もくじ
赤毛のアンの時代設定は、単純にはモンゴメリが子供として過ごした時代と考えればいいでしょうから、1880年代あたりとのことに対して「おおざっぱにはOKね」として、誰も反対する人はいないと思われます。ファンの中には、後から出版されたアンのシリーズから推定されている人もおられます。
では、正確には、と考えるとどうなるのかしら。
クイーンズ学院に入学するために、シャーロットタウンにアンが着いた日、下宿の窓から電話線が見えるとの記述があります(a network of telephone wires shutting out the sky:CHAPTER XXXIV A Queen's Girlです)。
シャーロットタウンに電話が開通した(Telephone service installed)のは1884年のようです(Dates of interest in Charlottetown's growth by シャーロットタウン市公式ホームページ(pdfファイル) より。松本侑子訳 集英社文庫の注p.527には1890年とある)。
とすると、クイーンズ学院に入学したのは、1884年かそれより後。
1884年に開通したということは例え工事途中の電話線がそれより前にやってきていたとしても張り巡らされてはいまい、ということで。もちろん、これは、電話線ではなく、電線が張り巡らされていたと解釈することも可能ですが(日本の電柱のように電線と電話線がいっしょになってるならどっちがどっちかわからないわけで)、これも少々おかしいようです。電灯がやってきた(City first lighted by electricity)のは1885年12月21日なのです(出典同じくDates of ……)。電灯用以外の電線と解釈するのは無理があると思いますし(動力用が張り巡らされているのは工場だけでしょうし、当時はその可能性はないと思われます)、モンゴメリは「telephone wires」と書いているのですから、無理の上に無理を重ねるのはNGではないかと。
そこで結論:
電話線や電灯(a thousand lights gleaming on stranger facesとの記述を電灯と考えると、ですが)がシャーロットタウンにやってきた年よりも後に、アンがクイーンズ学院に入学したと考えると、1885年かそれよりも後。それから逆算すると、1870年(電話を基準)か1871年(電灯を基準)か、それより後に生まれたことになるでしょう。
なお、モンゴメリは1874年11月30日生まれ。1893年(18歳)にシャーロットタウンのPrince of Wales Collegeに入学したときには、アンが見たのと同じように電話線が空を覆い、目映い街灯が夜の街を照らしていたでしょう、きっと。
★ L. M. Montgomery InstituteのChronologyを参照しました
シャーロットタウンの歴史を前提に考えると、アンは1870年生まれかそれよりも後と考えるほうがよい。
1870年生まれとした年表
できごと | アンの年齢 | 西暦 | コメント |
アン誕生(3月) | 0 | 1870 | |
アン、グリーンゲイブルズへ(6月) | 11 | 1881 | |
シャーロットタウンに電話が入る(installed) | 14 | 1884 | 史実 |
アン、クイーンズ学院に進学(9月) | 15 | 1885 | シャーロットタウンの空には電話線 |
シャーロットタウンに電灯が灯る(12月21日) | 15 | 1885 | 史実 |
1879年生まれとした年表(クイーンズ学院の入学の年が、モンゴメリがPrince of Wales Collegeに入学した年の翌年になる)
できごと | アンの年齢 | 西暦 | コメント |
アン誕生(3月) | 0 | 1879 | |
シャーロットタウンに電話が入る(installed) | 5 | 1884 | 史実 |
シャーロットタウンに電灯が灯る(12月21日) | 6 | 1885 | 史実 |
アン、グリーンゲイブルズへ(6月) | 11 | 1890 | |
アン、クイーンズ学院に進学(9月) | 15 | 1894 | シャーロットタウンの空には電話線 |
★ 参考
アンが11歳、グリーンゲイブルズにやってきた年の9月1日(on the first day of September)、ダイアナといっしょに学校へ行きます(CHAPTER XV A Tempest in the School Teapot)。 もちろん平日のはずです。
そこで、 9月1日の曜日を調べてみました。
西暦 | 曜日 | コメント | アンの生まれ年 |
1877 | 土 | 1866 | |
1878 | 日 | NG! | 1867 |
1879 | 月 | 1868 | |
1880 | 水 | 閏年 | 1869 |
1881 | 木 | 1870 | |
1882 | 金 | 1871 | |
1883 | 土 | 1872 | |
1884 | 月 | 閏年 | 1873 |
1885 | 火 | 1874 | |
1886 | 水 | 1875 | |
1887 | 木 | 1876 | |
1888 | 土 | 閏年 | 1877 |
1889 | 日 | NG! | 1878 |
1890 | 月 | 1879 | |
1891 | 火 | 1880 | |
1892 | 木 | 閏年 | 1881 |
1867年生まれ、1878年生まれ、ではないようです。
アンが12歳、ステイシー先生がやってきた年のクリスマスに演芸会(コンサート)を開きました(CHAPTER XXIV Miss Stacy and Her Pupils Get Up a Concert と CHAPTER XXV Matthew Insists on Puffed Sleeves)。 これは、クリスマスの日(12月25日)です。 アレン牧師が司会をしていますので(CHAPTER XXV Matthew Insists on Puffed Sleeves)、安息日の日曜ではないはずです。
そこで、 12月25日の曜日を調べてみました。
西暦 | 曜日 | コメント | アンの生まれ年 |
1878 | 水 | 1866 | |
1879 | 木 | 1867 | |
1880 | 土 | 閏年 | 1868 |
1881 | 日 | NG! | 1869 |
1882 | 月 | 1870 | |
1883 | 火 | 1871 | |
1884 | 木 | 閏年 | 1872 |
1885 | 金 | 1873 | |
1886 | 土 | 1874 | |
1887 | 日 | NG! | 1875 |
1888 | 火 | 閏年 | 1876 |
1889 | 水 | 1877 | |
1890 | 木 | 1878 | |
1891 | 金 | 1879 | |
1892 | 日 | NG! & 閏年 | 1880 |
1893 | 月 | 1881 |
1869年生まれ、1875年生まれ、1880年生まれ、ではないようです。
★ この項目名には、松本侑子訳の第24章の章題を使いました。
上のふたつの年表には基本的には違いはありません
アンは1866年生まれとなっています。「アンの娘リラ」からの逆算だそう(by aerithさん)。
1866年生まれとすると、アンがマリラとマシューに引き取られたのが11歳の1877年、クイーンズ学院に進学するのが15歳の1881年となります。
もちろん、あまりややこしく考える必要はなく、モンゴメリは第一次世界大戦に合わせて「アンの娘リラ」では西暦を入れたものの、アンの子供のころ(シャーロットタウンの電話線のはなし)とは矛盾してしまった、と考えれば、アンは1866年生まれと思うんです。
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