430: 名前:+椎名+☆2011/10/21(金) 17:39:54
とりあえず俺は1週間で退院した。
またあのくだらない毎日が続くのか…
俺はとりあえず学校に向かった。
とはいうものの今は10時。
完璧遅刻だけどかまわない。
上靴に履き替えて上に上がろうとした時、
「…?」
斎の靴が入ってない。
休みか…?
まぁ、関係ないけどよ。
俺は教室のドアを普通に開け、無言で席につく。
みんながひそひそなにか話してるけど気にならない。
そしてやはり話しかけてきたのがあいつ…
「おはよ、鈴地」
佳暖だ。
もう佳暖の奴、いい加減しつこいな。
「鈴地、これノート…」
「いい加減うざいんだよ。
俺に話しかけるなっつったろ」
すると佳暖はにこっと笑って言う。
「言われても佳暖は話しかけるよ。放っておけないし、
それに鈴地が好きだもん。
私は…止めないから」
436: 名前:+椎名+☆2011/10/22(土) 16:29:47
…佳暖って本当に馬鹿だよな。
最近は酷いことばっかしてたのに…
なんで俺なんかを好いてくれるんだ?
「いい迷惑なんだよ、お前は」
「ふふ、それでもいいよ?」
俺にそんな笑顔を見せるなよ…
今の俺には眩しいんだよ!
やめてくれ…
くそ…
やめてくれよ…
他人の笑顔なんて見たくねぇよ!
俺はシャーペンを手に持った。
芯を出して…
「鈴地?」
「俺に笑いかけるなよ…つらいんだよ。
誰かの笑顔を見るのは…」
他人の笑顔を見ると
ここは自分のいるべき場所じゃないと考えてしまう。
それが辛い。
俺には辛すぎる。
もういいだろ?
あとは死んで償う。
いや、生まれ変わってでも償ってみせる。
だから…
少し休ませてくれ…
俺はシャーペンを大きく振りかぶって
自分の胸へと振り下ろした。
「きゃああぁぁ!」
教室に響く悲鳴。
目を手で覆う生徒もいる。
そう、それでいいんだ…
それで…
しかしその時、
俺の頭に誰かの拳が当たった。
俺は芯が胸に届く前に倒れこんだ。
「鈴地…お前、いい加減にしろよ!」
439: 名前:+椎名+☆2011/10/22(土) 16:50:13
この声は…
「斎君!?」
斎…なんでここに…
「なんで止めるんだよ。死なせてくれよ!」
「…なんだと?お前、ふざけてんのか!?」
斎は俺の胸倉を掴んだ。
「お前は償うつもりだろうけど…
好きな男に罪を償わせたい女がどこにいんだよ!」
斎はそう言いながら俺を立たせた。
「お前が殺したわけじゃねぇ!
なんでお前が死ぬ必要があるんだよ!」
斎は俺を机に突き飛ばした。
宮本さんは…何を思ってるんだろう…
「宮本さんは俺を恨んでる!
俺が…彼女の代わりに死ねばよかったんだよ!
もう放っておいてくれよ!」
「鈴地」
俺が言い終わると佳暖が名前を呼んだので俺は振り向いた。
パチン…
またあの音だ。
病院の時と同じ音が教室に響いた。
もう一度佳暖の方を向いた。
そこには涙を流しながら怒っている佳暖がいた。
佳暖が怒った姿を見るのはこれが初めてだった。
441: 名前:+椎名+☆2011/10/22(土) 17:13:24
「か、かの…」
「鈴地がそんなに馬鹿だと思わなかったよ。
鈴地は…償う必要なんかない!
鈴地はただ現実から逃げてるだけだよ!」
俺が逃げてる…?
そんなことはない!
俺は…宮本さんのために…
いや、
俺は宮本さんが死んだっていう事実を受け入れていない…
それが逃げてるってことなのか?
「鈴地、宮本さんは死んで償ってほしくないはずだよ?
償うなら…鈴地が宮本さんの分までしっかり生きることだよ」
宮本さんの分も俺が…?
そんなこと…できない。
そんなこと…
「そんなこと…許されるわけない」
「何言ってるの鈴地。
返事の手紙に書いてあったのが…
きっと鈴地に対する気持ちなんだよ」
手紙…
あの手紙は血が滲んで読めなかったけど…
あの内容は俺には伝わった。
宮本さんは俺のこと…本気で好きなんだと…
「鈴地…!」
「鈴地!お前…」
みんなが俺を見て驚く。
そして俺自身も気がつく。
この…目から流れてる雫はなんだ…?
