1
――この世界に、冒険者と呼ばれる存在はいない。
人を襲うモンスターも居ないし、俺みたいな未成年が大っぴらに酒を飲んだら警察に注意される。
勿論、魔王なんて存在もゲームやアニメにしか存在しない。
それが日本だ。
それが俺が生まれ、16歳まで育った世界だ。
さて、そんな世界に居る今の俺、佐藤和真は。
「どうしてこうなった……」
自分の部屋で頭を抱えていた。
正確に言うなら、今自分が巻き込まれている現状をどうすべきか悩み、頭を抱えていた。
――聖杯戦争、それが今俺が巻き込まれている殺し合いらしい。
死んだ英雄をサーヴァントとして使役し、優勝者にはどんな願いでも叶える聖杯が手に入るとか。
「うさんくせー」
それが、俺の聖杯戦争に対する印象だ。
なんでも願いが叶う物を、なんでわざわざ賞品にするんだ?
大体英霊って信用できるのか? 女神ですら宴会芸と回復魔法くらいしか取り柄がないような世の中だぞ。
いやあれはあいつが特例なだけだと思いたい。少なくともエリス様は立派な女神だし。
「おい」
そんな思考を遮るかのように俺のサーヴァント、ランサーが話しかけてきた。
実の所、こいつの存在が俺に聖杯戦争を信用できなくさせる一因だったりする。
2m近い身長をした学ランを着ている男。
どう見ても一昔前のヤンキーだ。そして槍なんて持ってない。
……どこが英雄なんだよ。何だったら魔王軍の幹部やデストロイヤー倒すのに尽力した俺の方がよっぽど英雄だ。
『最弱職でヒキニートのカズマさんが英雄とか、ありえないんですけどー! プークスクス!』
いないはずのアクアにバカにされた気がした。
いや流石に英雄は言いすぎたかもしれないけど。
俺に比べてランサーの風格が歴戦の戦士っぽい感じしてるけど。
でも現代日本でモンスターとか居る世界の人間より歴戦の存在とかおかしいだろ、バトル漫画かよ。
「おい、聞いてるのか?」
「……聞いてるよランサー」
「じゃあ言わせてもらうが、お前いつまで家にいるつもりだ?」
痛い、いやあんまり痛くない所を突くランサー。
――実のところ俺は、記憶を取り戻してからほとんど外に出ていない。出たのはコンビニに行くとき位。
勿論出不精で引きこもっていたいからという個人的な事情ではない、断じて違う。
俺が記憶を取り戻したのは、ネトゲをやっている最中だった。
俺が、他のプレイヤーに「久しぶりー」と挨拶したら、他の奴らから「何言ってんだよwww」「毎日いるじゃんお前」と返された。
それがきっかけで世界の違和感に気づき記憶を取り戻した。
その後、それとなく記憶を取り戻す前の自分をネトゲで調べていると、ここでも「母親泣かせのカズマさん」「運だけのカズマさん」「いつもいるカズマさん」と呼ばれていた。
どうやら俺はここでも学校に行ってなかったらしい。
という事はだ。
「俺はこの聖杯戦争の最中はなるだけ家から出ない方がいいと思うんだよ」
「……」
俺がそう言うと、ランサーは「何言ってんだこいつ?」と言いたそうな顔をした。
「だってそうじゃん、俺が学校行ったらその時点で目立つわけじゃん。そしたら100パーマスターだと疑われるし」
「……だから、なるだけ引きこもって敵から逃げようってか?」
「そうそう、殺し合いなんて物騒なことごめんだし」
「……」
何とか俺はランサーを説き伏せた。
心なしか睨まれてるような気もするが、気のせいだろう。
……殴ったりしないよね?
