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「おかえり、マスター」

夕方、アルバイト先から帰宅した海堂を出迎える声があった。
視線を向けるとダイニングキッチンに男が立っており、穏やかな笑顔をこちらに向けている。
痩身だが頼りない印象はなく、黒衣の神父服に包まれた肉体には男らしい線が浮かぶ。

「おう、…ただいま」

海堂はおどけた調子で答える。在りし日の友人と目の前の神父が重なった。

「食事は用意してある。冷蔵庫に棒棒鶏を作り置いておいたから、良かったら……」

気忙しい様子で神父は話し始める。神父が指差すと海堂は軽やかな足取りで冷蔵庫に向かった。
冷蔵庫の扉を開けると、大皿に盛られた棒棒鶏が一角を占領しており、丁寧にラップがかけられている。

「おっおっおっ……旨そうじゃ~ん。流石は俺様のサーヴァント」

宝物を発見した海賊の身振りでアサシンを労った。
彼の清廉な雰囲気と纏った黒衣からは生活感を感じられないのだが、いつも専業主夫の真似ばかりしている。
それが海堂にちぐはぐな印象を与える。

「ハハッ、喜んでもらえたなら何よりだ」

「行くんか、アサシン」

感情の籠らない口調。この神父は召喚されてからずっとこうだった。
日中は部屋の留守を守り、海堂が帰ると入れ違いになるように出ていく。
外で何をしているのかは海堂も理解している。

「…あぁ、出掛けてくるよ。何かあったら…」

気まずさを滲ませつつ、アサシンは柔和な笑みを海堂に向ける。

「分かってるって。ちゅーか何度も言うんじゃねぇ」

冗談めかして言葉を遮る海堂はビシッとポーズを決め、右手を掲げた。グローブの隙間から令呪が覗く。

「ごめん、ごめん。それじゃ」

アサシンは静かに部屋を出て行った。


☆


市内にある広告事務所。90名の社員を抱える制作会社はキャスターの手によって、魔術師の陣地に作り変えられていた。
この会社に働いていたスタッフは陣地構築のための燃料にされており、使い魔の獣人が代役となって種々様々な業務をこなす。
元は社長室であった工房で作業に没頭するキャスターは不意に顔を上げ、部屋中に視線を走らせた。

――魔力炉にヒビが走った。

正確には魔力炉の核…絡み合う軟体生物の触手めいたチューブの隙間を通り抜けたらしく、鈍く光るエッジが核に突き刺さっている。
完全には破壊されていないが魔力生産量は大きく低下した。
魔力炉の修復には少なくない時間を要する事を察した壮年のキャスターは眉間に皺を寄せて、エッジが飛来した方向に視線を向ける。
一方、同室していたキャスターのマスターは社会において財を成した一廉の男であったが、同時に神秘に対して免疫を持たない一般人であった。ゆえに。


「ひぃッ……!?」

熊の如き体躯と厳つい顔からは想像できない、狼狽えた声だ。

『まるでこの世は荒れ果てた庭。下劣だけが、我が物顔で蔓延っている』

墓場の静謐さと虚無を孕む声が工房に響いた。工房の一角にできた闇の中に髑髏が浮かぶ。
キャスターは鋭く目を細め、マスターの男は落ち着きなく視線を泳がせる。

「アサシンか…」

短く、マスターに聞かせるように言った。

「う、こ、……ここは任せた!!」

キャスターのマスターはアサシンを視野から外さないよう、横伝いに動く。
出口が近づくと二人に背を向けて脱兎のごとく駆けだした。

『なんと不埒で、情けない人間か』

アサシンは敵マスターに一瞥もくれない。

「切る手間が省けたとでも思うさ」

置き去りにされたキャスターはマスターが逃げた方に向かって小さく顎をしゃくると、顔に刻まれた年輪を嘲笑で歪めた。
仮面と視線が交わると表情を消し、口元を高速で動かしていく。それを見たアサシンもまた魔術師の視界から姿を消した。

