第49話「輝けプリキュア! 冒険、奇跡の毎日」


あらすじ

 シャイミーとパールの力でボウケン星が闇から解き放たれ、昔の美しい姿を取り戻していく。そして、それを見届けたサンディとナイトはランタンの力でできた光の球に再び乗り、エクリプスの姿を追って地球へと戻ることにした。二人に向かって手を振るオレンジたちの姿がどんどん小さくなって、見えなくなる。二人は、それを見ながら手をつなぎ、堅く握り締める。
 光の球は瞬間的に宇宙空間を亘り、地球に近付いてゆく。変わらずに存在する様子に、二人がほっとした時だった。地球の夜側だったので気付かなかったのだが、街の明かりが停電するように闇に飲み込まれていくのが見える。それは地面だけでなく、雲や海までもが沈んでいく感じだ。
「地球が何かおかしいよ」 サンディの声の通り、夜側だけでなく昼間の地域も暗くなっていき、その闇は地球の外側にまで広がっていく。
 光の球は、光が丘に到着して消えた。そこにはランタンが残される。「!」 ボウケン星の悪夢が再び目の前に広がっている。荒れ果てた町並みの廃墟。石像になった人々。闇色に沈んだ空。空気までがよどみ、その向こうに何か巨大なものがうごめいている。
「あれは、何?」 ナイトが指を差す。ビルよりも巨大な何かだ。それが低い唸り声を上げながら、キラキラとしたものを吸い込んでいる。
「も、もしかしてエクリプス」 サンディとナイトが顔を見合す。ボウケン星で見たときよりも恐ろしく巨大な存在になっている。しかも、マント姿ではなくロボットのような無機的な姿に変貌している。
 プリキュアの二人が地面を蹴って飛び掛る。そしてエクリプスの巨大な体を蹴り上がりながら、顔の所まで行き着いた瞬間、二人の体がエクリプスの手で振り払われた。地面に叩きつけられる二人。巨大なクレーターができ、その中で辛うじて立ち上がることができたナイト。何とか崖を這い上がり、クレーターの淵から顔を上げた時、目の前に見えたのは石化した竹林だった。その景色に何か見覚えがあって慌てて振り返る。クレーターは、その一角を全て飲み込んでおり、わずかに屋敷を囲んでいたと思しき塀の一部だけが残っている。そこにあったであろう建物の姿はどこにもない。それを知った瞬間、ナイトは何かがこみ上げてきて「おじいさまー、おばあさまー」と必死になって叫んでいた。
 同じ頃、サンディも建物を破壊しながら、地面を転がり続けていた。ようやく止まり、苦痛に耐えながらも何とか立ち上がったサンディの前に半ば崩壊した我が家の姿が目に入る。慌てて家の中に入るサンディ。内部は地震の後のようにぐちゃぐちゃになり、見る影もない。幸い家族の姿は見えなかったが、逆にそれがサンディの不安を増大させる。サンディとナイトはまるで示し合わせたかのように同時に飛び出し、再びエクリプスへと挑む。
「プリキュアクロスライジングデーイズ!」 ブレスに想いのありったけを込めて必殺技を打ち込む。二人の攻撃はエクリプスに対して効果があるようだ。うめき声をあげるエクリプス。しかし、そう思えたのもつかの間だった。エクリプスの目が光り、憤怒に燃えている。その途端に必殺技がエクリプスに吸収され始める。ブレスが目一杯輝き力の限りを投入しているが、エクリプスに吸収されている量は半端ではなく、やがてブレスの輝きが不定期に点滅し始める。それを支えているプリキュアの二人への負担もかなり大きい。苦悶の表情と冷や汗を浮かべながら、必殺技を撃ち続けている。
 だが、ブレスの光が消え、そして必殺技の発射もついには途切れてしまう。そして、変身が次第に薄くなり、ついには変身が解除されてしまった。キュアパストを見ると石化している。開くこともできなくなっており、二度と変身することすら難しい。
 まひるとかぐやに戻った二人は、その場に倒れこんで意識を失った。

 かぐやが意識を取り戻すと、膝を抱え込んでうずくまっているまひるの姿があった。声を上げずに泣いているのが見える。かぐやは起き上がるとまひると同じように膝を抱えて座り込む。キュアパストはやはり石化したままだった。エクリプスは、闇に溶け込んでしまったのか姿が見えない。空気までが闇に支配されており、今こうして生きているのが不思議なほどだった。突然、家の光景がフラッシュバックしてきて涙があふれる。二人はそのまま声も出すことができずに泣いた。
