引き金を引くたびに、少しずつ、少しずつ。心から、あるいは魂というべきものから、少しずつ汚れ、寄れ歪んでいく。
飛ばされる礫は、運動エネルギーを消費しつくすまで、行き先にあるもの、無機物だろうが、有機物だろうが、引き裂いて進む。
当然、使用者に加わる反動は相当の物だろう。その人が一本通ったどうにもできない芯によって支えられているか、
無効化できるほどの柔軟性に恵まれていなければ、反動は身体を伝わり、恐らく、大切な物を摩耗させ、最後には折損させる。
忠誠心の下、恩への奉公から、放った弾丸は結局誰一人の命も奪わずに止まった。……放たれた鉄砲玉の反動は、
大恩ある、風雨から守っていた竹林を根絶やしにし、兄弟の契りを結んだ友を窮地に追いやり、宝物のように大切な妹をは弾丸となった。
人を殺すのはとても恐ろしいことだ。周囲が伝説ともてはやしたとしても、抱いた罪悪感も、向けられる憤怒もいつまでも消えないのだ。
そして、妹は誘導的に他人に対して放たれ、幾人もの命を奪い、そのまま止まって消えてしまった。
――だから、冴島大河が、真実の記憶を自覚するのはとてもはやかった。
冴島大河、47歳。高校の教師として勤めており、強面ではあるが、その面倒見の良さと頼りがいのある人柄から生徒たちに慕われている。
私生活は心優しき妹と二人暮らしで――そんなに裕福ではないが、つつましやかに二人助け合って暮らしている。
時には、近くに住んでいる大恩ある隠居老人の下を訪れ杯を交わし合い、近所の子供たちの少年野球チームの指導を行い、
近所からの評判も上々だ。この小さくも充実した生活の中、彼は日々を過ごしているのだ。
それは、もはや、決してかなわない夢だった。幼き日の頃、あまりに過酷な現実に打ちのめされるまで夢見たことだった。
焼かれ続けていた。彼は生まれた日から、同国の常人よりも過酷で残酷な世界から、困難によって、ずっと、焼かれ、焼かれ続けている。
彼にとっての現実は、苦境と転換が繰り返しやって来るものだった。馴染んでいた生活をどうにもならない天災に変化を余儀なくされる。
けれども、またしても突然切り替えられた生活は、今までの人生を覆ってしあうほど、心地よいぬるま湯で。
その安穏とした仮想/現実は、違和感に塗れたものであり、何よりも――苦しいものだった。
「なあ、どないしたらいいんやろな……」
こじんまりとしたアパートの一室で、冴島はどっかりと胡坐をかいてちゃぶ台の前に腰をおろす。
時刻は逢魔が時、夕暮れの刻、外からは学校を終えた子供たちの和気あいあいとした声が橙色の陽光とともに部屋にやって来る。
けれども冴島の表情は、かもすれば悠然さを感じ取るだろう辺りの雰囲気とは異なり、深い皺が眦に刻まれ、苦悩が漂っていた。
彼は、箪笥の上にのっている銀の燭台を見つめる。質素な生活には不釣り合いな燭台、今の彼の苦悩の一篇を成すものである。
冴島がしばらくそうしていると、ちゃぶ台の反対側にぼんやりとした靄が集まり、そのまま像を結んでいく。
形成されたのは、冴島同様、背の高い大柄な男性、まるで気高き獅子のようなな印象を受ける人であった。
この人物こそは、この聖杯戦争において冴島に召ばれたサーヴァント――クラスはバーサーカー。
冴島に流れ込んだ聖杯の知識からは、バーサーカーとは理性なき獣のようだと伝えられ、少し狼狽した物だったが、
平素穏やかな様子から、冴島は胸をなでおろし、そして今、バーサーカーに問いただすように言葉を漏らしている。
「口が、きけんのやったな」
如何に、表面的には上品な様子でもやはりバーサーカーはバーサーカー。冴島の問いに答えてくれる素振りは見せない。
ただ、彫像のように立って、穏やかに見つめつづけるのみ。その眼に見据えられた冴島は、思考の海に沈んでいく。
突然このような場所に連れて来られて、突きつけられたのは、魔術、儀式、そして、聖杯。
冴島の人生経験からしたらまったく常識の埒外にある事柄であったが、
彼は目の前に起こったことを受け入れられないほど意固地な男ではない。何とか、葛藤の後受け入れた。
そして、受け入れた彼の前には三つの選択肢が示された。絶対に選ばなければいけない三択である。
一つは、戦争を勝ち抜き、聖杯を得ることにより、このかなわぬ生活を、よりよい生活を求める道。
一つは、聖杯戦争から脱出し、失ってきた現実と再び戦い続ける道。
そして――
全てを見て見ぬふりをし、この安らぎの中、虚数の海に沈む道。
彼は思考に沈む。取るべき道は分かっている。征かなければならない道も! しかし、しかし、
どうしても彼を惑わせるのは、妹の、靖子が生きていること、安穏とした日々を過ごしていること!
