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鉤生十兵衛
………――
カギューは今まで『聖杯戦争』というものを知らず、生まれてからずっと一度も参加した事がなかったが、初めて元の世界を出て電脳空間『SE.RA.PH』に連れてこられ、そこで封印されていた記憶を取り戻し、『聖杯戦争』の参加者であるマスターとなった時……
―――
それは彼女の下校の時だった
―――――――
記憶の復活と共に召喚された彼女のサーヴァントは生前、裕福な財務官僚の息子で、将来の地位と財産が保障されていた青年…………………
その男――――
どうしてか、真名は不明であった。
他の参加者たちによる魂喰いの被害に、カギューが遭っていなかったのがまだしもの救い…
召喚されたサーヴァントは、彼女と共に即座に近場の休憩所に足を運び、『聖杯戦争』に参加する主従がいくつか確認し合うべきことについて話し合おうとした…………
だ が そ れ が 近 辺 に 居 た セ イ バ ー の 気 配 探 知 に 触 れ た !
◆
近隣住民たちから憩いの場として親しまれている休憩所――その傍を通っている道で二人のサーヴァントが向かい合っている。
一人は黒い和服姿で精悍な目つきをしている、突如現れた襲撃者。
もう一人は青を基調としたタイトなスーツ、首にリボンのようなネクタイを巻いている、カギューのサーヴァント。
両者の獲物は――前者は刀、後者は西洋剣の違いがあるとは言え――どちらも『剣』であった。
カギューは己のサーヴァントから『相手はサーヴァントで、お前の攻撃が通じる相手ではないから引っ込んでいろ』と言われ、仕方なく後方に控えている。
和服の男のマスターの姿は見当たらない。近くに隠れているのか、それとも使い魔か何かで遠くからこの場を観察しているのだろう。
「ヤァヤァ我こそはせいばぁ也。貴様に恨みは無いが……我がすきる『気配探知』に引っかかったのが運の尽きじゃ」
和服のセイバーは低い声でそう言うと、カギューのサーヴァントの返事も待たずに斬りかかった。
相手に先手を取られてしまったカギューのサーヴァントは己の持つ剣で咄嗟にその攻撃を防ぐ。
と、同時に、夕方を過ぎ暗闇が支配しつつある道に火花が散った。
その後何度か、斬り合い防ぎ合う両者。
しかし、何度目かの攻防で、カギューのサーヴァントは力負けをし、剣を弾かれてしまう。
飛んでいった彼の剣は近くの地面に聖剣エクスカリバーの如く深々と刺さった。
「!?」
己のサーヴァントの危機に助けを入れようと、思わず身を乗り出すカギュー。
しかし、当の男は左手を真横に突き出し、後方の彼女を制した。
「コイツと俺は神秘によって作られた存在――サーヴァントだ……マスター、どれだけ腕っ節に自信があろうと、お前からは魔力を全然感じない……故に、その拳はコイツには届かねえ……それが……この『聖杯戦争』の流儀だ」
先程の攻防で体力を消費したのか、スーツの男は肩で息をしながらそう言う。
更に彼は『それに』と言葉を続ける。
「これは俺とコイツの一対一で行われる正統なる果し合い――『決闘』だ。それを邪魔する者は……マスター、お前であっても許さんぞ……」
そう言われ、カギューは唇を悔しそうに噛んだ後、大人しく一歩引いた。
彼の言葉に和服のセイバーは口元を僅かに歪める。
「獲物を失い、体力を消費した状態で、未だますたぁからの助勢を拒否すると言うのか。万が一、もしかすれば、その女子の攻撃手段には神秘が籠っているかも知れんのじゃぞ、すぅつのせいばぁよ。かかか」
セイバーの挑発じみた台詞。
しかし、カギューのサーヴァントは静かにこう言った。
「おい……俺のクラスがセイバーだと――いつ言った?」
さっきまで西洋剣を使って戦っていたのだから、相手は己と同じセイバーである――和服のセイバーはそう思い込んでいた。それはごく当然の分析である。
しかし、その考えは間違いだと今否定されたのだ。
彼は笑いを止め、キョトンとした顔をした。
だが、その次の瞬間には彼の顔は元の精悍なそれに戻る。
「成る程、己のくらすを隠蔽する為にわざわざ西洋剣を使っていたという訳か?……小賢しい真似じゃの、かかか。しかしのぉ、くらすも分からぬさぁゔぁんとよ。それがどうしたと言うのじゃ?」
両腕を広げて言葉を続けるセイバー。
己の勝利を確信した者の浮かべる表情が彼の顔に存在していた。
「その策で何か貴様は利を得たのか? 現に貴様は己のくらすに一致していない獲物を用いて戦った所為で、圧倒的不利に追い込まれているではないか」
この状況が、目の前の道化の姿が余りにも可笑しいとでも言うように笑い声をあげるセイバー。彼の顔には最初の精悍な表情はもう残っていなかった。