「そう言えば、再来月私の誕生日だったんだ」 まひるがポツリとつぶやく。「そっか、お祝いしなくちゃね」とかぐや。「でもこのまま世界が滅んだら出来ないね」「まひるたちにお誕生会開いてもらって嬉しかったな。あの時のお礼がしたいよ」「でも……」「きっとできるよ。私信じてる。だからまひるも信じて!」 かぐやの言葉を聞いてまひるの目から涙がこぼれる。だが、その涙は絶望の涙ではない。希望の涙だ。熱い涙の雫がキュアパストにこぼれた瞬間、パストの石化が解けはじめる。
「!」 それを見て二人の心に明かりが灯る。全てが闇に支配されたわけじゃない、そう感じることが出来たからだ。
 その希望の明かりに感応したのか、空から一筋の光がさす。思わず見上げる二人。エクリプスは気がついていないようだ。そもそもエクリプスがどこにいるのか分からないのだが。
「まひるー、待たせたレジ」「かぐやー、大丈夫プル」 光の球体が現れ、まひるたちの前に降り立つ。その中にはオレンジ、パープル、ピンク、そしてパールが居た。パールは、力が戻ったのか人間態になっている。「闇のオーラがこの空間を包み込んでいて到着が遅れました、ごめんなさい」 パールが二人の手を取る。「プリキュアが変身できなくなってるレジ」 オレンジたちが驚いたように石化したキュアパストを見つめている。
『プリンセスパール、お前も来たのか。星で大人しくして死を待てばよいものを』 エクリプスの声が雷のように響く。彼の小さな分身であるファンネルが一斉に襲ってくる。その攻撃を前に思わずオレンジたちがまひるとかぐやをかばい石化して転がる。まひるとかぐやはパールのバリアに包まれて辛うじて助かる。
「オレンジ」「パープル、ピンク」 まひるとかぐやの声が響く。だが呼び掛けに応える声はない。
「オレンジたちは、大丈夫です。エクリプスを倒せば復活するはずです」 パールがアドベンタルデイズキーを二人の持つキュアパストに当てて光を分け与える。完全に石化が解けてはいなかったキュアパストが輝きはじめ元通りになる。まひるとかぐやはカードをスラッシュして再びプリキュアに変身する。
「シャイミーよ、プリキュアと共にあれ」 パールがランタンを掲げ、言葉を発する。ランタンからシャイミーが飛びだした。シャイミーは二手に別れ、それぞれのプリキュアへ向かう。フライングフェアリーのカードが巨大化し、サンディの頭の上から通過していく。その時、他のシャイミーが力を与えるように吸い込まれていく。ナイトの方は、ソードユニコーンのカードが巨大化し、サンディと同じく頭からゆっくり通過していく。そして現れたのが、ブレイジングサンディとブリリアントナイトだ。
「今までと違う力が湧いてくる感じ」 新しいコスチュームを見下ろしながら、体の中から湧いてくる力に目覚めていた。変身前は分からなかったエクリプスの姿がはっきり見える。闇のオーラを噴き出しており、なおも光を吸い込もうとしている。
 二人は、見詰め合ってうなずくと、その巨大な姿にまっすぐに突っ込む。二人を狙ってファンネルが攻撃してくるが、その攻撃をはじき返す。お互いにぶつかりあって火を噴くファンネル。そして、エクリプスの繰り出すムチの攻撃で、ムチの上に飛び上がり、駆け上がる。二人で力を合わせて、エクリプスに体当たりを繰り出す。堅いと思われた体を突き抜けて胎内に飛び込む。闇の詰まった空間は、生き物の内部とも違う不思議な空間だった。広いような狭いような遠くが見渡せるような何も見えないような、その空間。踏みしめる地面だけは感じられる。闇を掻き分けて手探りで探すうちに何か泣き声のようなものが聞こえてきたように感じた。その方向へ行くと明らかに何かの形を持つものが空中に浮かんでいる。そに近付こうとすると、バシッと火花が散りそれ以上の接近を拒絶される。
「何、あれ?」 ブレイジングサンディがゆっくりと手を伸ばす、しかし、再び指先に火花が散り拒絶される。
『お前達は何者だ』 拒絶はしているが興味がないわけではないらしい。その何かが心の中に直接話しかけてくる。「私たちはプリキュア」『我はエクリプスの力の源泉なり』「ちからのげんせん?」「ここから力が湧いてくるってことよ」 ブレイジングサンディの疑問にブリリアントナイトが答える。「これをやっつければエクリプスは終わりってこと?」「そうなるわね」 戦闘態勢に身構える二人。その時、エクリプスの力の根源からつぶやきが聞こえる。