『…フン!』

「大洋の果てに住まう主の御名において、汝に厄災を与えん…」

キャスターの詠唱と共に工房の壁や床から、烏賊や蛸の触手を電柱並に拡大したものが飛び出す。
これは彼がとある邪神に臓腑の一部を捧げた時に賜った恩寵の一つであった。
触手が蠢くと同時に工房の床が水に浸かり始め、徐々に水位を上げていく。潮の香りが部屋に満ちる。邪神の住まう大海の景色が工房内に再現されようとしていた。

アサシンは工房内を跳び回り、キャスターに接近する。
工房の主を守る様に出現した触手を跳躍して避けると外套から取り出した槍を魔術師の心臓に突き立てた。
水位は既に成人男性の腰あたりまで上昇している。

『すべきこともせず、一炊の夢に耽るか』

海水が引いていく工房で、心臓を貫いたアサシンが静かに語りかける。

「―ふっ、ふはははは、アハハハ…」

キャスターは振り上げた腕を下げると一つ息を漏らし、暗い愉快さの滲む哄笑を上げながら消滅した。
主を失うとともに工房は急速に崩壊を始める。触手は肉片となって崩れ落ち、引いていく海水に混じって床に吸い込まれる。
潮の香りだけが名残惜しそうに部屋に満ちていたが、アサシンが姿を消す頃にはそれも消え去った。


「―はァ!?」

出口に達する目前、男の前にアサシンが姿を現す。驚愕の声を上げると倒れるように座り込み、思わず股間を湿らせた。アサシンは男から一歩後ろに下がるとその場から姿を消した。

「あ、ありが…」

アサシンが姿を消すと跪いたような姿勢で這って進み、男はたどたどしく礼を述べる。

『こうして命を延ばしても、おまえの病が長引くだけだ』

弱々しい感謝の言葉がアサシンの声によって遮られる。後には力なく座り込む男がひとり残された。


☆


アサシンが部屋を出た後、しばらくしてから海堂も外に出た。
当てもなくバイクを走らせていたが、川の近くを通ると道端で停車した。海堂は土手に身を横たえる。
既に日は落ちており、夜空に月が浮かんでいる。今日は三日月のようだ。
海堂がしみじみとした表情で月に右手を伸ばすと。

≪主よ≫

「おーっ!」

アサシンの念話が飛んできた。海堂はびっくりして上体を起こす。
左右に首を振り向けるが土手には自分しかいない。

≪ばっきゃろう!いきなり声掛けんじゃねー。俺様がこう、センチメンタルに浸ってる時にだなぁ…≫

≪…月の彼方に何が見える?主よ…≫

立ち上がり、アサシンを叱りつけるが気にした様子はない。
彼はいつもこうなのだ。宝具である仮面を身につけている間は別人のような態度・口調をとるようになる。変な奴だなぁ、と海堂は常々思っていたが、今では仮面を被ったアサシンともしっかり意思疎通が取れている。
流石だよなぁ、俺。海堂の気分は少し良くなった。

路肩に止めたバイクにつかつかと歩いていった海堂は、シートに腰を下ろす。

≪あぁ?月しか見えねーよ…≫

面倒臭そうに夜空を見上げるとバイクにエンジンを掛け、すぐに自宅に向かって走らせた。




【クラス】アサシン

【出典】スカルマン(アニメ版)

【性別】男

【真名】神崎芳生

【パラメータ】筋力C 耐久D 敏捷A 魔力E 幸運C 宝具B+

【属性】秩序・悪

【クラススキル】
気配遮断:A
サーヴァントとしての気配を絶つ。 完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【固有スキル】
心眼(真):C
 本来なら修行・努力によって培われる洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す"戦闘論理"
逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
 アサシン個人に由来するものではなく、宝具によってもたらされたスキル。

