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一人の少女がいた。
彼女は誰からも愛される、聖女のような女だった。
10万3000冊の魔道書を記憶した禁書目録――――魔道図書館。
完全記憶能力を持ち、無数の魔道書を記録させられた彼女は、1年の周期で記憶を消去されなければ、生きてはいけない状態という。
それが納得できなかった、あの笑顔が、あの仕草が、二度と自分に向けられないなどと――あるいは、他の誰かに向けられるなどと。
そう考えたのが自分だけではなかったということを知らされて、できることはもう何もなくなって。
諦めらきれるものではなかった。失いたくなどなかった。それでも、そうしなければ彼女が死ぬと言われれば否応はない。
受け入れるしかないのかと、そう思っていた彼は――――

「………うま……とう………とうま! 起きてよとうま!」

学生寮の一室で、ありえない声を聞いて、ツンツン頭の少年は目を覚ました。
修道服を着た、銀髪の少女が、少年を起こそうとしていた。

「もう、とうまったら、早くしないと寝坊するんだよ?」

「は……? インデックス……!?」

飛び起きる。その声が、まだ自分に向けられているとうことが信じられなくて。
そのまま彼女の両肩を掴み、緑色の瞳を覗き込みながら、

「お前、俺のことを覚えてるのか? じゃあステイルは!? 神裂!? あの魔術師二人はどうしたんだ!?」

「……ちょっと、とうま。まだ寝ぼけてるのかな?
 ――――魔術なんて、なにをわけのわからないことを言ってるのかな」

「……は?」

言われて、記憶を振り返る。
目の前の少女――インデックスは、イギリスからの留学生で修道女見習いだ。
自分の通う高校に転校してきた、現在のルームメイトでもある。
……魔術師なんてものが介在する余地は欠片もない。
そもそも魔術なんてマンガやアニメの中でしか見たことがない、空想上の存在だ。
超能力と同じく――――?

(なんだ、これ……おかしいぞ。何かがおかしい。
 どうして俺は、そんな当たり前のことが納得できないんだ……?)

そう、おかしい。この文句のつけようのない現状に違和感を覚えた自分がおかしい。
そうでなければ彼女はどうしてここにいるのだ。
と、そう考えた彼を業を煮やした彼女はぷんすかと怒りながら急き立てた。

「とうま、そろそろいかないと遅刻するんだよ!」

「あ、ああ……そうだな。着替えるから先出ててくれ」

「わかった」

ベッドから降りて、外に出る彼女を見送り、上条当麻は――――

「……出てきてくれよ、サーヴァント。
 これは聖杯戦争とかいう願いを叶える競争で、お前が俺とチームを組む相棒なんだろ?」

そんな言葉を、唐突に口にした。
当然、それに応える者などいるはずもない。常識で考えれば、だが。


「おやおや、これはまた随分と手際のいい。こうも早く記憶を取り戻したか。
 先ほどのやり取りを見る限り、あの少女が原因かな? いや素晴らしい。
 愛の奇跡、見せてもらった――――と、まあ評しておこうか」

応じて、現れたのは真紅の巨体。まるで機械のごとき前進と、赤髪たなびかせた仮面の男。
サーヴァント――――そう呼ばれたこの男こそが、上条当麻の相棒になるという。
自身に埋め込まれたその情報を、少年は受け入れていた。

「まずは名乗らせてもらおうか。アサシンのサーヴァント、マルス-No.ε。
 お前さんの相棒、ということになるらしいな――少年」

その眼光、威圧感は常軌を逸したものがあった。
第一印象は、端的に言って怪物だ。悪の組織の怪人とも言えるか。
とはいえ、少年からすればそれも含めて、現状もっとも重要なのは、

「聖杯――あらゆる願いを叶える願望器って話だけどよ。
 具体的にはどうなんだ? どこまでの願いなら叶えられる?
 魔術を駆使してなお救われなかった女の子を助けられるのかどうか、まずはそこを教えてくれ」