もしかして…
これは『涙』なのか?
泣くことも笑うこともできなかったのに…
今俺は…泣いて…そして…
優しく笑っている。
445: 名前:+椎名+☆2011/10/27(木) 17:12:29
え…?
涙?
俺は…どんなに苦しくても
どんなにつらくても…
涙なんか出なかったのに…
「鈴地、もしかして感情…戻ったの?」
「わからない…でも……」
本当に涙なのか、
俺は手でその雫を触った。
その雫は暖かく、やはり目からこぼれていた。
すると斎が肩を組んできて俺に言った。
「鈴地、男だって人間なんだから泣いてもいいんだ。
感情を閉ざす必要なんかないんだぜ?」
斎…
もしかしてこいつは…
俺が…立ち直るのを待っててくれたのか?
やっぱり、こいつは…俺の……
よし、決めた。
俺は宮本さんの分も必死に生きる。
それが彼女のためなのかもしれない。
446: 名前:+椎名+☆2011/10/27(木) 17:26:09
あれから時が過ぎて…
俺達は中学二年生になった。
学校は桜が満開!
毎日桜吹雪を浴びることになるくらいだ。
よし。
俺は…これを機会に変わってみるか。
俺は桜舞う道を行き、二人に合流した。
ふたりというのは…斎と佳暖。
「おはー!斎!佳暖!」
「鈴地!よっ!…ってお前それ…」
「似合うか?」
「それ眼鏡だよね。鈴地視力悪かったの?」
俺は眼鏡をかけてみることにした。
「いや、まぁ伊達眼鏡だけどよ」
「なんだよそれ!似合ってねぇ!」
「うるせぇ!それにこれは…大切なものだから」
「…?」
そう、これは…宮本さんの眼鏡だ。
遺品を譲ってもらい、
割れたレンズは取り替えてもらった。
彼女の生きた証、だからな。
「宮本さんのか…?それ」
「あぁ」
「…大事にしろよ」
「言われなくても」
俺の1つだけの宝物…
彼女が使っていた…生きた証。
彼女を忘れたくない。
だから俺はこの眼鏡をかけている。
彼女がちゃんと存在したことを示すためにな。
「で、二人共。あと5分だよ」
「「あー!!やべぇ!」」
俺達は声をそろえて叫ぶ。
通りかかった人が振り返ったが気にしない。
「行くぞ!」
「ちょ、斎!」
「待って!」
俺達は三人共桜の小道を走っていった。
__鈴地の回想 END__
448: 名前:+椎名+☆2011/10/27(木) 17:38:16
あぁ、あったな…
こんなことが…
俺の…悲しい過去、か。
その俺が今は平気な顔して人殺してるんだもんな。
俺、どんだけ狂ってんだよ…
感情を失って自殺行為、更に人殺し。
理由なんかなかった。
俺はただ死にたかった。
でも今は違う。
ちゃんとした理由がある。
守りたい人が…いるから…
今度こそ守りたい。
あいつのこと…本気で好きだから…
俺はあいつの力になりたい。
だから今戦っている。
雪奈…俺がお前を守ってみせる。
449: 名前:+椎名+☆2011/10/27(木) 18:44:19
…そろそろもどらねぇとな。
雪奈や赤星達も心配するだろうし。
…あれ?
でも…何か忘れてる気がする…
…!
そういえば…このゲームは確か…
相手を殺したら放送が入るのに……
まだ入ってない…
ということは…まさか…!
「フフフ…」
気づいた時にはすでに遅かった。
振り返ると血まみれの一文字が立っている。
その手には鋭いカッター。
「私を傷つけた…こと…後悔…しなさい!」
ヤバい…!
そう思った刹那。
パーン!!
どこかから銃弾が飛んできて、それは一文字の腹に命中した。
血がどっと溢れ、苦しみながら倒れる。
「鈴地!」
え…?
雪奈…?
嘘だろ…
その手に持っているのは…拳銃か?
待ってくれよ…それでこいつを殺したら……
『管理人チームの一人が殺されました。
なかなかやりますねぇ、参加者様』
空中に映し出された映像には……
拳銃を持った一文字を殺した…雪奈が映っていた。
最終更新:2012年08月11日 06:48