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夜更けの公園を、男女の2人連れが手に手を取って歩いている。
行く手には園内に設置された公衆トイレが存在しており、内部を照らす電灯の光を周囲に吐きだして、ぼんやりと佇んでいる。
闇の中に白っぽく浮かぶ姿は幽霊屋敷の様だ。誰ともすれ違うことなく、2人は公衆トイレに入り込む。


便所内は良く手入れされており、タイル張りの床や壁に目立った汚れはない。
しかし、経過した年月を洗い流すことは叶わず、全体的にくすんだ印象がある。また、落しきれなかったアンモニア臭や脂っぽい汗の匂いがミックスされ、雑巾のような臭いが全体に立ち込めている。
疑念を抑えきれない男が眉を顰めると、気付いたように振り返り、女が笑い掛けた。

「……あぁ、かおりちゃん?ほんとに……ここで…?」

かおり、と呼ばれた女はサポ希望…援助交際を求めている旨を掲示板に書き込み、返信の中からもっとも真面そうな相手に連絡を着けた。
二人は会う日時や待ち合わせ場所などを決めて、今日一日限りの恋人となった。

選ばれた男は平凡な顔立ちをしていたが、夜道を歩いている間も襲い掛かるようなことはなく、あくまで紳士的な態度を崩さない。
身嗜みにも気を遣っている事が窺え、かおりが躊躇いなく手を握る事が出来る清潔感の持ち主だ。

「ハイ♡……あの、マズかったですか…?」

かおりは申し訳なさそうに上目で男を見ている。視線を受けた男の均衡が崩れて思わず彼女から顔を逸らし、かおりの言を歯切れ悪く否定した。
屈託なく笑うと、かおりは先導するように歩き、ある個室の前で立ち止まる。わずかなスペースにするりと身を滑らせると、男に入ってくるよう目線で促す。
雑踏は遠く、周囲に2人以外の気配はしない。

「……」

唾を飲み込んだ男がぎこちない足取りで個室に入ると、かおりの退路が断たれた。
かおりが扉を閉めるよう促すと、男は気づいたように背中を向ける。

―!

背後から、かおりの腕が首に回される。細い腕の冷たさにぎょっとした男が声を上げる間も無く、首筋に注射針のような物が突き立てられた。
ちくりと痛みが走ったが、直後に酔いが回った様な陶然とした心地よさが身体を支配する。振り解こうとする前に力が抜けていく。
徐々に見ている景色が現実感を失っていき、絡まった腕の冷たさ、押し当てられた乳房の柔らかさ、首筋に接した唇の感触が男の知覚する全てになる。
やがて男はだらしなく口を開けたまま、個室の床に座り込まされた。

☆

「いい、あなたは私と会ってない。私のことは全部忘れるの」

かおりと名乗った女、清水恵は短く言った。男は小さく頷く。

「あなたは街でお酒を飲んで、酔っぱらった。次に気が付いたらここにいた」

恵の言に聞き入っている男の表情は虚ろだ。目を床に向けているが焦点はあっていない。だらしなく開いた口元には唾液が溜まっている。

「かおりって女の子が電話するから、その時はかおりの言う事を必ず聞いて」

頽れた男は瞬き、そして億劫そうに頷いた。
それを見た恵は安心した様子で絡めた腕を解き、脇目も振らずに公衆トイレから走り去る。
その間、男は出ていく恵には気づかず、タイル模様の一点に視線を向けていた。


≪バーサーカー?霊体化してこっちに来て≫

宛がわれたサーヴァントに念話を飛ばしつつ、恵は遊歩道を無視して公園を突っ切る。
近くのオフィスビルの前まで走り、公園が見えなくなったことを確認して速度を緩めた。

恵はいま、それなりに上手くやっている。忌まわしい村―狩人が待ち構えている―から抜け出し憧れの都会にやってこれた。
口煩い母親もいない、堅苦しい父親もいないマンションで悠々自適の一人暮らし。

両親―おそらくNPC―に学費と家賃を立て替えてもらいながら、人間のような顔で定時制学校に通っている。
バイトの収入で贅沢は出来ないが、当面の暮らしには困らない。
思わず笑いが漏れる。恵としては、ここでずっと暮らしていても良かったのだが、そうはいかないらしい。

「■■■■――――」

唸り声と共に怪物が姿を現す。全身を緑色の装甲で覆った異形の人型が、怒りを湛える赤い眼で恵を見据えている。
恵が陰となっており、通行人からその姿は見えない。

「マスターはいた?」

戦わねばならないなら、戦って生き残ってやろう。
なんでも願いを叶えてもらえるなら、都会の暮らしを望む。村に囚われていた分、年頃の女の子の楽しみを目一杯満喫するのだ。
だが、優勝しても村に帰らなくていいのなら……。

(……結城君)

下らないあの村で唯一下らなくない存在であった、愛しいあの人を蘇生させよう。
華の大都会で二人きりの生活…。聖杯戦争に勝利した後の生活を思い描き、恵は胸を弾ませる。

「■■■■」

バーサーカーは調子の変わらない唸り声を上げた。水を差される思いがした恵は眉間に皺を寄せる。

「あんた、喋れたらよかったんだけどね」

溜息をついた恵の鼻が異臭をとらえた。バーサーカーから距離を取り、二の腕をゆっくり顔に近づけると……臭い。
先刻まで居た公衆トイレの匂いが、身体や衣服に染みついてしまったらしい。

戦慄に襲われた恵はバーサーカーに霊体化するよう指示を飛ばすと、自宅に向かって駆け出した。
まだ夜明けまでだいぶ時間があったし、村と違って都会には遊ぶ場所がたくさんある。
今から寝に入るのはもったいない。

(誰にも会いませんように!!)