彼の思考は混迷を極める。真に選ばなければならない物は何か、捨てていかねばならないものは何か。
思い浮かんだのは――
「兄さん、」
「おう、どないかしたか、靖子」
「最近、大丈夫? 何だか調子が良くないみたいだけれど……」
「ああ、大丈夫や、すまんな、心配かけて」
「本当に、気をつけて……」
「……なあ、靖子、お前、今の生活に満足しとるか?」
「どうしたの兄さん? そんなこと聞いて」
「いや、変なこと聞いた。忘れてくれ」
「……満足してる。こんなに暖かい日々を過ごして、私は、十分に、幸せ」
「そう、か……」
(すまん、靖子、すまん……!)
選んだのは、脱出への道。思い浮かべたのは、杯を酌み交わした兄弟、死んでいった友、刻んできた罪。
誓ってきた道をたがえることなど、冴島にはできなかった。東城会を守る。果たさなければいけないのはそれなのだ。
仁義と義理を、筋を通さずにはいられない、彼の身体に、心に、魂に刻まれた、性だった。
背中に刻まれた笹と虎。模様に沿った令呪がチリリ、と疼いた。
【クラス】バーサーカー
【真名】ジャン・ヴァルジャン@レ・ミゼラブル 新井隆弘版
【ステータス】筋力B 耐久B 敏捷C 魔力D 幸運D 宝具D
【属性】
中庸・善
【クラススキル】
狂化:B
全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われるが、
後述の宝具によりバーサーカーは無軌道に暴れまわることはない。
【保有スキル】
怪力:C
一時的に筋力を増幅させる。本来ならば魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性だが、
天性の怪力により起重機とも称されたバーサーカーは例外的にこのスキルを持つ。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
人徳:B
人間としての魅力。狂化されていても感じられる彼の高い倫理観。
交渉をある程度有利にする。
仕切り直し:C
窮地から離脱する能力。
また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。
【宝具】
『銀の燭台(セルメント・ピヤンヴニュ)』
ランク:D 種別:―― レンジ:―― 最大捕捉:――
教会で祝福された銀製の燭台。
それ以外何の変哲もない品であるが、バーサーカーにとっては暗闇の人生に差し込んだ光であり
先を照らしていく灯である。ミリエル神父との約束の証であるこれがある限り、彼は与えられた光に背くようなことは
絶対にしないだろう。すべての精神汚染を無効化する。
【weapon】
素手
【人物背景】
かつてパン一つを盗み投獄されたレ・ミゼラブル(哀れな男)。出所した後、人間不信に陥り世界と神を憎み切っていたが、
ミリエル神父と出会ったことで優しさを知る。その後、マドレーヌとして市長を任ぜられるまでになるが、
娼婦フォンテーヌとの出会い、かつての罪により別人が逮捕されたことにより、正体を明らかにする。
そして、フォンテーヌとの約束のため、彼は生涯にわたって彼女の娘のコゼットを守り続けた。
【サーヴァントとしての願い】
???
【マスター】
冴島大河@龍が如く
【マスターとしての願い】
聖杯戦争からの脱出
【weapon】
素手
【能力・技能】
喧嘩の経験と人並み外れた怪力。それは配電盤を引っこ抜き、手負いの熊を素手で葬るほど。
地面を叩き衝撃を伝えることもできる。
【人物背景】
かつて、敵対組織18人を一度に葬ったとされる伝説のヒットマン。
恩のある笹井組長のために親友 真島と襲撃を実行したが、真島は妨害され加われず、直前に和平が結ばれていたことから、
襲撃の責任は笹井に振りかかり自身は死刑囚として収監された。
そののち、25年後、伝えられた情報から真実を掴むため、脱獄。そこで、襲撃時の拳銃の弾がゴム弾であり、自身は誰も殺していないこと、
妹の靖子が利用され人を殺していることを知る。その後敵からの銃撃から冴島をかばった靖子が死亡し、一度は意気消沈するも
桐生からの言伝により奮起、見事真相を明らかにした。
現在は真島とともに東城会を支えることを誓うも、罪を濯ぐため自ら傷害罪で刑務所に入っている。