蔵知の司書:C
宝具展開時、前装着者の記憶・意思を受け継ぐことが出来る。 LUC判定に成功すると、仮面が記録した知識、情報が脳裏に再現される。

怪物殺し:C
人外の属性を持つ敵と戦う際に、行動判定の成功率を上昇させる。

無力の殻:A(-)
発動中は身体能力が一般人並みになり、無力の殻を除く全スキルが使用できなくなる。その代わり、サーヴァントとして感知されなくなる。
『仮面が語る寓話』使用時のみ、カッコ内のランクに修正。このスキルの効果は消滅する。


【宝具】
『仮面が語る寓話(スカルマスク)』ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1(自身)
数千~数万年前に存在した古代文明の遺物である「頭部体」。新人類と呼ばれる存在の力を制御するために必要な代物だが、人間が使うと超人的な身体能力を得られる。
ただし展開しても肉体の強度が変化しないことに加え、身体への負担が大きいので使い続けると生命の危険がある。サーヴァントとなった事でこのデメリットは消失した。

また装着時は仮面の記憶が流入するため、Bランク相当の精神耐性が付与される。
マスクの口元を閉じることで更なる力を発揮できるが、アサシンが使用した逸話は確認されていない為に制限されている。


【Weapon】
宝具展開時は専用の衣装のほか、ナックル、伸縮式の槍、ニードル、ナイフを携帯できる。また大型バイクを出現させる事が可能。

【人物背景】
第二次大戦後に我々とは異なる歴史を歩む日本の地方都市・大伴市では古代文明の遺産を利用した「ガ號計画」が密かに進められていた。
同じ頃、市内で髑髏仮面の怪人が殺人を行うという噂が流れる。
その怪人の正体である神父。大伴市で孤児院を営む傍ら、計画によって生まれた獣人を人知れず抹殺していた。

かつて従軍した南亜戦争の地獄のような有り様に信仰心を失いかけるが、戦場を彷徨う中で計画に抗う獣人の兄弟と出会い、彼らを保護する。
先代神父の手紙によって真実を知った彼は信仰心を取り戻し、人の手に余る古代文明の遺産を破壊するために髑髏の仮面を被った。
正体を突き止めた幼馴染・御子神隼人に真実を伝えるもサイボーグ集団の襲撃に遭い、重傷を負った彼は仮面を受け継いだ隼人に看取られて死亡する。


【聖杯にかける願い】

?


【マスター名】海堂直也
【出典】仮面ライダー555
【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】

「音楽の才能」
クラシックギターにおいて天賦の才を持っていたが、事故によって指に怪我を負った。
現在はギターを上手く弾くことが出来ない。

「スネークオルフェノク」
人間が一度死ぬことで覚醒し、蘇る事で生まれる人類の進化形態。
事故などによって死亡した人間が稀に変化する「オリジナル」の他、オルフェノクは「使徒再生」によって適性のある人間を覚醒させることが出来る。
生前と同じ姿をしているが、自らの意思によって高い戦闘能力を発揮できる怪人の姿に変身する。

海堂は蛇の特性を備える使徒再生のオルフェノクである。2本の小剣が武器。


【ロール】
クリーニング屋のバイト。

【人物背景】
音楽学校で将来を有望視されていた天才ギタリスト。
才能を妬んだ教師の罠によって怪我を負い、自暴自棄になっていたところをオルフェノクにされる。

海堂自身は紆余曲折の後、音楽学校の後輩・黒田に自らの持てる全てを伝授してギターを捨てた。
その後は人間と敵対しないオルフェノクである木場勇治・長田結花と行動を共にするようになる。

次第に木場が唱える「人間とオルフェノクの共存」に理解を示す様になっていったが同じ頃、彼は長田の生命を奪った人間に絶望・憎悪し「人類の抹殺」に趣旨替えしていた。
木場と袂を分かった海堂はオルフェノクの王・アークオルフェノクを倒す最終決戦に参加。戦いの中で木場とも死に別れ、全てが終わった後一人でどこかに消えた。

露悪的で無責任だが周囲を常に気に掛けている。一時の判断で行動する自由気ままな男。テレビ版50話終了後から参戦。

【聖杯にかける願い】
脱出。できる範囲なら主催者も打倒。
最終更新:2016年05月31日 14:46