497: 名前:+椎名+☆2012/01/05(木) 15:53:21
~雪奈side~
『キーンコーンカーンコーン』
私が屋上のドアの前まで行くと授業開始のチャイムが鳴る。
でも、関係ないんだよね。
サボるから!
『ガチャ…』
屋上の扉を開けると風が一気に校内に入り込む。
髪が後ろにさらさらとなびいている。
寒いくらいがちょうどいいんだよ…きっと。
私は扉上へと続く梯子を登る。
先生とか来てもばれないように…
いや、バーチャルだからバレてもいいのかな?
でもサボるって言っちゃったし…
今帰ったら遅刻でもあるし…
うん、やっぱりサボるのが一番かな。
「ふぅ…」
私はその辺に寝そべる。
空が青い。
…そういえばこの学校はどこにあるのかな?
風も吹いてるし…空も透き通るような青さ。
これをバーチャルなんかで作れるのかな?
うーん…
『ガチャ…』
「えっ?」
だ、誰か来た!
先生かも…バレたらどうしよ…
ばれないとは思うが人間いざという時になって慌ててしまう。
そういうものだ。
「ど、どうしよ…!?」
突然誰かに口を塞がれる。
て、敵!?
「静かに…気づかれちゃうよ?」
私は声の通りにじっと息を殺した。
しばらくすると入って来た人は何かを囁き、戻っていく。
せ、セーフ?
じゃなくて…
この人誰!?
私はぱっと離れて後ろを向いた。
498: 名前:+椎名+☆2012/01/05(木) 16:02:11
「ふふ、君もサボりに来たんだね」
…!
この人は……
「十六夜…とかいう人…」
「覚えててくれたんだね?雪奈ちゃん」
そういえばこの人敵だ…
それもやばいって聞いたし…
私は帰ろうと橋子に近づく。
「待ちなよ」
が、十六夜に手を捕まれた。
「せっかくなんだし、サボりなよ?そのつもりだったんでしょ?
大丈夫、今は何もしないよ」
うー…本当かな?
でも…うんと言わないかぎり手を放してくれないだろう。
「う…わ、わかったよ…
本当に…今は殺しあいとか…なしだよ?」
「約束するよ」
この人…約束なんてちゃんと守ってくれるのかな?
私はとりあえず十六夜の隣で寝そべる。
まさか…敵チームで一番危ない人とサボることになるなんて…
499: 名前:+椎名+☆2012/01/05(木) 16:14:01
「…はぁ、やっぱり学校はいいね」
「え…?」
「こんなにいいとこでサボれるから」
「あぁ…」
そういう意味なんだ…
一応ここは勉強を教わるところで
サボれる場所では……
あ、そうだ。
「ねぇ、十六夜…さん」
「はは、さんなんて堅苦しいなぁ」
「じゃあ…十六夜…君」
「ん?何?」
何か調子狂うな……
「あの…この学校とか空は作り物なの?」
「いいや、いくらなんでも空をこんなに再現出来ないよ。
この学校も空も本物だよ」
本物なんだ…
久しぶりの風…
前回のゲームでは硬く閉ざされた部屋にいたから…
なんだか懐かしいな。
…出来れば…真波達ともう一度来たかったな…
「雪奈ちゃんは友達想いなんだね?」
「え?」
「…みんなと来たかったって…」
え?
どういうこと?
何でわかるの?
頭が混乱している。
「僕は人の心が読めるんだ」
「え?な…」
「生まれつきそうだったんだよ。
人の過去も分かる…これも生まれつきの能力なんだ」
そんな人がいるなんて…
アニメから飛び出した人みたい。
500: 名前:+椎名+☆2012/01/05(木) 16:23:17
「…はぁ」
ため息をついて十六夜君は空をじっと見つめている。
…こうしていれば…普通の…男の子なのに…
普通の…かっこいい男の子なのに…
あれ?か、かっこいい…?
そ、そんな風に思っては…
「かっこいい…ね、ありがとう。雪奈ちゃん」
う、読まれた…
なんでかっこいいなんか浮かんできたんだろう…
「ねぇ」
「…?」
「雪奈ちゃんはさ…『愛』って分かる?」
愛…!?
この人から意外な言葉が…!
「僕さ、愛とか友情とか…嫌いなんだよね」
…え?
「どうして…?」
「いつまでも友達とか言ってさ、
結局は先にいなくなっちゃったりするだろ?
いつかはいなくなるんだよ…」
この人…
過去に何かあったのかな……
今すごく悲しそうな目をしてる。
「私も…『愛』は嫌い」
「…!へぇ…意外だね?」
あれ?
愛が嫌いなんてなんで言っちゃったのかな…
本当は…友達とか友情とか愛とか好きなのに…
私は…愛が嫌い…?
保健室のこともそうだけど…
時々自分の気持ちがわからなくなる。
何故…私は保健室も愛も嫌いなのかな…
最終更新:2012年08月11日 07:02