290: 名前:+椎名+☆2011/08/26(金) 16:48:35
今日はなんか色々あるな…
これで教室のドア開けるの何回目だよ。
よし、犯人さがすか…
俺は佳暖の前に立ち、ドアを開ける。
やはりいつものこの視線…
しかし佳暖への視線は睨みつけるように見ていた。
ほぼ全員じゃねーか。
これじゃわからない……
「おかえりぃ、暁君」
俺にはいつもの態度で接してくるのに…
「あ、山下さんいたんだ」
「くすくす…ていうかびしょびしょ…」
佳暖に対してはみんないつも以上に冷たい。
「ちょっと、そこのポジション私達の!どいて!」
女子の一人が佳暖の肩をどんと押す。
……こいつら…
「んな…」
「…あ、鈴地君。これねー……」
「触んな!」
俺は咄嗟にそいつの胸ぐらを掴んだ。
あーあ、やっちった。
もうここまできたら俺多分暴走するよ。
「ここはてめぇなんかのポジションじゃねぇ!」
俺はそのまま突き飛ばしてしまった。
その女子は怯えて泣いていた。
それにも関わらず
リミッターが切れたした俺は近くの机を蹴りとばした。
「鈴地…」
その姿を見て嬉しそうに笑う佳暖。
まあ、この女子自己中な性格前から気に入らなかったんだよな。
「鈴地、もういいよ。ありがとう」
「…あ?そ、そうか…悪い……」
これは守れているのか…?
でも佳暖が嬉しそうにしてるならいいか。
293: 名前:+椎名+☆2011/08/27(土) 10:10:15
それからも相変わらず女子は近づいてくる。
さっき泣いてた子も。
しかし…
「鈴地、ここ教えてよ」
「…げ……」
佳暖が俺の方に来ると佳暖を避けるようになった。
これも相変わらず、か。
でもいじめはまだ起きているけどな。
まったく…静かに暮らしたいのに勘弁してくれよ…
いじめの主犯が必ずいるはず…
そいつをさがして……
…俺はそれからどうするってんだ……
「鈴地?」
「…あ?あ、えーとここはだな…」
もういいや。
その時はその時。
その瞬間に考えればいい。
俺達はまあ美男変女として結構有名だった。
いい迷惑だけどな。
「あの…っ暁君…いますか…?」
教室の方から声が聞こえる。
おどおどした喋り方には聞き覚えがあった。
「…宮本さん?」
「お、覚えててくれたんですか…ありがとう…」
そう、屋上で出会ったあの女の子。
「二人でお話…したいのですが…少しよろしいですか?」
「あぁ」
「鈴地も行くなら…佳暖も行くよ」
こいつ…話聞いてたか?
二人でって言っただろ……
「佳暖…待ってろって」
「…わかった」
はぁ、疲れる。
「では屋上へ……」
俺達は屋上へと向かう。
ったく…次から次へと忙しいな。
295: 名前:+椎名+☆2011/08/27(土) 10:21:53
俺は屋上の壁にもたれかかる。
「で、なんだ?」
「…あの、暁君。私……
暁君のこと、ずっと前から好きでした」
……えっ?
ま、まさかの告白…!?
いや、彼女一応いるの知ってるだろ。
「えーと…」
「私、今付き合っているのは知っています…
でも…小学生の時から好きで…想いだけでも伝えたくて…」
小学生……
「例え今付き合っていても…その……
諦めたくないんです…
だから……答えは別れた後に……聞かせてください…」
ん?
ちょっと待て……
「別れるまで待ってるのか?それに…」
「…多分、あなた達はすぐ別れると思います」
え?
「わかるんです。見ていても…勘ですけど。
多分…あなたから別れる話を持ち出すと思います」
…何言ってんだこいつは……
「何を……」
「いずれ分かると…思います……それでは……」
彼女はそう言って屋上から立ち去った。
どういう意味だ……?
296: 名前:+椎名+☆2011/08/27(土) 10:36:09
俺達は…まわりから見たら釣り合っていないのか?
気づかなかった……
「……」
俺は教室に戻る。
「……!」
さっきまでそこに座っていた佳暖がいない。
どこ行ったんだ……
「鈴地!やばいんじゃないか?さっき女子に佳暖連れて行かれた
ぞ」
斎が焦りながら言う。
…確実に何かされる。
「どこ行った?」
「………」
「斎?」
下を向きながら斎が言う。
「…言うつもりなかったけどさ、
お前達別れた方がいいと思う」
……!?
「わからないか?まわりから見ているとお前達は……」
さっき言われたことを思い出す。
…同じだ。
「俺の意見だけど、お前は佳暖を守ってるんじゃない。
佳暖に振り回されてるんだと思う」
…俺が佳暖に?
振り回されてる?
「今までの友達の関係じゃ駄目なのか?
俺はとても見ていられない……」
…なんでだよ。
そんなことない…
……っ!
俺は斎を通りすぎて教室を出ていった。
297: 名前:+椎名+☆2011/08/27(土) 11:14:45
佳暖が俺を振り回しているだと?
いくら斎でもそんな風に言うのは……!
「ちょっと、山下さん」
どこからか声がする。
山下…?佳暖のことか!
俺は声のする方へ走る。
…体育館裏?