『やはり闇に生まれたがゆえに、全てのものから拒絶され排除されるのか……ならば、光など要らぬ、さすれば、闇も消えてしまうのだから……ゆえに我は光を排し、闇も無くなった混沌を望むのだ』
 その言葉には、自分の生い立ちを呪い、世界を呪う冷たい響きが感じられた。全てから拒絶されるならば、全てを滅ぼし自らの居場所を作ればいい。そんな想いが流れ込んできたのだ。
「でもだからって、全てを滅ぼすのは間違ってる」 ブレイジングサンディが叫ぶ。「私も闇の力に囚われたことがあるから気持ちは分かる。でも全てを否定したり、拒絶したりしても何も生まれないし、良い方向にもならないわ。仲の良い友達だって時にはぶつかることもあるし、相手を否定することもある。でも……」 そんなブリリアントナイトの手をブレイジングサンディが取る。「「でも、こうして友達になれたなら、それを乗り越えられる」」 二人の声に体を包むシャイミーのオーラが反応して輝きだす。エクリプスの力の根源が、その光に反応して叫び声をあげる。
『我は光なぞ要らぬ。光に頼るものは弱き心、仲間など裏切りの種、傷付き悲しみに満ちた世界こそ、真実の姿だ!!』
 シャイミーの光を浴びて、エクリプスの根源が怒りの声を発した。根源を取り囲む目に見えないバリアのようなものが急速に拡大して、プリキュアをはじき飛ばす。外に飛び出したプリキュアは、体勢を整えながら地面に着地する。
「エクリプスが苦しんでいるようでしたが、何かあったのですか?」 プリンセスが二人に尋ねる。「中で、力の根源に出会ったの。自分が拒絶されることを恨んでいるみたい」「話し合いの余地はないわね」 サンディとナイトの言葉にプリンセスは大きくうなずく。「ならば、滅して新たな命として蘇らせるのも一つの道でしょう」
 エクリプスから触手が四方八方に飛び出してきて、地面を貫く。それを避け崩れたビルの上に立つ二人。二人は片手を堅く結び、もう片手を前へ突き出す。「ライジングサン!」「ライジングムーン!」 それぞれの手から力が生まれ輝きはじめる。「光り輝く二つの命が」「闇の魂を 今解き放つ!」 そして「「プリキュアクロスライジングデーイズ!」」の叫び声とともに渾身の力と想いを込めて必殺技を放つ。足元が発射の勢いで後ろにずり下がる。そんなことにはお構いなしでまっすぐエクリプスの方を見つめている。が、やはりエクリプスが小さかった時と同じく効果がないようだった。「やはり駄目なの!」「がんばって、サンディ」 励ましあってなおも発射し続ける。全身が燃え尽きそうなほど輝いている。
 が、その時だった。エクリプスの腕が必殺技を振り払う。プリキュアの方へ技が跳ね返されてビルが消し飛んだ。瞬間、飛びのけて避けたが、危ないところだった。
『その程度の光で我を消そうなどと、笑止。その力も食い尽くしてくれるわ』 エクリプスの根源の声が聞こえる。触手が発射され、プリキュアを狙う。寸でで避けるプリキュア。
「どうしよう…このままじゃ勝てない」 立ち尽くすプリキュアにプリンセスが近寄ってくる。「二人とも諦めないで…」「でも、パール」「全ての光を集めるのです。闇に負けないもっと強い光を。私の持つアドベンタルデイズキーの力も全て解放しましょう」
 そう言ってプリンセスがアドベンタルデイズキーを天にかざす。「全ての光あふれるものよ、プリキュアに力を。私の声に応えて」 プリンセスが叫ぶとデイズキーが光り始める。そして、空から大地から、そして石化した者たちから光の粒子があふれはじめ、デイズキーにどんどん流れ込んでいく。
「全ての力を今、伝説の戦士プリキュアへ。二つの力を一つに、全ての力を一つに!」 プリンセスパールの声に、アドベンタルデイズキーが光の粒子に砕け散る。そしてその光りの粒はプリキュアの二人を包み込んだ。真っ白な空間の中にまひるとかぐやが浮かんでいる。『『私たちも互いの持てる力を今、ひとつに』』 まひるとかぐやが光に包まれながら、ゆっくりと抱き合う。そして二人はそのまま光に溶けて……。
 アドベンタルデイズキーが作り出した光の球体が消えた時、そこには今まで見たことがない一人の戦士の姿があった。「キュアデイズ……伝説の戦士が現れたのですね」 パールの目が潤んでいる。
