58: 名前:雫☆2011/09/02(金) 15:12:10
灰色の雲に包まれた空…太陽はまったく見えない
私は購買のパンを入れた袋をさげ屋上の階段を登る
渇いた鉄の音が湿った空気に重く響く
ノブに手を付け回し戸を引く、見ると空を見上げながらフェンスにもたれた赤月がいた
「おはよ…」
私は気分が悪いと昼になる前の少し早い時間に授業を中退、時間は11時半を回った頃だろうか?
赤月の隣に座り所々錆びついたフェンスにもたれる
しばらくの沈黙が続いた
本当は私から切り出さなくちゃいけない
でも、何から話を
61: 名前:雫☆2011/09/02(金) 23:12:22
~豹side~
かれこれ30分は経過したのか
お互い口を閉ざしたまま語り合わない.......、
華が伝えたい事………本当は今すぐにでも聞きたい
本当の華を知りたい
本当の笑顔を見たい
そして...華は3ヶ月間俺といて楽しかったのか...、
知らず知らずの内に俺はキミの傷をえぐっていなかったのか…………
俺といてキミの見えない傷は癒えたか…………………
そして、俺といて幸せな時が少しでもあったのか
62: 名前:雫☆2011/09/02(金) 23:27:52
~華side~
私は一度深呼吸をしその沈黙を破った
「ぁ、あのさ…ごめん、なんか勇気出せなくて」
謝りながらも口の中で声を出す様になってしまった
聞こえ辛いだろうな.......、
でも彼は頷いてくれる、
そして私の肩を抱くと自分の胸元に引き寄せた
トクン.....、
心臓の鼓動が鳴る
「話し…長くなっても良い?」
「あぁ、」
私は自らのピアスを外し、手に取ると過去を語り始めた…………
64: 名前:雫☆2011/09/03(土) 10:18:14
夏から秋に変わる時の中で悠次は微妙な涼しさを残す此処を後にする………
悠次が引っ越す場所.....それは海外だった
だから、この日でお別れ
私達は別れる事を決めたんだ......、
飛行機を待っている間、ほんの少しの時間でも無駄にしたく無くて…人気のないホームの隅で抱き合っていた
「ゆ…ぅじ……サヨナラなんて…やだよぅ…」
彼の胸の中で泣きじゃくる私
そんな私を彼は大きな手で頭ごと包み込んでくれた
目に涙を溜めながら
「大丈夫……サヨナラになっても…俺は華を忘れない、華と少しでも楽しい時間を過ごせたんだ、忘れる事なんてできない」
撫でながら優しく語りかける
「うん、……ぅん…」
頷く私.....
彼は自らのポケットからあるモノを取りだした
「華…今までありがとぅ...コレ、貰ってくれるかな?」
切なげな表情で差し出す
涙を拭いながらソレを受け取る私、
綺麗な紙で包まれたお洒落な柄…
中を開けると十字型の銀のピアスだった
埋め込まれた綺麗な石を見つめていると
「…未練がましい真似してごめん....華には他の誰かと幸せになってほしい…でも俺を忘れないでくれるかな…?」
彼は人差し指で私の手の平にあるピアスを裏返す
hana and yu-ji eternity―…
華と悠次…永遠に―…
渇いた頬をまた濡らす
「…ぅ…ひ…・ッ…悠次ぃ…」
数分後、飛行機の便が来る、
私は既(すで)にピアスを付けていて溢れる涙を止めずに笑い掛けお別れをした
悠次…ダイスキだよ……
65: 名前:雫☆2011/09/03(土) 10:26:13
「華……悠次君と別れたんだってぇ?」
「海外引っ越したんだってね」
朝、教室に着くと女子の皆が私を待っていた
男子も数人は来ていた
でもソレは励ましの言葉じゃなくて………
真ん中には不適な笑みを浮かべる波がいた
どうして.....?
「華はいいよねぇ、私達が好きだった悠次君を独り占めだったんだもんねぇ」
語尾を伸ばし嫌味っぽく言う波、
「ど、どうして…皆…訳わからないよ」
拳を握りながら途切れ途切れに文を繋げる
視線の圧迫で潰されそうだ
66: 名前:雫☆2011/09/03(土) 15:43:23
「華...私ね、悠次君と付き合っていたアンタが気に入らなかった、大っ嫌いだった」
波はそう言い微笑むとこれからはずっと1人だねと私一人残し女子生徒は全員教室を後にしする
68: 名前:雫☆2011/09/03(土) 22:24:50
苦しい過去を思い出す内に私の涙は溢れを増す
「ぅう.....それ、で...その時から...1人で...」
鼻をすする
彼は私をさっきよりも強く抱きしめた
「もぅ、いい....喋らなくていい....」
震える私の肩を無理やり止める様に、
髪を手でとかす様に撫でる....、
「ごめん、ごめんな....辛い過去...思い出させて…」
頷く私.....、
何回も、震えを紛らわすため…
拭った涙が彼の膝に落ちる
そしてピアスを彼に渡すと本心を語った
「私..まだ......悠次に心残りがあって…これを見るたび辛くて苦しくて…でも、捨てられなくて見てしまって…」
温かい手の平が私の頬を触れる
、と同時に雨が降ってきた
「華が彼氏を大切に思ってる証拠…無理やり消さなくていい……苦しくて我慢できないなら…………俺を使ってくれ…気持ちをぶつけたいならいくらでも俺を責めてくれ…」
しだいに大きくなる雨音でも彼の言葉はハッキリ力強く聞こえた
雨はしだいに激しくなっていく
その雫は2人の髪、頬、体を伝い流れる
そんな状況に気にも留めなく2人は見つめあった
「俺、華が好きだ、痛みから逃れるために利用してもかまわない………ただ華を安心させたい、幸せにしたい、本当の笑顔が見たい」
私は濡れた髪を掻き上げながら真剣に言う彼を愛おしく思えた
そして、微かに口角を上げ微笑む
悠次....こんな私をここまで愛してくれた人がいたよ......
彼を...信じてみようと思う...
70: 名前:雫☆2011/09/04(日) 10:17:25
~豹side~
そうして、雨が上がり日が差す頃と同時に俺たちはキスをした
照れ笑いを浮かべる彼女が可愛くて愛おしくて
抱きしめた
離れない様に…知らないところで傷付かない様に......、
end
最終更新:2012年01月25日 20:33