Q-STEER@wiki

第一話

最終更新:

q-steer

- view
管理者のみ編集可

第一話

710 :名無しさん@電波いっぱい :2006/12/16(土) 16:47:47 ID:UUJygiZ/
(くっ、このアマ、追い上げてきやがったっ!!!)

青年トミオは思わず舌打ちをする。
彼の青のGTRのすぐ背後に、ショッキングピンクのマーチがいた。
特注の軽量アルミ砲弾マフラーを装備し、ライトで煽るはトミオのマシン。

(くそっ!! こんなヤンチャなマシンに負けるなんて・・・!)

二台は前後にぴったり重なったままストレートコースに流れてゆく。

(ターボっ!)

だがGTRは加速しない。

(?!)

コントローラーの中へズームイン。配線のアップ。その先は・・・断線。

マーチはすでに、Qステアグランプリ歴代一位の「青い龍」の真横につけている。

(ばかなっ・・・!?)

マーチオーナーのタミコの唇の端がほころぶ。

3台差を開けてマーチがゴールインした。
トミオの手から送信機がこぼれ落ちる。


711 :名無しさん@電波いっぱい :2006/12/16(土) 16:57:19 ID:UUJygiZ/
その女性、タミコ。
彼女については全く何も知られていなかった。
まさにQステアグランプリに彗星の如く現れたのである。

王者の敗北の日から彼女は「龍殺しのタミコ」と呼ばれ恐れられるようになったが、
青のGTRを負かした戦いの後、ふっと姿を消してしまったのである。
では、その後グランプリはどうなったのか。

トミオはじいやの部屋に立ち尽くしていた。その視線は床に注がれている。

「俺・・・もうだめなんだ・・・」

じいやはお坊ちゃんを見つめて諭すように云う、

「何を言ってるんですか。おぼっちゃんはよくがんばりました」

「じいや・・・断線なんだよっ! くっ、あまりにマシンのメンテに・・・メンテに・・・!!!」

フローリングにくずおれるトミオ。

「・・・ミオ様」

じいやの声がようやく届く。

「トミオ様、あのレースの直前・・・彼女はご自分の送信機を開けておられました」

「?!」

「こういうホビーマシンは、送信機とマシンは一心同体のようなものです。
 どちらか一方に気をとられてしまうことはよくありません」

トミオの眼から、とめどなく涙が滝となって流れ出た。


712 :名無しさん@電波いっぱい :2006/12/16(土) 17:02:18 ID:UUJygiZ/
あれから数ヶ月。トミオはトイザウルスの秋葉原店のコーナーにいた。

「おい、トミオ・・・やっぱりリアにセロテを巻くのはやめとけよ」

そう言ったのはトミオの親友、キョウである。

派手にスピンした青のGTRの横を、チューンらしきチューンは何もしていない
ハイエースが通り過ぎる。

「くっ・・・」

「時代はやっぱりグリップ走行だぜ?」


ふと、キョウが眼を上げた。
その先には女性の姿があり、どうやら新製品として出たレーシングセットを
物色しているようである。

「おい、トミオ・・・あれ・・・」

二人の視線に気付いたのか、女性が男どもの方向を見、微笑んだ。



それはまぎれもなくタミコだった。


おわり
ウィキ募集バナー