『どんな光の力を使っても我が力には勝てぬ! 所詮、光は闇に消される存在なのだ!』 エクリプスの拳が空からキュアデイズの上に上に振り下ろされる。ハッとするパール。轟音と共にもうもうと砂煙を上がり、クレーターができる。あの攻撃をもろに受けてしまっては、さすがのキュアデイズも生きては居ないだろう。
 が、エクリプスの巨大な拳が少しずつ持ち上がりはじめる。「「あなたなんかに負けていられないのよ」」 下からキュアデイズが拳を頭上に掲げ、思いっきり放り投げる。その勢いにつられて転倒するエクリプス。代わって生き残っていたファンネルがエクリプスの意思に操縦されてキュアデイズを襲うがその攻撃ははじき返され、自滅していく。起き上がりつつあるエクリプス。それを見ながらパールが叫ぶ。「さぁ、キュアデイズよ。もう一度想いを込めて全てをエクリプスにぶつけるのです」
 プリンセスの言葉にキュアデイズが両手を前に突き出す。全身が輝きだすキュアデイズ。
「「プリキュアスーパーシャイニングノヴァ」」 最強の必殺技が発射される。
『何度撃っても無駄だ、闇の存在は絶対なのだ』 叫ぶエクリプスに「いいえ、あなたの居場所はもうどこにもありません。拒否される者から受け入れられる者へ生まれ変わりなさい」とプリンセスつぶやく。最終必殺技が今まで見たこともないほど輝き大きくなってエクリプスの体を包み込む。エクリプスの断末魔の悲鳴があがる。
『うぉぉぉぉー! しかし、光あれば闇は決してなくならないのだぞ・・・』
 その言葉を残してエクリプスの体が粉々に砕け散る。そして全ての世界を包んでいた闇が消えていく。エクリプスが砕けたあと、小さな星の光が空から降ってきた。それを両手で受け取るプリンセス。
「これはエクリプスの中にあった小さな光です。全ての命が持つ輝き。この光をエクリプスは育てることができなかったのです」 そう言いながら、ランタンに入れる。ランタンが再び明るく輝き、キュアデイズから光があふれ、ブレイジングサンディとブリリアントナイト、そしてアドベンタルデイズキーに戻った。そして、シャイミーの力がランタンの中に消え、まひるとかぐやに戻る。
 プリンセスがアドベンタルデイズキーを振り、浄化を開始して、地球は再び元通りに戻る。オレンジたちも元に戻った。

「全てが終わりました。ありがとう、まひる。ありがおとう、かぐや」 ボウケン星へ旅立った公園に全員が立っていた。時計は、旅立った時間からそれほど経ってはいない。プリンセスの言葉に胸をなでおろす二人。「あの…これ、お返しします」 かぐやがキュアパストを差し出す。プリンセスは首を横に静かに振った。「闇は消えました。もうボウケン星にも必要ありません。あなたたちがお守りとして持っていてください」 その気持ちを素直に受け取ってポケットにパストを仕舞いこむ。
「闇は本当に消えたのかしら?」 かぐやの言葉にパールが大きくうなずく。「闇はなくならないかも知れません。でも、絶望も闇もいつかは希望にも光にも生まれ変わります。ランタンの中の灯りのように」
 パールがランタンを掲げると、小さな光が光っているのが透けて見える。「そして新たな命の芽生えも、闇からの転生なのです。そしてそれらを育て慈しむのもあなたたちの心次第なのです。だから希望の光を決して忘れないでください」「わかったわ」「では、私たちもボウケン星に帰るとしましょう……パル?」 突然、煙があがりプリンセスがパールに戻ってしまう。「力を使いすぎたパル」 一斉に笑うみんな。
 光の球をランタンを使って作り、それに乗るパール、オレンジ、パープル、ピンク。これでお別れと思うとまひるもかぐやも思わず涙ぐむ。オレンジたちも泣いていた。
「「さようなら!」」「「「「さようならパル」レジ」パプ」ピピ」 光の球が宙に浮き上がり次第に高くなっていく。見えなくなるまで手を振っていると、一瞬キラリと光って見えなくなった。二人はしばらく空を見つめながら泣いていたが、やがて涙を拭いてかぐやがまひるの方へ向き直る。まひるも同じくかぐやの目をまっすぐに見つめる。
「私もこれから学校のことや部活とか、それだけじゃなくって色々なことに精一杯がんばるわ」
「うん、私も。今までだけじゃなくって、これからも毎日が冒険だよね
 二人は笑顔になって、家へ帰ることにした。いつまでも消えない希望の光を胸に宿しながら。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年12月03日 01:55