自己紹介すら省いての質問攻めは、相手によっては不快に感じられたことだろう。
だが巨体のアサシンは、欠片の困惑すら見せずに答えてみせた。

「ずいぶんと焦っているように見えるな、相棒。
 まあ、おおよその理由は察せるが。魔術を持ってして救われない少女。
 起きてからの会話を見るに、さっきの修道服のNPCの元となった存在だろう。
 ――明確に可能だと断言はできんが、過去に死んだ存在すらサーヴァントとして呼び戻す力はとてつもない。
 万能の願望器というのは伊達ではないと、オレは思うがね」

「可能性は……あるわけだな」

そう思いたい、というのが正直なところかもしれない。
あの少女を自分が助けられる可能性がある、と信じたいだけかもしれない。
それでも、自分自身の手で彼女を助けられる可能性があると思えただけで。
全身が歓喜に震えていた。

「ふむ。随分とやる気のようだが、覚悟はあるかね?
 他者の願いを踏みにじり、その命を奪ってでも願いを叶える、という覚悟は」

勿論、必ず殺さねばならないということはない。
マスターとサーヴァントの片方を脱落させればいいという話である。
サーヴァントを打倒すればマスターが死ぬ、というわけではないのだし。
サーヴァントはそもそもが死者であるというのだから、願いの為なら納得できる範疇だろう。
だが、

「サーヴァント同士の戦闘は苛烈を極めるだろう。
 確実な勝利を、とはオレにも言えん。願いがあるならマスターの殺害も行う必要はある。
 そのことに関して、おまえさんはどう思うのか――聞かせてくれよ、我がマスター」

試すように、あるいは値踏みするかのように、アサシンは問いかける。

「俺はあいつを助けたい。失敗したくないんだよ、だったら答えは一つだろ」

できればサーヴァントだけを倒したい、と思う。
他のマスターを殺したくない、という感情は当然のものだ。
それでも、一度目の前でインデックスという聖女を失いかけた男は、堕ちる。
彼女との離別を経験した、いつかどこかで出会うはずだった錬金術師と同じように。

「聖杯を手に入れて、あいつを救う。必要ならなんだってやってやるさ」

少年は、口にした。



アサシン――マルスと名乗る巨漢は、マスターの値踏みを終えた。

「救いたい少女の為に、自分と他者の命すら擲つ行為。
 ――――いい物語だ。共感する者は多いだろう。
 まんざら否定されるべきことでもないぜ、我がマスターよ。
 理由を聞けば、なるほどそれなら仕方がないと、そう思う者もいるだろうよ
 ならばオレもまた、おまえの願いを叶える為に全力を尽くすとしようか」

少年の決意、覚悟、そしてその底にある迷いを見て取った。
総じて素晴らしい、と称賛するように、その想いを認めたのだ。

「まだ迷いはあるようだが、それもまた当然だろう。
 そうも簡単に決められることではないのだからな。
 ……安心しろよ、相棒。ああは言ったが、マスター殺しは必須じゃあない。
 案外、誰一人殺さずに聖杯を得られるかもしれんぞ」

あくまで万が一の場合の覚悟を確かめたまでだ、と。
そんな、思っていない言葉ばかりを並べ立てて。


アサシンは生粋のシリアルキラーだ。ただ殺したいから殺す、という感情だけで構成された殺人鬼。
だが生前彼はその動機を隠し、なにか事情があるかのようにふるまった。
時には悪徳な借金取りに天誅を下したかのように。
時には見知らぬ他人を相手に旧知の友を仕方なく殺したかのように涙を流し。
時には戦場で、人の命の輝きを守っているかのように。
そうした殺戮の果てに捕縛され、処刑され、今の身体に成り果てた。
その彼からしてみれば、少年の語る動機は、言い訳として、大義名分として申し分ない。
聖女を救わんが為に、ただ殺戮を続ければいい。

