BAD END

2: 名前:あおのり☆10/30(土) 16:51:47

 「お~い、大樹ー」

僕が鞄に教科書を詰め込んでいると中村が呼びかけてきた。

「いっしょに帰ろうぜー」

「あー、いいよ」

 僕は中学生3年生になってすっかり低くなった声で答えた。中村は元気な奴だ。
こんなことで本当に高校に入れるのかと疑問に思うくらいいつもヘラヘラしていてバカだ。
この前だってクラスの女子と「アホー」とか「ばーか」とか言い合っていた。

でもそれが羨ましい時もあった。
僕はクラスで話せる人は手で数えられるほどしかいない。

 「大樹、今回のテストどうだった?」

と、中村が話をし始める。

「俺数学で7点取ったぜ、ラッキーww」

質問しておいて自分の話をするなよ。

「全然ラッキーじゃねぇだろ、そんなんで高校大丈夫か?」

「大丈夫だ、問題ない。」

自信たっぷりだなぁ・・・

「で、数学何点だった?」

「70点くらいかなー」

本当は68点だけど。

「お、ラッキーじゃん」


 なにが幸運なんだ。


僕には分からない。
もうすぐ受験であるという3年生の時期には80点や90点を取れる人だっている。
僕の順位は213人中46位だった。
こんな点数じゃ駄目だ。
もっと、10位以内に入れるような点を取らないと。

 このままじゃ俺の人生は「BAD END」だ

 「おまえ知らねーのか?7ってのはスロットで一番儲かる数字なんだぞ」

「親父はまだそろえたことないんだぜ」

「だから点数で7を取るってのはラッキーなことなんだよ!」

中村は7点がいかに"ラッキー"かを語りだした。





3: 名前:あおのり☆10/30(土) 17:18:23
 家についた僕はベットに倒れこんだ。中村と7の幸運さとかテストに対する愚痴とかについて喋ったが、そんなことはどうでもよかった。

「あーあ、何かするかー」

 僕は家のパソコンのスイッチをを押した。ウィィーンとモーターがうねる。こんな調子でこのパソコンは壊れないのかといつも不安になるが、案外壊れないものだ。

 そういえば今日、クラスでとなりの女子が「チャット楽しいよー?」なんて話をしてたっけ。検索欄に「チャット」と打ち込んで検索。・・・
検索してとりあえず一番上にでてきたものをクリックしてみた。黄色でゴチャゴチャとしたページがでてくる。とりあえずどこかの部屋に入ってみた。




4: 名前:あおのり☆10/30(土) 17:56:31
 インターホンのような音がなって部屋に入れた。

名前の欄やメッセージを書き込むところがあった。この部屋
には僕とあと「みさと」という人だけのようだ。
僕は初めてチャットをしたからかゲストという名前になって
いる。

 みさと :こん

こん?こんばんわのことだろうか。

 ゲスト :こん

とりあえずそのまま返してみる。
暫く沈黙が続いたあと「みさと」が尋ねた。

 みさと :何を話しましょうか?

随分控えめな人だ。中学生の僕に敬語をつかうとは。
あ、チャットだから年齢はまだ分からないんだっけ。

 ゲスト :何でもいいよ

 ゲスト :じゃあ何歳?

 みさと :16歳です。

 ゲスト :僕は15歳だよ

 みさと :そうですか

話はゆっくりと進んだ。チャットは新鮮だった。チャット自
体が初めてだからだろうか。それとも初めて会った人と話す
からだろうか。「みさと」は一向に質問をしないからこちら
から質問をしてみる。

 ゲスト :何か好きなことはある?

 みさと :散歩、ピアノ、料理、読書、昼寝、バードウォッチング 裁判
      傍聴

うわ、なんだこの人は、好きなことありすぎだろ。書くことが多すぎて改行されてる。しかも、16歳で裁判なんてアリかよ。

 ゲスト :すごいですね

 みさと :何処がですか?

 ゲスト :好きなことがたくさんあって

 みさと :んー、あなたから見ればすごいかも知れませんね。

 みさと :でも私はそうは思いません。好きであっても得意ではありま
      せんから。

あまりにも沢山喋るからこっちも敬語になってしまった。
変な人だなこの人。




5: 名前:あおのり☆10/30(土) 18:25:00
 ゲスト :裁判のどこが面白いの?

 みさと :被疑者と被害者、そして裁判官が意見を述べ合って、情報をよ
      り確かなものにするその過程が面白いんです。

 ゲスト :罪を犯した人が悪いに決まってるじゃん

 みさと :はぁ?

 みさと :どうしてそう言い切れるんですが。人間のすることには必ず
      動機があるんです。

 みさと :例えば、貧乏な泥棒が金を盗むこと。それは自分が生きるため
      に物を盗む。生きるためにそうする他なかったんですよ。

 みさと :動物だってそう。畑に入って人間の作ったものを食らう。もと
      もとは、自然状態だった森を人間が切り開いて畑を作った。誰
      のものでもなかった場所を奪った。なのに敵対されるのは動物
      のほうで銃で射殺されてしまう。

 みさと :一概にどちらが悪いとは言えないんですよ。







6: 名前:あおのり☆10/30(土) 18:29:06
なんだコイツめんどくせえな

僕は何も答えずパソコンの電源を切った。



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最終更新:2011年05月22日 07:48
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