またベタな……
「何?」
「暁君、きっとあんたのこと嫌いだから」
「そうよ!」
…本人から聞きもしないで言うなよ。
佳暖は笑って答えた。
「ふふ、鈴地は佳暖のこと大好きだよ?
だから佳暖も鈴地のこと大好き」
…大好き、か。
俺はそんな風にお前のこと思ってないかもな…
でもお前は…俺をそんなに……
「キモい。あなたナルシスト?」
「ううん、違うよ。でも多分鈴地はあなた達のこと嫌いじゃない
かな」
「…なんだって!?」
佳暖は相変わらず表情を変えない。
逆にそれが女子達の怒りを買う。
「ふざけんな!」
一人が佳暖を突き飛ばす。
「ありがとう」
「…は?」
「ありがとう、
あなた達が私に何かしてくれるから鈴地といる時間が増える
の。
そして鈴地はもっと私を好きになってくれる」
俺は唖然とした。
…なんだよ。
俺が…守ろうと頑張ってるのに佳暖は女子を利用してたのか?
俺は必死なのに…お前はそんなことを考えてたのかよ…
俺は今斎の言っていることがわかった気がする。
…俺達やっぱり釣り合わないんだな。
…でも俺はどうしたらいいのかわからない…
「えっ…何こいつ…気持ち悪い……」
女子達はそう言うと去って行った。
………
俺も静かにその場を立ち去った。
298: 名前:+椎名+☆2011/08/27(土) 11:30:23
俺は教室に入り、斎の所に行く。
「斎…その、悪い」
「…いや、いいんだ、俺も悪かったな」
俺は親友のことを信じてなかったんだ…
本当に情けないな。
「鈴地」
また聞き覚えのある声がする。
「……佳暖」
「鈴地、ごめんね心配かけて。
ちょっと突き飛ばされただけだから平気だよ」
…あぁ、そうか。
今までならその言葉で佳暖を心配してたな。
でも…お前の気持ちがわかってから今はそうは思わない。
「別に心配なんてしてねーよ」
「…えっ?」
さすがに笑っていた佳暖も驚きの表情を見せた。
佳暖には悪いけど…今は何も思わない。
俺はそのまま教室を出ていく。
今日もまた…サボるか。
304: 名前:+椎名+☆2011/08/28(日) 04:42:30
俺は保健室にしんどいと言って入る。
まぁお約束のパターンだけどよ。
「またサボり?受験に響いても知らないわよ?」
「大丈夫、学年上がったら本気だすって」
以前も言ったが俺は先生と仲がいい。
だから先生はサボりとわかっていても言わない。
そしてサボらせてくれる。
いい先生だよなー…(違う)
「そういえば、最近山下さんとどうなの?」
直球で飛んできた質問に俺は戸惑う。
「…みんなまわりから見ると俺が振り回されてるって言うんだけ
ど…
先生もそう見えるか?」
「見える」
早っ!
即答って…でもやっぱり見えてるんだな…
「別れたらいいじゃない。あ、先生と付き合う?
年下は嫌いじゃないから♪」
「慎んで遠慮させていただきます」
何言い出すんだこの先生…
でも俺はなんだか元気出てきた。
先生はやっぱり俺のことわかってるなぁ。
先生も俺の理解者の一人だと思ってる。
その時、保健室のドアがノックされる。
先生はドアを開け、俺はベッドのあるカーテンから覗く。
…また佳暖かよ。
「先生、鈴地来てますよね?」
「…何してるの?山下さん。今授業中よ」
「鈴地を迎えにきました」
「暁君は…少し疲れていて寝てるわ」
「なら私が付き添います」
佳暖しつこいな…
てか重い……
「部外者は邪魔になるから戻りなさい」
そう言うと先生はドアを閉める。
この先生きついな……
「先生、なんで……」
「…まあなんでもいいじゃない?
早く寝ないとサボりを伝えて点数下げるわよ?」
生徒を脅すなんて…なんて先生だ……
俺、勝てる自信がない…
俺はそれ以上何も言わずに寝る。
305: 名前:+椎名+☆2011/08/28(日) 11:45:21
……あれ?
ここは……
みんな黒い服を着てる…
葬式…?
「鈴地、早くなさい」
「…?」
それにしても一体誰の葬式だ?
誰か身内……
え……
嘘…だろ?
俺は入り口にある看板を見る。
[山下佳暖様葬式会場]
か…佳暖……の…?
するといろんなところから声が聞こえた。
「あの子が彼氏?」
「たしか遺書には彼氏に愛されたかったって書いてたわよね」
「あの子最低ね。怖いわぁ」
彼氏…俺の事か?
彼氏に愛されなかったから自殺したのか…?
じゃあ…俺が殺したのと同じじゃないか…
みんなが冷たい目線で俺を見てくる。
そんな目で見ないでくれよ……
やめろ…!
やめろ…!!
「鈴地君!」
…!
俺は慌てて起き上がる。
…夢?
「大丈夫?うなされてたわよ」
先生……
「大丈夫…」
「…嘘ね。…目」
俺は先生に言われて目を触る。
……俺、泣いてる?
「…怖かったの?」
「…っ先生!大丈夫だから!」
保健室の先生が俺を強く抱き締めた。
先生からは時々母親のような暖かさを感じる。
やっぱり先生は俺の理解者だ。
最終更新:2012年08月11日 06:33