「いいマスターに出会えてオレは幸運だよ」

それは確かに、本音だった。

「ではまあ、一応聞いておくとしようか。なあ相棒、お前さんの名前は?」

「あ……わ、悪い! 上条だ、上条当麻。
 異能の力なら、原爆級の火炎の塊だろうが、戦略級の超電磁砲だろうが、神様の奇跡だって打ち消せる。
 そんな、何の役にも立たない右手を持った、普通の高校生だよ」

大仰な物言いで、令呪の宿った腕と逆の手を見せつけながら。
その力が役立たずだと言い捨てるその姿。
それもまた、らしい振る舞いではあるのだろう。
一般人であったが故か、魔力供給が僅かしか行われていないのもまた、魂喰いの伏線としては悪くはない。
総じて素晴らしい。殺人許可証を得る為の役者として、これ以上のものはないだろう。

「では行こうか、相棒。一人の少女を救う為に戦うその姿。
 オレは決して否定しない」

「……ありがとうな、アサシン」







【クラス】アサシン

【真名】マルス-No.ε

【出典作品】シルヴァリオ ヴェンデッタ

【属性】混沌・悪

【能力値】
筋力:B 耐久:B 敏捷:C 魔力:D 幸運:A 宝具:B

【クラススキル】
気配遮断:B--
サーヴァントとしての気配を断つ。完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
ただしアサシンの殺意の巨大さゆえ、僅かでも攻撃の意思を持てば、その時点で気配遮断は無効となる。

【保有スキル】
狂言回し:B
剛毅、かつ実直。独自の美学を持つ戦闘狂。あるいは使命に殉じる敬虔な使徒。
そうであるかのように見せかける技術、嘘と偽りで獲物を揺さぶる言葉の奇術師。
生前から行い続けてきた動機の偽装を可能とした話術スキル。
殺戮の動機を偽り、他者に信じさせる技能。サーヴァント化により、自身の属性の偽装が可能となった。
同ランク以上の看破系スキルを保有するか、あるいは言動の矛盾を突かなければ看破は不可能。
アサシンの場合、下記のスキルの都合上、全力を出した場合、このスキルは無効となる。

人造惑星:B
魔星。眷星神とも呼ばれる星辰奏者の完全上位種。
その正体は素体となる死体を元にオリハルコンを宿して製造された生きた死体。生前の衝動に強く引きずられる性質を有する。
自身の出力を任意に変化させることが可能であり、筋力、耐久、敏捷、魔力のパラメーターを1ランク上昇、あるいは低下させる。
上昇に応じて魔力消費が激しくなり、生前の衝動を発露させる。
アサシンの場合、ステータスを上昇させると殺人衝動が強くなり、気配遮断、及び狂言回しの効果が無効化する。
擬似的な神性としての側面も有しており、神殺しに類する宝具・スキルの効果を受ける。


【宝具】
「義なく仁なく偽りなく、死虐に殉じる戦神(ディザスター・カーネイジ)」
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
分子間結合分解能力。
物体を跡形もなく消滅させる、漆黒の波動を生み出すアサシンの星辰光。
その正体は、物体の結合力そのものを崩壊させる物質分解能力である。
銃弾から戦車砲まで、無機有機関わらず接触した森羅万象を瞬く間に崩壊させるため、傍目から見ると突然消え失せたと感じるほどの分解速度を持つ。
付属性、維持性に優れた性質を有し、闇色の星辰を長時間体躯に纏わせながらの攻防一体の戦闘法を可能としている。
全身に展開するため、同ランク以上の宝具がなければ打ち破れない。
一方で気体や非物質による攻撃には効果が薄く、風や磁力、魔力などはこの影響から外れている。

