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穏やかな午後。空いた時間にマンションの自室の掃除を終えた菜々は紅茶を入れて、一息つく。
市販のティーバッグで淹れたものだが、口当たりもさっぱりしていて、甘さがしつこくない。
身体の芯が温まるのを覚えながら、菜々は午後のワイドショーをぼんやりと眺める。

菜々は原因不明の焦りに苛まれながら日々を過ごしていたが、メイド喫茶で給仕をしている最中、全ての記憶が戻った。
そして傍らにいたプロデューサーと所属事務所の痕跡を探し求めて、遂に見つからなかった時、自分は夢でも見ていたのかと呆然と立ち尽くした。
街並みにも違和感を覚えた彼女だったが、ほかに取るべき手段も思いつかず、肩を落として帰路についた。

――時計の針は巻き戻り、姫は再び灰に塗れる。

人殺しに加担するのは辛い。しかし、念願のアイドルデビューが叶った今ここで死ぬことだけは絶対に嫌。
そして、脱出ルートを見つけられるほどの時間も才覚も菜々は持ち合わせていない。だから普通の少女として、聖杯戦争に乗った。

「ただいま」

鍛えた鉄の様な力強さと、若葉の瑞々しさが同居する、女性の声が玄関先から響く。
足音と共に目鼻立ちのはっきりした、長い黒髪の少女がリビングに姿を現した。名前を『アリス・リデル』と言い、その来歴を聞かされた時は、菜々も思わず息を呑んだ。
ただ、菜々が知る少女より10は齢を重ねており、その顔から幼さは微塵も感じられない。透明感のあるエメラルドの瞳は雌豹を思わせる。
青のドレスを身体の一部のように着こなしていたが、白いエプロンが赤い液体で所々汚れており、一般に知られるイメージとは異なる物騒な雰囲気を醸し出していた。

アリスは険のある眼差しをこちらに向けているが機嫌が悪いわけではなく、素でこの表情なのだ。

「おかえりなさい、アーチャーさん!」

菜々はTVの画面を消すと椅子から立ち上がり、小走りでアリスに近づく。菜々が小柄な事もあって、見上げなければ顔が見えない。

「…あの、戦いは…」

恐る恐る菜々は尋ねた。一度聞いた説明を再度お願いする時にはこんな気まずさがある。

「もちろん、殺してきたわ」

使いを済ませたような調子でアリスは言った。組まれた腕に手傷を負っていたが、気にしてはいないようだ。

「……そうですか」

喉から絞り出すような声が漏れる。
普段キャラで売っている菜々だが、臆面もなく言われては、流石に素に戻ってしまう。

アリスは菜々に好意的だが何度言っても敵サーヴァントをマスターもろとも殺害してくるのが、目下の頭痛の種だった。
頭に入っているルールだと、マスターは死ななくても良かったはずだが。

「…あの、ケーキを買ってきたのでお茶にしませんか?」

菜々は明るい表情を作り、話題を変える。

「いいわよ。でも、2人きりだと何だか寂しいわね」

アリスが応じると菜々は台所に立って紅茶を用意し、アリスも食器を取り出す。まもなく細やかなお茶会が始まった。
カップに注がれた琥珀色の液体からは爽やかな香りが漂い、その傍のソーサーには、御茶請けとしてケーキが1個置かれている。
菜々は紅茶に関しては素人の域を出ないが、自身の味覚を信じるなら、悪い品ではない。ケーキも駅前でオープンしている、それなりに値の張る店のものだ。

問題はアリスが19世紀のイギリス人――つまり本場の出身であること。彼女の口に合うだろうか?

「おいしいですか?」

カップを口元に運んだアリスを見る菜々の背に、蛞蝓の這うような感覚が忍び寄ってきた。
ちゃんと茶葉から淹れた紅茶を出した方が良かったかもしれない。

「うん、悪くはないわね」

評価は辛口だが、アリスの顔色に変化はない。

「…そうですか」

菜々は笑顔のままだったが、椅子の上でしょんぼりと背中を丸めた。

「それより、ナナはまだ決心が固まらないの?」

アリスはチーズケーキをフォークで切り分けて、口に運ぶ。

「ナナは―」

「―道に迷ってしまいそうな時は誰かに尋ねるといい。ウサギが少しは知っているし、俺も風見なんかなくたってどっちに風が吹いているかすぐにわかる」

黒樫を思わせる、非常に低い男性の声が室内に響いた。菜々が声の方に顔を向けると、いつのまにかTVの前にいた痩せぎすな猫がこちらをみている。
骨の浮き出た身体の上で口を裂けそうなほど開き、小馬鹿にしたような笑みを浮かべている。

「わっ!ここ、ペット禁止ですよ!」

菜々の身体はピクリと跳ね、思わずカップから紅茶を零しそうになった。

「ペットじゃないわ。チェシャ猫よ」

素知らぬ風でアリスは紅茶を口に運ぶ。チェシャ猫は言いたいだけ言うと、液晶の前で掻き消えるように見えなくなった。
菜々は真っ黒な液晶画面をちょっとのあいだ見つめていたが、やがてアリスの方に姿勢を戻し、お茶会の続きを楽しんだ。


