現在、小学校では「かけ算」を初めて習うときに、「具体的な場面を式で表すときの式の順序には意味があるから、一定の順序を守って式を書きなさい」という指導法が広く行われています。

例:「タコが2匹います。それぞれ足は8本。全部で足は何本?」という問いに
「しき:2×8 こたえ:16本」と書くと、式が間違いで正しくは「8×2」
だからその順に書け、と指導されるケースが増えています。その場合、教師に
よっては答の「16本」まで減点対象にする例もあります。

 この話を初めて聞いても、「何のこっちゃ(笑) アホな教師がいるもんやな~」ぐらいにしか思わないかもしれません。何を隠そう、当サイト管理人も当初はその程度に軽く考えていました。ところが、本格的にこの問題を調べ始めると、

注1)その前に、何故「何のこっちゃ(笑) アホな教師がいるもんやな~」と思ったのか説明してもらおう。

どこがアホなのか?

注2)「具体的な場面を表すときの式の順序には意味がある」ということに基づいた指導だと書いているが、教育現場の認識がそうなのかどうか調べてみないと分からないが、「具体的な場面を表す(掛け算の)式の順序には意味をつけて考える」というのが正しい。それが変形された考え方が「具体的な場面を表すときの式の順序には意味がある」ということだ。これでも「何のこっちゃ(笑) アホな教師がいるもんやな~」とキミは考えるのか?

注3)さらに「具体的な場面を表す(掛け算の)式の順序に意味をつけて考える」とした場合に慣例的に「一つ分の数×いくつ分」とするのだ。西洋の慣例は逆順。いずれにしても「具体的な場面を表す(掛け算の)式の順序に意味をつけて考える」ことには変わりはない。

注4)「一つ分の数×いくつ分」としたときに「タコ2匹の足は何本?」という問いに「しき:2×8 こたえ:16本」と書けば式が間違いで正しくは「8×2」だからその順に書け、となる。何の問題もない。

注5)これを「何のこっちゃ(笑) アホな教師がいるもんやな~」と考えるのはキミが注3)4)の考え方を理解していない(理解できていない)からに過ぎない。

では本文を続けよう。本格的にこの問題を調べ始めると、

  • 想像以上にこのような非常識な指導が広まっている
  • この非常識を子供に教えるために「2本足のタコ授業」「単位のサンドイッチ記法」といったこれも無意味な授業が行われている
  • しかもこれが教育業界では「常識」になっている(!)

 という驚愕の事実が明らかになりました。

注6)理解できない考え方を「非常識」で片付けたがるのは無教養なひとの常。「非常識な指導」とは何を指すのか?少なくとも原理的な考え方ではないことは注1)2)3)4)5)で注意した。

注7)「具体的な場面を表す(掛け算の)式の順序に意味をつけて考える」ようにするのは、教育業界どころか一般社会でも数学の世界においても常識。非常識どころかまったくの常識だ。

注8)「しかもこれが教育業界では「常識」になっている(!)」と一緒になって驚くのはキミが注3)4)及び注7)で注意したことが理解できていないからに過ぎない。

 そもそもこの「かけ算の式の順序には意味がある」というのは社会的にも科学的にもまったく存在しない、非常識なルールです。

注9)根拠のないことをいうときに「そもそも」で始めて「それ以上の説明を補わない」のはよくある陳腐なレトリック。その主張はたいてい怪しい。現に注7)で注意したように、「かけ算の式の順序には意味がある(ことがある)」というのは社会的にも科学的にも常識的事実だ。

このような非常識なルールを当たり前のように小学校で教えることには、重大な弊害があります。
(1)実社会にはそんなルールがないことを知らないまま小学校を卒業する子が出ます。
(2)この指導法では、真の算数・数学の力が育たず、小手先の解法を身につけるだけで終わってしまいます
 このような弊害を放置するわけにはいきません。

注10)(1)「そんなルール」とはどんなルールだ?掛け算は「一つ分の数×いくつ分」と書くものというルールであればその通り(そんなルールは一般社会にも数学の世界にもない)。しかし「具体的な場面を表す(掛け算の)式の順序に意味をつけて考える」という暗黙のルールは一般社会でも数学の世界でも注意される以前の常識だ。どちらのことを「そんなルールがない」と言っているのか。明確にしなければ単なる「大衆(愚集)の声」に過ぎない。

注11)(2)「この指導法では、真の算数・数学の力が育たず、小手先の解法を身につけるだけで終わってしまいます」指導の仕方によってはそうかもしれない。しかしキミたちの「掛け算の順序を考えるのはそもそも意味がない」という愚かな独善的志向に基づいた指導が行なわれれば、それがトンデモだと知らないまま小学校を卒業する子が出るだろう上に、論理的な考え方を破壊する。なぜなら「掛け算表記に順序などそもそも意味がないとするなら」饅頭3個5皿と饅頭5個3皿の総数が等しいのは「(一切何も)考えるまでもなく」自明なことになってしまう。これを非科学的・非論理的考え方と言わずして何を然う呼べるか?まさに「この(掛け算表記に順序などそもそも意味がないとする考えに基づいた)指導法では、真の算数・数学の力が育たず(さらには科学的態度や論理的思考も育つことなどあり得ず)小手先の解法と計算能力を身につけるだけで終わってしまう」。