「それに剣が手から離れた今、貴様は何を使って戦うと言うのじゃ? 弓矢か? 銃か? 槍か? 戦車か?魔術か? 拳か? かかかかかかかかかかかかァーッ!」
精神が余程昂ったのか、台詞の勢いに乗って、思わずクラス不明のサーヴァントに突進するかのような勢いで斬りかかるセイバー。
それに対し、スーツの男は言う。
「当然――――」
同時に彼は腰の右にぶら下げていた銃のホルスターじみた丸い袋から拳大の物体を取り出す。
それはさながら金平糖のような形をした――一つの大きな金属製のボールに何個かの小さなそれが付いた奇妙な物であった。
その武器の名は――――
「――――「鉄球」だッ!」
――――『鉄球』。正確に言えば『壊れゆく鉄球(レッキングボール)』である。
カギューのサーヴァントは袋から取り出したそれを、流れるような、しかしそれでいて力強い動作で目の前のセイバーに向かって投擲した。
『フォン』と鉄球が風を切る音が鳴る。
そう、クラス不明であった彼の正体とは射撃兵装を持つ英霊が宛てがわれるクラス――アーチャーだったのだ。
「なっ、何ィィィイーーーーーッ!?」
突如現れた、予想だにしていない武器の出現に叫び声をあげるセイバー。しかし、勢い付いた彼の突進は今更止まらないし、横に避けることも出来ない。
ならば、と己の手に持つ刀で鉄球を迎え撃とうとする。
しかし、それが失敗だった。
鉄球に面と向かって衝突した結果、彼の刀は粉々に砕かれ、その破片を桜吹雪めいて撒き散らす。
当然だ。
この宝具は、アーチャーが祖先から受け継いだ『鉄球の技術』の具現化とも言えるものなのだから。生半可な物では迎え撃つどころか防御することすら難しい。
セイバーの刀を砕いた後も、まだまだ鉄球の勢いはそれでは止まらない。
刀の向こうにある――己の信頼していた獲物が撃ち砕かれ、大口を開けて驚いているセイバーの顔のド真ん中に深々とめり込んだ。
ドッグッシャアアア
骨が砕ける音と血や脳漿の飛び散る音が混ざった何とも醜悪(グロテスク)なそれが、セイバーの断末魔代わりに辺りに響く。
「何だか後出しで勝ったみたいだが……まぁ、そこはお前がさっき急に襲い掛かってきたのとで……イーブンだろ……」
暫くすると、霊核を完全に破壊されたセイバーの姿は光に包まれて消えて行く。
道には再び闇だけが残った。
あれだけの戦闘をした後でその場に留まって置くのはマズいと考え、カギューとアーチャーはこの世界での彼女の家に行くことにした。
「己(おれ)は何も出来なかった……」
その途中の道で、カギューはポツリと呟く。
別に彼女は何の力も持っていないという訳ではない、寧ろ南家螺旋巻拳という、廻転エネルギーを用いる特殊な格闘技術を備えた非凡な少女である。
しかし、あくまで格闘技術は格闘技術。其処に神秘性はない。
故に、彼女はサーヴァントと戦うことは出来ないのだ。
これは今まで、とある目的で強さを求めていた彼女にとってはかなりショックな事実であった。
だが、落ち込んだ様子の主に対し、アーチャーは
「つまらねぇことで落ち込みやがって、つまらねぇ女だな、お前は」
と言う。
「お前の役割はマスター――つまり、俺に魔力を供給し、指示を出すだけのものだ。実際に闘うのはサーヴァント――俺だけで良いんだぜ。寧ろ、さっきも言ったように、俺が行う『決闘』にお前が助けであれ何であれ割り込むことは絶対に許さねェー」
「け、けど……!」
今までの人生の半分以上を強さの為に捧げていた己のアイデンティティすらも揺るがしかねないアーチャーのセリフに、少女は何かを言い返そうとする。が、それに続く言葉は出ない。
しかし、アーチャーは容赦なく言う。
「お前の目的はあくまで生き残る事であって闘う事では無いだろう? 殺す事なんて以ての外だ」
「……」
「闘う相手を殺りまくるのは――俺だけで良い……」
二人の間に沈黙が流れる。
だが、暫くすると次に口を開いたのはカギューであった。
「己がこの戦いでサーヴァント? 相手に闘うことが出来ないのは分かった……」
だけど、と彼女は言葉を続ける。
「それ以外で、己が出来ること――己が闘えることはきっとあるはずだ、いや見つけてみせる! もしそれが見つかったら……」
「……ふん、良いだろう。その時は好きにしろ」
アーチャーは自分の主の諦めの悪さに呆れたような笑いを浮かべた。
◆
愛の為に戦う少女と、愛無き行い故に戦うことになった男。
二人が掴む物は勝利か、それとも――
【クラス】
アーチャー
【真名】
不明@ジョジョの奇妙な冒険 Steel Ball Run
【パラメータ】
筋力D 耐久D 敏捷C+ 魔力E 幸運E 宝具A++
【属性】
混沌・悪
【クラス別スキル】
対魔力:E
魔力への耐性。無効化は出来ず、ダメージを多少軽減する。
単独行動:E
魔力供給なしでもある程度限界していられる能力。