☆

―燃えていると言ってみんなが罵る、まるで私が悪者であるかのように わたしはみんなを心の中からきれいさっぱり片付ける、剣にものを言わせて―











【クラス】アーチャー

【出典】アリス・イン・ナイトメア

【性別】女

【真名】アリス・リデル

【パラメータ】筋力C 耐久D 敏捷B 魔力A 幸運E 宝具A+

【属性】中立・悪

【クラス別スキル】

対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
アーチャーは不思議な薬やケーキ、キノコを飲食したことで身体が大きくなったり、小さくなったりしたが問題なく旅を続けた。

単独行動:A
 マスター不在でも行動できる。ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。
アーチャーの冒険は、一貫した同行者や協力者のいない一人旅であった。

【固有スキル】

精神汚染:EX
精神が狂っている為、他の精神干渉系魔術を完全にシャットアウトする。更に固有結界を生み出すほどの狂気を孕んでいるため、
アーチャーとコミュニケーションを取り続けた場合、低ランクの精神汚染を獲得することがある。
普通に意思疎通が可能だが、如何なる言葉も行動もアーチャーに影響を与えることが出来ない。


勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
夢の中のアーチャーは、断固とした行動力を備える勇者の如き人物である。


【宝具】

『いざ、三度目の冒険へ(アリス・イン・ナイトメア)』ランク:A+ 種別:対軍宝具(対人宝具) レンジ:1~99 最大捕捉:1000人(自身含む)

三度目に歩いた恐怖と流血の世界を再現する固有結界。結界内は凄まじい広さを誇り、毒の水が溜まる鉱山、菌糸類の森、石像の少女が流した涙の池、白い城郭などを銃剣で武装した巨大なアリや生肉を引き裂いて食べる花、肉食魚やトランプの兵隊達がうろついている。
また「帽子屋」や「ジャバウォック」といったおなじみのキャラクターが疑似サーヴァントとして現界しており、結界内に侵入した敵に襲い掛かる。
……副次効果として、この宝具は保有するアーチャーに三騎士としての戦闘力を与えている。本来のアーチャーは重い精神障害を患っている少女でしかない。


『汚れた夢の玩具箱(ナーサリーライム・マッドネス)』ランク:D~B 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:300人

三度目の冒険で振るった武器を一種類、出現させて装備する。装備を変更する度に魔力が消費されるほか、 ナイフ・クロッケーの木槌以外の武器は使用する度に相応の魔力が減っていく。
キャスタークラスの場合は「不思議な時計」、「怒りの箱」、「グラスホッパーティー」、「暗き手鏡」が使用可能な装備に追加される。

【Weapon】
ナイフ:使い勝手のいい大振りのナイフ。

トランプ:追尾機能を持つ52枚のトランプ。

クロッケーの木槌:球技用の木槌。追加で魔力を消費することでボールを生成、敵に向かって打つことが出来る。

びっくり箱ボム:投げると爆発するびっくり箱。有効範囲が広い。

アイスワンド:冷気を噴射する杖。敵を氷漬けにできるが魔力消費量は多め。

ジャック:投げて遊ぶ遊戯用の玩具。壁や天井を跳ね回って、敵を攻撃する。

悪魔のサイコロ:投げると悪魔が召喚され、味方として戦ってくれるサイコロ。敵がいない場面で使うと逆に襲われる。

ジャバウォックの目玉の杖:ビームを発射する杖。高火力だが燃費は悪い。

らっぱ銃:らっぱを模した銃。破壊力抜群だが、一度使うとステータスが半減するほどの魔力を消費する。


【人物背景】
世界一有名な夢物語「不思議の国のアリス」、「鏡の国のアリス」の主人公……の、ありえたかもしれないその後。

2度の冒険を終えたのち、原因不明の火災により自宅が全焼。同時に両親を失ってしまう。
家と両親を同時に失ったショックにより、心を深く閉ざした彼女はラトレッジ精神病院で10年の月日を過ごす。

薄暗い病室でひとり、ウサギの人形を手に眠り続ける日々を過ごしていたが、ある日、持っていたウサギの人形に助けを求められ、再び不思議の国に出発する。
……舞い戻った不思議の国は腐敗したキノコの森や帽子屋の実験場など、かつての美しい景色とは似ても似つかない狂気めいた悪夢の世界であった。
暴力と流血に彩られながら、アリスは混沌と化した世界で三度目の冒険に挑み、これを乗り越えた。



【聖杯にかける願い】
この冒険(聖杯戦争)を制覇する。


【マスター名】安部菜々
【出典】アイドルマスターシンデレラガールズ
【性別】女

【Weapon】
なし。

【能力・技能】

「ウサミン星」

母星。菜々の容姿から察するに、ウサミン星人は地球人と大差ない容姿をしているらしい。
彼女は電車で一時間かけて、地球にやってきて"歌って踊れる声優アイドル"になるべく、活動を続けている。

【ロール】
メイドカフェの店員。

【人物背景】

ウサミン星出身、永遠の17歳を公言するキュートタイプのアイドル。
146cmと低身長だが3サイズは84-57-84と、中々グラマー。電波路線で売り出しているが、設定を練り込んでおらず、加えてアドリブに弱いため、しばしばボロが出る。
ウサミン星との交信を趣味としており、しばしば謎の電波を受信している。個性的な言動をする人物だが、性格は明るく素直で頑張り屋。


【聖杯にかける願い】
脱出の為なら殺し合いもやむなし。
最終更新:2016年05月27日 05:12