【weapon】

【人物背景】
鬼面を纏った怪物。鬼を連想させる姿をしており、アドラー第三帝国に突如出現し大虐殺を行ったという。
その暴力性に反して基本的に冷静、かつ理知的であり、高い教養が伺えるが、一転して享楽的な振る舞いを演じるなど、真意を読み取るのが非常に困難。
その本性は生まれながらのシリアルキラー。思わせぶりな言動はすべて相手を惑わせる為のものである。
そんな事情ならば仕方ない、という物語の理屈を現実に持ち込むことで連続殺人犯でありながら多数のシンパを獲得し、長年の逃亡生活の末に逮捕され、処刑台に送られた。
死後、人造惑星として蘇り、再び殺戮の限りを尽くした。
戦闘狂ぶった言葉を重ねながらも、本質的には質より量。より多くを殺すことを目的とし、目の前の強敵を倒すより、数多くの容易く殺せる相手を優先する。
身体能力の高さに反して戦闘技術は低いものの、口舌により相手を惑わせる手管は極めて高い。
一方で、その虚飾による揺さぶりが通じない相手には非常に弱い。
迷いのない精神強度を持つ英雄こそが天敵であり、戦闘における技量の低さも相まって、対サーヴァント戦は不得手と言える。
その為、自身の嘘が通じない相手を密かに毛嫌いしている

【聖杯にかける願い】
なし。あえて言うなら受肉して再び殺人を繰り返すこと。



【マスター】
上条当麻@とある魔術の禁書目録

【マスターとしての願い】
インデックスの救済

【weapon】
なし

【能力・技能】
・幻想殺し(イマジンブレイカー)
あらゆる魔術・超能力を打ち消す異能の右手。
範囲は右手のみであり、一定時間あたりに処理できる異能の種類・個数・量には限界がある。
あまりにも強大なものは打ち消すのに時間がかかり、継続的に放たれるタイプのものは本体に触れなければ完全には消滅しない。
とてつもない効果範囲を持つ場合、自身への影響を打ち消すに留まる。
また、莫大な力を連続的に放つ異能の場合、打ち消し切れず押し負ける。
また異能の力そのもの、またそこから発生する超自然現象にしか作用せず、二次的な物理現状を打ち消す効果はない。
自身の全身を対象とする異能は右手に接触していなくても打ち消すが、右手を効果範囲に含めていない場合打ち消せない。
一方で、ものによれば影響の出ている部分に触れることで打ち消すことが可能となる。
霊装や魔道書などに触れた場合、そのものを消滅させたりはしないものの、発生させる魔術効果を解除し、物体の魔術的要素を消し去る。
神の加護、祝福の類も消し去る為、上条当麻本人の『幸運』も打ち消している。
その正体は「すべての魔術師の怯えと願いが結実したもの」
魔術によって世界を歪めることの弊害が発生し、元の世界を思い出せなくなってしまうかもしれない。
しかし魔術の影響を受けないものがあれば、それを基準に元の世界を思い出すことが可能となる。
その「世界を元に戻す為の基準点」が幻想殺しの正体である


【人物背景】
学園都市に住む高校1年生。ツンツン頭をした少年。右手に生まれつき幻想殺しを有している。
路地裏の喧嘩程度の経験はあるが、相手が複数いれば逃げるしかない。
比較的低レベルの高校に通っているが、その学校でも成績は悪い。
正義感が強いものの、過去の経験からひねくれたのか自虐的な言動が多い。
インデックスとは初対面でわずかに会話した程度だが、その時点で彼女とのつながりを失いたくないが為に彼女の修道服のフードを返さずにいた。
その後、彼女を追う魔術師達と戦うことになるが、その中で彼らの真実を教えられる。
曰く、インデックスは完全記憶能力を持ち、脳内に魔導書を記録している為に1年で記憶を消さなければ死ぬ、と。
彼女の記憶が失われることを嫌い、科学によって解決できないかと行動したが、期限が数日程度であったこともあり失敗。
魔術師たちの好意により、最後の別れを行うことになった。
が、そこで聖杯戦争に招かれた。
原作ではこの後にインデックスの救済に成功するが、タイミングの関係上失敗したと認識。
失敗していた場合、人の道を外れ、他者を巻き込んででもインデックスを救おうとするような人間になっていたと原作者に語られている。
最終更新:2016年06月22日 18:27