ただしマスター不在時には効果を発揮しない。
【固有スキル】
真名秘匿:EX
真名を隠蔽する能力。同ランク以上の『真名看破』を持つサーヴァントでない限り、このスキルを持つサーヴァントの真名を知る事は不可能。
まして、アーチャーのこのスキルのランクは規格外――EXである。仮に漫画や小説で言う『読者』のような、『世界の観測者』が居たとしても、それですら彼の真名を知る事は出来ないだろう。
回転:C+
掌にある物体に『回転』を加える技術。
『回転』やそれにより生じた振動によってあらゆる事象を引き起こす。
殴りながらヤリまくるのがいい女だったんだよ:A
女性に与えるダメージが増加する。
しかし、このスキルを発動するたびにアーチャーは世界の加護(漫画のキャラで言うところの、読者からの支持のようなもの)を失う。
【宝具】
《祖先から受け継ぐ『壊れゆく鉄球』(レッキングボール)》
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大補足:1~10
鉄球に複数の小さな球(『衛星』)が付いたもの。及び、アーチャーが生前祖先から受け継いだ『鉄球の技術』が宝具に昇華されたもの。
それを投擲すると『衛星』が高速で射出され、レンジ(1~5)内の敵を狙撃する。
『衛星』は掠るだけで相手に半身失調の効果を与える。
《場所は城壁の北西!(ポスト・デル・デュエロ・ドゥオミミ)》
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1
財務官僚の息子にして鉄球の後継者たるアーチャーの切り札。城壁の北西であり、そこで開かれた決闘の参加者であるアーチャーととある男、そして付添い人たちの『流儀』を昇華させた宝具。
かつてアーチャーが『決闘』の『付き添い人』に呼んだ者たちを召喚する。
アーチャーと彼の宝具に閉じ込められた相手は其処で『付き添い人』が見守る中、『決闘』を行う。
『決闘』は『正当なるもの』であるため、それ以前の戦闘での宝具やスキルによるステータス上昇・下降やその他特殊状態が一切ないクリーンな状態で両者は戦う事になる。
魔力供給が断たれるか、アーチャーが再起不能にならない限り、この宝具は解けない。しかし、たとえ相手がアーチャーを再起不能にしたとしても、その際相手は『付き添い人』によって聖杯戦争から『追放』される。
つまり、この宝具が発動した時点で相手はすでに『終わっていた』のだ。
なお、この宝具を発動させるためには
1)相手がアーチャーの逆鱗に触れる
2)相手がアーチャーからの『決闘』の申し出を受け入れる
3)相手がAランク以上の対魔力スキルを持っていない(持っている場合、キャンセルされるため)
の3つの条件が満たされていなくてはならず、それらを満たしていても消費魔力が著しく多いため、滅多に発動させる事は出来ない。
【weapon】
剣
鉄球(レッキングボール)×2
【サーヴァントとしての願い】
なし。
正当なる決闘を求める。
【人物背景】
ジョジョの奇妙な冒険 Steel Ball Run(以下SBR)に僅か12ページだけ出てくるモブキャラ。
ネアポリス王国の財務官僚の息子であり、鉄球の技術を有している。
名前は判明しておらず、『義弟』『ウェカピポの妹の夫』と呼ばれる。
その通称からも分かる通り、彼はSBRの登場人物・ウェカピポの義弟である。
ウェカピポの妹と結婚し、殴りながらヤリまくるというDVで彼女を失明させた彼は、ウェカピポによって法王に『婚姻無効』の許可を取られそうになった。
だが、ウェカピポのその行動が彼の逆鱗に触れたのだ。
怒った彼はウェカピポに『決闘』を申し込む――が、結果は彼の死、そしてウェカピポの国外追放でその戦いは幕を下ろしたのであった……。
【マスター】
鉤生十兵衛@ねじまきカギュー
【能力・技能】
・南家螺旋巻拳
弾性高く鍛えた体から放たれる廻転の拳。その性質からか、柔らかい肉体を持つ女性にしか体得出来ない。
彼女はそれを用いて、より威力の高いパンチ(螺旋巻発条拳)をしたり、突風を起こしたり(螺旋巻旋風掌)出来る。
【weapon】
己の肉体
【人物背景】
一人称が『己(おれ)』でズボンにパンツという男性的な格好をしているが、れっきとした女の子。
幼馴染である葱沢鴨のことが大好きで、かつてはいじめられっ子だったのだが、『大きくなったらカモを守る』という思いから中国で鍛錬を積み、強く逞しく成長する。
言動がクールだが、その実熱い心を持っており、またたまに年相応の乙女らしい可愛らしさを見せる。
【マスターとしての願い】
生きて帰る
【備考】
参戦しているのは生徒会長選挙が終わった時期からです
最終更新:2016年05月07日 02:54