便所の匂いが染みついた今の自分は人に見られたくない。特にこちらで出来た友人達には。
祈るような気持ちで、恵は自宅を目指す。





☆

小汚いトイレの個室内で、男は我に返った。立ち上がると目眩がして、思わず座り込んだ。
朦朧としていた最中に何かあった様な気がして、男は自分の身に起こったことを整理する。

(…たしか、)

俺は飲みに繰り出していたのだ。酔って…それで……そこで記憶が途切れている。
まさか泥酔した挙句、こんなところで寝るなんてな。男から自嘲の笑みが漏れた。

誰と飲みに行ったのか、どこの店で飲んでいたのか、どんなルートでここまで来たのか、という疑問が男の思考に引っかかる事はない。
欠伸を一つすると、男は頼りない足取りで家路についた。




【クラス】バーサーカー

【真名】葦原涼

【出典作品】仮面ライダーアギト

【ステータス】筋力A 耐久B+ 敏捷A 魔力C 幸運D 宝具A


【属性】
中立・狂

【クラススキル】
狂化:B
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。


【保有スキル】
戦闘続行:A
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
生存能力というより、宝具によってもたらされる生命力・再生力。

単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

勇猛:-(C)
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
ただし狂化によって効果が発揮されていない。

【宝具】
『忌むべき光の子(ギルス)』ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
仮面ライダーギルスに変身する。身体能力が上昇するほか、腕から出現する金色の刃、腕から出現する触手、踵から伸びる刃、口腔部の牙によって敵を攻撃できる。クラス補正によって常時発動している。

「光の力」を受けた人間が進化した姿「アギト」の不完全体、あるいは変異体と思われる異形の戦士。
アギトには耐久力で劣るが、再生力・筋力・俊敏性において勝る。ワイズマンモノリスというパワー制御器官を持たず、アギトと違い変身中はパワーを制御できていない。
そのため生前、変身する度に極度の負担が肉体に掛かり、変身解除後には後遺症として老化現象・幻聴が葦原を襲った。


【weapon】
変身中に生成できる殺傷部位。


【人物背景】
城北大学水泳部に所属する学生。水泳選手として、将来を有望視されていた。バイク事故を機に不完全な変身能力に覚醒、アギトの変異体・ギルスに変身できるようになってしまう。
能力と変身後の老化現象が原因で水泳部のコーチや恋人から敬遠され、大学を自主退学。夢を諦めて孤独な日々を過ごす。

アンノウンと戦う日々の中で、アギト・翔一と邂逅。似通った境遇から共闘するようになる。
幾度となく死線を潜り、関わった人々との悲しい別れを経験しながらも、逃げることなく戦い続けた彼は全てが終わった後に「普通の生活」を手にすることが出来た。


【聖杯にかける願い】

?



【マスター名】清水恵
【出典】屍鬼
【性別】女

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「屍鬼」

死亡した人間が蘇生することで誕生する、血を吸う怪物。
外見は人間と同様だが血液以外は死亡直後の状態であり、人間の生き血のみを生存に必要とする。
規格外の治癒力を持ち、夜目が利き、老化しない事に加えて血を吸った相手に暗示を掛けることが出来る。

ただし、日中は強制的に眠りに落ちる、日光に当たると皮膚が焼け爛れる、十字架や光背など呪物を恐怖する、招かれなければ他人の管理する建物に侵入できないといった弱点を抱えており、人間を超越した存在とは呼び難い。



【ロール】
夜間定時制学校に通う、夜勤のウェイトレス。

【人物背景】
溝辺町外場、通称「外場村」に暮らす高校1年生。

生まれ育った村での生活を嫌っており、都会から来た転校生・結城夏野に対して一方的な好意を抱く。
都会に対して強い憧れを抱き、夏野と同じく都会の学校に進学することを希望するが、口先だけで村から出ることはない…と夏野からは見られている。

村の者を見下している一方、村外からやってきた桐敷家に対しては強い関心を寄せる。
実は桐敷家は人ならざる屍鬼の集団であり、屋敷に招かれたところを襲撃され、外場村の住人のなかで最初期に起き上がった。
復活した後は嫉妬心から夏野と共闘していた幼馴染・田中かおりの父親、夏野と親しい武藤徹を襲撃する。

起き上がった事実を受け容れており、人間を躊躇なく襲うが桐敷家からの扱いに不満があるため、叶うなら今からでも人間に戻りたいと願っていた。
屍鬼の存在が村人に発覚した後から参戦。

【備考】
NPCを一人、暗示にかけました。
襲撃が重なれば、操り人形の様になって最終的に死亡します。襲撃が止めば、いずれ正常に回復します。

【聖杯にかける願い】
都会に行く。村に帰らなくても良いなら、結城夏野の蘇生を願う
最終更新:2016年05月31日 14:44