するとランサーがいきなり。
「……てめえの性根を叩きなおしてやろうと思ったが、その必要は無さそうだぜ」
「どういう事だよ?」
「敵が来た」
その言葉と同時に、窓から矢が俺の部屋に飛んできた。
2
矢が撃ち込まれたと同時にランサーが俺を抱え、家の前に飛び出すとそこには弓を持った男と近所の高校の制服を着た女子が居た。
アーチャーとそのマスターだろう。どちらも殺気立った目で俺達を見ている気がする。
とりあえずここは自分の家の前だ。こんな所で戦闘なんてするわけにはいかない。
「ランサー、とりあえず場所を変えてくれ!」
「ああ」
俺の指示に素直に従ってくれるランサー。
もしこの場で戦い始めたら、今家にいる母親に確実に気づかれるだろう。
そしたらこの状況がどういう物か説明しなくちゃいけなくなる、そしてそれをうまくごまかす方法なんて俺には思いつかない。
だけど場所を変えてこいつらをどうにかした後、何食わぬ顔で帰れば知らない間にタチの悪い悪戯に会ったで済む。
かなり苦しいがこれでごり押そう。
これが普段のパーティーなら1から説明しなきゃいけないんだろうなぁ……。
何か悲しくなってきた。
「アーチャー、攻撃しなさい!」
「はっ!」
そんな事を考えていたら、アーチャーが再び攻撃を仕掛けてきた。
「『ウインドブレス』!」
その攻撃を俺が魔法で防ぐ。
マスターの俺が防いだことに驚いたのか、攻撃が少しの間止まる。
その隙を見て、実はポケットに入れて置いたスマホを出し、地図アプリを起動しランサーに渡す。
「ランサー、地図出したから人気の無さそうなところに向かえ!!」
ランサーは地図を見ながら、俺の指示に従ってくれた。
そして辿り着いたのは、俺の要望通り人気のない場所だった。
道順はランサー任せで、この町に土地勘の無い俺はここが何処か正確な場所は分からない。
「何とか凌いでいたようだけど、流石にもう終わりかしら?」
「さあな」
実際、結構な数をしのいできたので魔力はギリギリである。
だがそれを悟られるわけにはいかないので、俺は必死にポーカーフェイスをする。
「それにしても驚いたわ、ただの一般人かと思ったけどまさか魔術師だったなんて」
「魔術師?」
俺は魔法使い専業という訳じゃないんだが……。
「魔術師を知らない? なら生まれつきの異能者かしら」
「好きに考えてくれ」
アーチャーのマスターが何を言ってるのかよく分からないので、適当に合わせる俺。
するとランサーから念話がくる。
(マスター)
(何だ?)
(はっきり言って俺はアーチャーと相性が悪い)
え?
(俺は2m位の近距離なら攻撃できるが、遠距離攻撃には乏しい)
(何か距離詰める方法無いのかよ!?)
(ある程度まで詰められるが、魔力がギリギリの今やると多分てめえはぶっ倒れる)
(駄目じゃねえか!)
(だから、このスマホって奴投げるぞ)
(やめて! 俺が何とか気を引くからやめて!)
それは重要なアイテムだから! と説得しやめさせる俺。
とりあえず自分が射程に入れるようになったら、俺を魔力消費でぶっ倒してもいいからとランサーに伝える。
だが気を引くと言ったはいいが一体どうやって……。
すると相手マスターが。
「でも大した力は無いわね。こういう実戦だと攻撃に使いようがなさそうだし」
「……」
実際直接攻撃には使えないので反論は出来ない。
「まあ一般人相手なら十分じゃない? 苦労知らずで生きていたんでしょ。
でも私は違うわ! 魔術師の家に生まれ魔術師としての研鑚を積んできたのよ!
どーせヘラヘラ生きてたであろうあんたとは違うのよ!!」
「今なんつった?」
こいつは言ってはならない事を言った。
俺の雰囲気が変わった事を感じたのか、相手マスターは俺に引きながらも返答してきた。
「……い、いやヘラヘラ生きてたんでしょって」
「ヘラヘラ生きてたってのはまあ否定しねえよ、実際1年ほど前までは引きこもりでネトゲばっかやってたしな! だけどお前その前なんつった!?」
「そ、その前? 苦労知らずとか私は研鑚を積んできたとか……」
「研鑚? 研鑚を積んできたってか!? ならその魔術師の研鑚とやらにはトラクターに轢かれそうになってショック死することも入ってんのか!?」
「はぁ!?」
今気づいたが、どうやらこいつは俺の初級魔法を生まれつき持ってるものだと思っているらしい。
確かに死んで異世界に転生なんてことが現実に起きるなんて思う奴はいないだろうし、こいつも思ってなかったみたいだ。
それをどうこう言う気はない、だが。
「魔王軍の幹部で低レベルで戦うはめになることは!? 馬小屋で寝てまつ毛凍ることは!?」
「え? いやちょっ」
「4000万の借金背負ったことは!? 自分のせいじゃないのに国家反逆罪にされて死刑って言われた事あんのか!?」
「あ、ありません……」
「それなのに苦労知らずとか言ったのかてめええええええ!!」
「ご、ごめんなさい……」
相手マスターが俺の剣幕を恐れたのか謝って来た。
そこで俺は相手が隙だらけだと気づく。
「『スティール』ッ!」
そこで俺は思わずスティールを炸裂させた。
ところで俺は今までに2回、女の子にこれを使っている。
1回目に使った時、盗んだのは真っ白なぱんつだった。
2回目に使った時、盗んだのはやはりぱんつだった。
そして3回目、盗んだのは。
「しまぱんか……」
「な、何で!?」
俺はまたしてもぱんつを盗んでいた。
だがこれで、俺の目的は達成される。
「これとさっきこっそり撮ったお前の顔写真を添えて、お前が通っている高校の目立つところにおいてやる!!」
「何考えてんのコイツ!?」
「これでお前は聖杯戦争どころじゃなくなるな!」
「アーチャーコイツ殺して! ランサーなんて後でいいから!!」
その言葉が聞こえた瞬間、俺はアーチャーのマスターが盾になるような位置に移動する。
ランサーと戦いながらそんな指示を受けたアーチャーは、慌てて俺の方に注意を向けるも自分のマスターが盾になっていることに少しの間動揺する。
その隙をランサーは見逃さず、アーチャーとの距離を詰める。
そしてある程度近づいた瞬間。
「スタープラチナ・ザ・ワールド!」
と叫んだと思ったらいつの間にかアーチャーのすぐそばにまで近づいていた。
そして俺は魔力消費の影響でぶっ倒れていた。
……めぐみんもいつもこんな感じなんだろうか?