 実は、このような「掛け算順序固定指導法は小学校の算数指導の常識」という教育業界の常識は、個々の教師の能力資質の問題ではなく、主要教科書会社各社の教科書指導書や、地域の教育行政によって統制されていると思われます。

 この現状を打破して、まともな算数教育を実現するためには、この問題をより多くの人に知ってもらい、小学校教育業界の外から変えていくことが必要です。

注12)確かに「教育行政」の石頭レベルでは「算数の正しい考え方」などちっとも理解されておらんだろう。それは昔からだ。危惧されるのは大学進学率が50%近くなった現在「知的レベルの『そこそこ』上がった一般大衆」が「実は何も分かっていない」にも関わらず、掛け算や割り算くらいはできることから、独善的志向に基づいた「計算できればどっちでも同じ」というアホな主張を声高に上げ出したこと。かしこい読者の皆さんは、権力(教育業界・教育行政)側に対してシュプレヒコールする快感に酔わずに、科学的態度の問題として「一度きちんと」考えてみるべきだ。

 当まとめサイトはそのためにあります。ぜひここで「掛け算順序固定」問題についての真相を知っていってください。
                         以上。

注13)週刊誌の三面記事を読むように「「掛け算順序固定」問題についての真相」を知ったからといってあなたの知的レベルが上がり正しく考えられるようになるわけではない。再掲。かしこい読者の皆さんは、権力(教育業界・教育行政)側に対してシュプレヒコールする快感に酔わずに、科学的態度の問題として「一度きちんと」考えてみてください。



コメント

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  • >「かけ算の式の順序には意味がある」というのは社会的にも科学的にもまったく存在しない、非常識なルールです。

    「絶対的な意味がある」わけではないという意味ではそのとおりでしょうけど、一方でひとつの伝票では

    単価×個数



    個数×単価

    の「どちらかに」揃えて書きますよね。揃えないと実社会でたいへんなことになりますよ。

    つまり「掛け算の式の順序に「絶対的な」意味はなくても」掛け算の式の数の順序をどちらでもよいことにしてはいけない典型的な理由となっていると思います。

    掛け算の順序は数を入れ替えても同じ答えになるけど「順序に意味があることがある」ということをわかっていないと社会的にも大混乱すると思いますよ。「そもそも掛け算の式に順序など存在しない」というひとたちは「交換法則」と「掛け算の式の書き方」をごっちゃにしているんだと思います。

    ですので、社会的に弊害のあるのは交換法則があるからといって「掛け算はどう書いても正しい」と安易に教えてしまうことだと思います。

    -- (実務家) 2014-05-12 00:36:20
  • 何だこりゃ。凄まじく読みづらいんですが、賛成派と反対派が無理矢理同一ページ内の本文と注で喧嘩してる? せめて意見が違う人は別で分けて書いてもらわないと、読者から見たら文が支離滅裂になってるようにしか見えません… -- (名無しさん) 2014-08-04 22:22:18
  • そうかな?本文と注で棲み分けしてるから読み易いんでない?なかなか気がきいてるし、相手を尊重した良い書き方だと思うよ。両者の論旨もわかりやすい。 -- (名無しさん) 2014-08-06 23:46:00
  • 佐倉統 ‏@sakura_osamu 8月24日
    【かけ算とは1あたりからいくら分を求める計算であるとし,いくら分×1あたり の順序でかく】→この定義は掛算とは関係ないし不要です。そして数学的には間違っています。RT @Irian4G4: @Irian4G4 @tsumura_isas6 #掛算
    数学の事、分かるの?おっさん。 -- (名無しさん) 2014-08-26 20:01:59
  • http://twitter.com/sekibunnteisuu/status/504403152276164609
    #掛算 志村五郎「数学をいかに教えるのか」、竹内薫氏による書評 
    http://www.nikkei.com/article/DGXDZO75896610Q4A820C1NNK001/ …
    谷山志村予想のあの谷村五郎氏(原文ママ)が掛け算の順序指導を「愚劣なこと」と批判しているようです。50年代に「乗数」「被乗数」という言葉が発明されてから、というのだが、志村の主張は、2つの数をかければよい計算は掛け合わせればよいだけでその場合に「4×3はマル、3×4はバツ」とするのはナンセンスということだけである。饅頭4個3皿の饅頭の総数を4+4+4と求める考え方を掛け算の式で表すとき
    4+4+4=4×3
    としたら、饅頭3個5皿の饅頭の総数を一皿ずつ5皿分あるとして掛け算の式で表すと
    3×5
    にしかなり得ない。これは志村も否定していないし否定できない。 -- (名無しさん) 2014-08-27 18:48:12
  • http://twitter.com/sekibunnteisuu/status/504403152276164609
    #掛算 志村五郎「数学をいかに教えるのか」、竹内薫氏による書評 
    http://www.nikkei.com/article/DGXDZO75896610Q4A820C1NNK001/
    谷山志村予想のあの谷村五郎氏(原文ママ)が掛け算の順序指導を「愚劣なこと」と批判しているようです。50年代に「乗数」「被乗数」という言葉が発明されてから、というのは周回遅れのあやまった指摘。メタメタ氏によってとっくに調査済み。それもこれも、ぼくが「この件に関しては理系高学歴者(著名数学者を含む)だからという理由で信用できると思ってはいけない」と繰り返し強調して来たのはこういうこと。 -- (名無しさん) 2014-08-27 19:40:15
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最終更新:2014年08月07日 00:42