことするでしょ、俺」



あははっと笑う八尋

時間がゆっくりと戻っていく






309: 名前:HARU☆03/08(火) 22:12:33

「くるみから紀子の名前が出た時、ぶっちゃけ嬉しかった」



八尋の腕に力が入り、のりを引き寄せる



「まだ紀子が俺のこと気にかけてくれてるんだーって」
「…ムカつく」
「いいと思わない?俺と紀子が結婚したら
奏太とくるみは紀子の弟と妹になるんだけど」



ゴツッと八尋の額に頭突きをする

痛そうに額を押さえる八尋



「ばーか、誰があんたと結婚するかっての」
「え、まじ?俺紀子しかいないんだけど」



その八尋の言葉にあははっ、と笑う

紀子は八尋の額にでこぴんをして、



「仕方ないなあ」



と幸せそうな笑顔で言う

半年の歳月を経て、解けていた糸が再び紡がれる




316: 名前:HARU☆03/11(金) 19:29:43

「えぇっ!?八尋さんの彼女!?」
「正確には元彼女」



学校に着くなり、のりから話があると言われた

そして急な衝撃的の告白

開いた口が塞がらないとはこのことだ

何かしら繋がりがあるとは思ったけど…、予想外すぎる



「え、でも昨日街で八尋さんに会った時にのりのこと聞いたら
知らん、って即答されちゃったんだけど…、えぇ?」
「さあ、特に意味はないんじゃない?」



ふふ、と笑うのり

八尋さんのこと、好きなんだなあとわかる



「くるみにはお礼言わなきゃな」
「え?」
「くるみが私のこと八尋に聞いたから、八尋も私のことを思い出した。


―――ありがとう」



のりの"ありがとう"には重みを感じた

私が何気なくしたことがのりと八尋さんの為になってた

二人の間に何があって何を乗り越えたのかは知らない

…ううん、きっと私が知るのはもったいないかな



「のり、もっと正確には?」

「―――彼女」



いつも頼りになる姐御肌ののり

でもそう言ったのりの笑顔は今までで一番可愛かった






317: 名前:HARU☆03/11(金) 19:56:09

大切な友達が幸せって私も幸せになるんだ



「あ!じゃあ八尋さんとのりが結婚して奏太くんと私が結婚したら
のりは私と奏太くんのお姉さんになるんだねっ。わあっ、すごいっ」
「ぷっ、あはははっ」



あ、れ?

私なんか変なこと言ったかな?

のりがすっごい笑ってるんですけども…、



「八尋と一緒のこと言うんだなあ」
「え?嘘ぉっ?」



楽しげに笑うのり

でも本当にそうなったらいいなって思うよ?



「今更八尋に会えるなんて思ってなかった。だから今すごい嬉しい」
「なんかいいね、のりが八尋って呼ぶの」
「そ?別に普通だよ」



普通じゃないよ

きっとのりが八尋さんの名前を口にするのは必然だったんだよ



「本当におめでとう!」



ずっとずっと二人を応援するよ




320: 名前:HARU☆03/11(金) 23:10:03

放課後になると急いで準備をし、門に向かう

既に門で待ってる人が見える



「奏太くーんっ」
「だから離れて下さいって!」



変わらずぎゅうっと腕に抱きつく

奏太くんの部活がお休みで二人で帰るのすっごく久しぶりだもんっ

すっごくすっごく嬉しいんだもんっ



「あのねっあのねっ、話したいことあるのっ」
「…何ですか?」



とりあえず人前なんで離れて下さい、と奏太くんは付け足す

むう、としながらも渋々離れて歩き始める



「八尋さんとのりがね、付き合い始めたのっ」
「はあっ!?」



明らかに批判的な声をを出す奏太くん

のりと話したことをそのまま奏太くんに話すと、どうにも腑に落ちない様子



「えー、八尋がー。のり先輩とかもったいない」
「そうかな?私はすっごくお似合いだと思うよ?」
「んー…、ま、いいか」



悩ましげな顔から急にあっさりとする

およよ?急変した?



「なんだ、結局祝福してるんじゃんっ」
「だってくるみ先輩に手出されなくてすむでしょ」



どっきゅーん!

か、可愛いすぎる…っ



「…見ないで下さい」
「ちょ、さっきの言葉もう一回」



嫌です、とはっきり断られた

…けど、想われてることに愛を感じマス。






321: 名前:HARU☆03/11(金) 23:21:34

少し街に寄り道して帰ることにした

学校帰りに二人きり



「デートだっ」
「そんな大層なもんじゃ…」
「いーのっ」



今日の私は気分が良い

学校も嫌なことなかったし、のりも幸せだし

奏太くんと一緒にいられるし



「にやけすぎ」



なんて注意されるくらい

人が少し多くて背の小さな私ははぐれそうになる

するとさり気なく私の手を握るもう一つの手



「離れないで下さいよ」
「は、はい」



人前で繋ぐのは嫌がる奏太くんが自ら私の手をとってくれる

驚いてきゅんとして、つい返事がぎこちない敬語

私、またにやけてない?


信号が赤から青に変わる

たくさんの人の中を同じように歩く

同じように渡る


―――はずだった


"神様なんて大嫌い"




324: 名前:HARU☆03/12(土) 17:39:52

神様なんて大嫌い





繋いでいた手がどうなったか私にはわからない

信号は青に変わっていた

誰かが危ないと叫んだ時には、大きな音と鈍い痛みしか実感できなかった

そして遠くで聞こえるたくさんの慌ただしい声


痛い、頭が、身体が痛い






「くるみ…っ、」



白い天井、お母さんの顔

薬の匂い…、頭がぼーっとする

―――…私


急に意識がはっきりとしてベッドから勢いよく起き上がる

すると頭に痛みが走り、顔を歪めながら声を堪える



「無理しないの!頭を打ってるんだから…」



身体を見ると頭を打った以外にも軽く傷の手当てがしてある



「脳震盪起こしてるからまだ休みなさい」



そうだ、確か横断歩道に向かって乱雑した車が突っ込んできて…


―――奏太くんは?




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最終更新:2011年05月22日 07:06
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