そしてランサーは、人型の何かを出し。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
拳の連打を決めていた。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ、オラァ!」
そして殴り終え、アーチャーはノーバウンドで壁まで飛ばされ、激突したと同時に消滅した。
3
その後、魔力消費で倒れていた俺からぱんつを取り返したアーチャーのマスターは、「覚えてなさい!」と一言捨て台詞を吐いて去って行った。
そして俺は今。
「……」
自分のサーヴァントに睨まれていた。
「何で睨むんだよ」
「……てめえさっき気になる事を言ってただろ。借金がどうとか……」
「聖杯で何とかしたいと思わないのかって言いたいのか?」
「ああ」
そりゃ何とかできるのなら何とかしたい。
あの時のコロナタイトが領主の屋敷じゃなくどこか人のいない場所に変えられるって言うなら変えたい。
「でも俺は殺し合いなんて嫌だ。こんな物騒なことはごめんだ」
「……」
「それよりも頼みがある」
「何だ」
「分かってると思うけど動けないんだ、家まで運んでくれ」
俺のちょっと情けない頼みにランサーは小さくこう呟いた。
「……やれやれだぜ」
【クラス】
ランサー
【真名】
空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険
【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷C 魔力D 幸運A 宝具A
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力:C
Cランクでは、魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
【保有スキル】
黄金の精神:A
「正義」の輝きの中にある精神。人間賛歌を謳う勇気と覚悟の心である。
勇猛、戦闘続行を兼ね備えた特殊スキル。
心眼(偽) :B
直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。
視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。
【宝具】
『星の白金(スタープラチナ・ザ・ワールド)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1-2 最大補足:1
傍に立つというところから、スタンドと呼ばれる人型の超能力の像。
桁外れのパワー、スピード、精密動作性、視力、動体視力を持つ。
基本的な攻撃は拳の連打だが、人差し指と中指を伸ばして敵を切り裂くという事も出来る。
そして、時を5秒だけだが止める事が出来る。
スタンドのスピードが光を超える事によりこの世の時間を止める事が出来る。
【weapon】
スタンド『星の白金』
【人物背景】
「ジョジョの奇妙な冒険」第3部「スターダストクルセイダース」の主人公。
学帽と長ランに付いた金属の鎖、二本のベルト、両耳に付けた丸ピアス、ひと房だけ垂れ下がった前髪がトレードマーク。
頭脳明晰で冷静沈着。寡黙だが熱い正義感を持ち、悪党に対しては怒りを感じる。
また、自身も認めるほどの執念深さを持つ。
だがその一方で、素行は結構悪く犯罪行為を堂々とやらかしていたことも。
【サーヴァントとしての願い】
マスターを守る。
殺し合いには乗らない。
【マスター】
佐藤和真@この素晴らしい世界に祝福を!
【マスターとしての願い】
借金と国家反逆罪をなんとかしたい。
【weapon】
なし。(片手剣は元の世界においてきてしまった)
【能力・技能】
・冒険者
カズマが就いている職業。
基本職で最弱ではあるものの、全ての職業のスキルが覚えられる。
・スキル
カズマが他の冒険者から学んだスキル。
敵の気配を察知する「敵感知」
自身の気配を消す「潜伏」
暗闇でも目が効く「千里眼」
相手の持ち物をランダムで奪う「スティール」
相手に触れ発動すると魔力を奪う「ドレインタッチ」
それに罠発見と罠解除、後は弓と狙撃。
最後に、攻撃には使えない初級魔法がカズマの使えるスキルである。
・幸運
冒険者には必要ないが、非常に高い。
生涯でじゃんけん負けなしレベル。
・悪知恵
カズマの強さ。
彼はこれと幸運の高さを駆使して弱いスキルで戦っている。
【人物背景】
アクセルの街で活動する冒険者。
元々は現代日本で暮らしていた引きこもりだったが、トラクターに轢かれそうになったことでショック死しファンタジー世界に転生した。
頑張る時は頑張るが、頑張る必要がなくなるととことんだらけるタイプの男。
【方針】
脱出優先。
聖杯は手に入るなら欲しいけど優先順位は低め。
【備考】
参戦時期は3巻の第一章終了後です。
与えられた役割は高校生ですが、NPC時代から引きこもっていました。
最終更新:2016年05月07日 03:00